デザイナーを辞めて「Uターン&介護職」を選んだ理由。自宅での高齢者ケアがラクになるメリットも!

 

ぎゅうぎゅう詰めの満員電車で圧死しそうになるのが嫌になった筆者は、生まれ故郷の岩手県へUターン。

破格の値段で中古住宅を手に入れた筆者が、地方で収入を得るために選んだ職場とは?(方言やめました)

 

■高慢と偏見と介護

1813年に刊行された、イギリスの作家ジェーン・オースティンの小説『高慢と偏見(Pride and Prejudice)』は、

小説の主人公の女性が18世紀のイギリスで生活するには自立する術がなく、なるべく金持ちの男と結婚するしかないという世知辛い話なのですが、

その娘さんが介護業界で働くという話ではありません。

働くのは、筆者。

都会を離れ、地方で働くには、これまで培ってきた職業を思い切って捨てる覚悟が必要です。

……場合によっては。

 

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と言いますのは、筆者の場合、海外や東京で雑誌の編集者やデザイナーをやっていまして、これらのスキルを求めている会社は、地方にはそうそうありません。

小規模な印刷会社やマイナーな地方誌(紙)の出版社などは若干ありますが、年齢制限に引っかかってしまいます。

引っかかるどころか、遥か上を飛び越しています。

「ああ、デザイン科じゃなくて建築学科を選んどくんだった!」と、いまごろ後悔しきり。

冷や汗と背あぶらでギットギト、涙のポンコツ息子です。

ということで、地方へUターン就職するにあたり、ハローワークの職員もオススメする職業、しかし、世間ではまだまだ偏見の多い、介護業界へと飛び込んだのでした。

まずは、前回「介護の仕事が「きつい・汚い」というのは、半分本当で半分間違っている!?」でも書いた偏見のひとつ

「きつい・汚い」と思われている部分について説明をしたいと思います。

「きつい」というのは、連続18時間程の夜勤勤務のことだったり、1日につき20人くらいのおじいちゃん・おばあちゃんの入浴介助だったり、

大人数のオムツ交換だったりを指す言葉だと思われます。

「汚い」というのは、ずばり、オムツ交換で排便があった時のことを指しているのでしょう。

しかし、これは選択する職場によって大きく変わります。

以下に、主な介護施設の、それぞれの特徴を紹介したいと思います。

 

■こんなに種類がある「介護施設」。経験者だから知っているワンポイントアドバイス

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【特別養護老人ホーム/介護老人保健施設】

通称・特養(一生いられる)と老健(将来は自宅へ帰る)の目的は違うのですが、両施設共に介護度の高い(5段階あるうちの要介護度3以上)高齢者が入所します。

施設の規模が大きいため、利用者の人数が100人とかはザラです。

自分で入浴や排泄が上手にできなくなっている方がほとんどなので、介護職の負担は非常に大きくなります。

夜勤は月に4〜5回あります。

仕事がハードな反面、ボーナスが介護業界内では高く、主に体力に自信がある人(男性が多い)が就職します。

若いうちに介護経験を積みたい、あるいは貯金したい方はこちらへ。

 

【デイサービス(通所介助)】

介護度はピンキリなのですが、利用者は、自宅から日帰りで、週に数回、施設に通います。

日曜日は休みの施設がほとんど。日帰りのため、夜勤はありません。1日の利用者の人数も20名程度。

入浴介助やレクリエーションが主な仕事ですが、コミュニケーションが苦手な人は向いていません。

夜勤がないので、他の介護職より給料が低めです。

 

【グループホーム(認知症対応共同生活介護)】

認知症でお困りの高齢者が、家を離れて生活する施設です。

1ユニット9名しか利用者がいません(大抵、2ユニットあります)。なので、入浴介助も最高9人まで。

排泄は、自分でできる方がほとんどです。夜勤が月に4〜5回あります。

ご飯の支度や掃除など、生活している方と職員が一緒になって行います。

コミュニケーションが苦手な人は、夜勤専門という手段があります。

 

【有料老人ホーム】

民間の会社が経営する介護老人福祉施設です。

入所金が高いので(数百万円かかるところもあるが、ピンキリ)、それなりのサービスを提供するため、質の高い介護職員が求められています。

夜勤は月に4〜5回あります。

介護度の低い人と高い人が混在していますが、特養や老健よりは利用者数が少ない、イコール、ちょっぴりハードな職場です。

経営する会社によって、福利厚生が充実している職場があり、飲み会の会費を出してくれたり、スポーツジムの会費が安くなったりする場合があります。

なぜか福祉系大学や専門学校を卒業したての職員が多いです。長くいると、まれに怖いオバちゃん職員に変貌を遂げます。

 

【サービス付き高齢者向け住宅】

“サ付き”とか、“サ高住”と呼ばれます。要は、介護付きの高齢者向けアパートです。

利用者は、自立している高齢者が中心で、普段はデイサービスなど外部の介護サービスを利用しています。

職員は、個々の契約に基づき、居室の掃除や入浴の手伝いなどを行います。

夜勤はありませんが、宿直(休み前日の夜から休み当日の朝まで。巡視時以外は寝ていられる)があります。

宿直は強制ではありませんが、宿直手当があったほうが、月収が増えます。

 

【訪問介護/訪問入浴】

ヘルパーさんとして、30分単位で高齢者の家庭に赴き、食事の支度や掃除、入浴のお手伝いなどを行います。

夜勤はありませんが、夜間対応のヘルパーステーションの場合は、就寝介助の仕事が入ります。

自転車や車で数軒を訪問するスタイルで、パートの職員(時給が平均の1.5倍ほどと高額)がほとんどです。

 

■高齢化による人手不足は深刻。そして明日は我が身かも…

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ひと口に介護施設といっても、いろいろな形態があることがお分かりいただけたでしょうか?

昨今、日本国民の高齢化と人口減少によるサービス業界の人手不足化が、深刻な社会問題となっています。

日刊住まいの読者の皆さまは、まだまだ両親が健在な方が多いと思いますが、近い将来直面するのが、両親の介護問題です。

いま40代〜50代の人は、親が70代〜80代と、介護が必要な年齢にどっぷりとはまっているんじゃないかと思うのですが、いかがでしょう?

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筆者の場合、庭の柿を取ると激怒する面倒臭い父が、80代になろうとしています。

そしてなんだか、おボケになってしまいそうな雰囲気なんですよね。

介護の資格を得る過程で習うことのひとつに、「高齢者の虐待で一番多いのは、実の息子。次に配偶者たる嫁」というのがあります。

筆者なんか、介護の現場で働いていなかったら、将来、介護殺人の容疑者としてお茶の間を賑わせてしまう可能性が大でした。

 

■介護は、「住まい」とも密接な関係がある

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介護は、「住まい」とも密接な関係があります。

徐々に体が衰えていくと、そのうち転んで大腿骨(太ももの骨)などを骨折します。

すると、車椅子が必要になります。

そうなると、住宅のバリアフリー化(車椅子で家の中を移動できるように、敷居の段差をなくすなどの工事が必要)を実施することになります。

廊下の壁やトイレ、浴室などに、手摺りを取り付けることにもなります。

ソフィ / PIXTA

戸建の場合、室内型のエレベーターや昇降機などを取り付けることもあるでしょう。

電動ベッドを入れるために、壁をぶち抜いたりすることもあります。

介護のための住宅改修には、市町村の補助金が出るケースもありますから、覚えておくとよいでしょう。

 

■介護の知識があると、認知症高齢者の対応や、自宅での高齢者ケアが格段に楽に!

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そして、認知症。

これが、なかなか厄介で、現在対応に苦慮されている方も多くいらっしゃると思います。

認知症には、アルツハイマー型レビー小体型脳血管性前頭葉側頭葉型と大きく分けて4種類があり、それぞれ症状に特徴があります。

介護の知識があると、認知症高齢者(両親など)の対応や、自宅での高齢者ケアが格段にラクになります。

そして何より、自分自身も、認知症や寝たきりになりにくい老後生活の方法を学ぶことができます。

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ハローワークや、インターネットの仕事探しのサイトでは、

自動車整備士・携帯電話の販売・ガソリンスタンドの給油スタッフ・大判焼きとたこ焼きの製造販売員などなど、

いろいろな業種の求人が掲載されていますから、もちろん介護職でなくても職に就けると思います。

要は、あなた次第。

しかし、筆者が地方在住+介護従事者になったのには、なにかしらの運命というか必然性があったのかもしれないと今は思っています。

この記事を読んで、少しでも介護職に興味を持っていただければ、うれしい限りです。

そして、介護業界への就職を心からお待ちしております。