賃貸物件は万人ウケする必要なし!? 大家が内見に立ち会う理由【なんでも大家日記@世田谷】

 

freeangle / PIXTA

こんにちは、「なんでも大家」のアサクラです。

前回お話ししたとおり、管理人も兼ねる大家の仕事のなかでもっともツライのは、入居者から理不尽な要求を突きつけられることです。

それを避けるための手段は、おそらくただひとつ――。

自分から見て「まともな人」に部屋を借りていただくことしかありません。

今回は内見に立ち会った際の体験談や、大家と入居者さんとの関係性などについてお話ししたいと思います。

 

※ 【なんでも大家日記@世田谷】過去の記事を読む

 

■入居者選びは隣人選び

Graphs / PIXTA

借り手が物件を選ぶならともかく、大家が借り手を選ぶという話はあまり聞きません。

もともと、賃貸経営は「お家賃さえきちんと払ってもらえるなら、だれでもウェルカム」という雰囲気があるうえ、

現在は賃貸マンションの供給がどのエリアも余りぎみで借り手の取り合いになっているため、

大家はぜいたくを言えないというシビアな現実もあります。

ですが、賃貸物件というのは「貸すか貸さないか」については大家が決める権利を持っていますが、一度物件を貸し出してしまえば、

法律で守られた入居者のほうが圧倒的に権利が強く、ちょっとやそっとの理由では追い出したりはできないものなのです。

たっきー / PIXTA

とくに、アサクラのように自分も同じマンションに住んでいるとなれば、入居者選びは隣人選びも同然。

お金を払ってくれさえすれば、誰でもいいとは絶対に思えません。

できることなら、契約前にしっかりコミュニケーションをとっておきたいと思うわけです。

そこで、入居希望者が内見にいらっしゃる際には、必ず立ち会うようにしています。

内見はいつ来るか前もっては予測できないので、ふつうの賃貸オーナーさんが立ち会うことはなかなか難しいのですが、

募集期間中は遠出をしないようにこころがけ、つねに待機しています。

 

■物件に詳しいのはだれ?

jazzman / PIXTA

通常、内見に立ち会うのは、不動産会社の営業担当者です。

彼らは物件のプロなので、賃貸のルールも熟知しています。

でも、ほかの職種の営業とは違い、不動産ではふたつと同じ商品はないので、それぞれの物件について詳しくなるには限度があります。

だとすれば、実際に住んでいる人が説明するほうが、より的確な説明ができる場合もあるはずです。

住んだからこそわかる物件の特徴をしっかりと伝えることで、じゅうぶんに納得して借りていただくことができ、

結果的に長く住んでいただくことにもつながります。

だから、うちでは積極的に物件のデメリットについても話すようにします。

たとえば、東日本大震災以降、物件選びにおいて耐震性を重視する方がグッと増えましたので、

うちのような築50年のマンションは1981年の新耐震設計基準を満たしていないことはしっかりとお伝えします。

センメー / PIXTA

また、築年数の古いマンションは、新しいマンションに比べると、どうしてもメンテナンス工事の回数は増えるので、

その点も事前にお話しするようにしています。

観光地の路上販売か何かなら、いいことだけ言って売り逃げしてしまうのも商売的にはありかもしれませんが、

賃貸マンションは契約してからが本当の商売の始まりなので、

住んでから「思っていたのとちがって住みにくい」と思われてしまうと、すぐに出て行かれてしまいます。

これは大家にとっても入居者にとっても不幸なことですよね。

 

■内見は「気づき」の宝庫?

runa / PIXTA

さて、入居希望者とお会いしたいという動機から始めた内見ですが、

賃貸経営を考えるうえで非常におもしろく勉強になることがわかってきました。

物件を探している方々は、みなさんそれぞれに見るところが違って、同じものを見ても正反対の印象を抱くこともよくあります。

窓の外の庭を見て「緑がきれいですね」という人もいれば、「虫は入ってきますか?」という人もいます。

壁の厚みを確かめるときも、「自分の音が隣に聞こえてしまうのか」を気にするか、

「隣の音が自分に聞こえてしまうのか」を気にするかで、騒音に対する考え方のちがいも感じられます。

リフォームのアイデアをいただけることも多いですね。

Anesthesia / PIXTA

以前、花粉症で洗濯物を外に干せないという方が内見にいらっしゃったことがありました。

うちはベランダがわりと広いので、部屋の中に洗濯物を干すということをあまり想定していませんでしたが、

この方の意見を参考に室内にランドリーロープを設置することにしました。

これは、花粉症ではない方々にも非常に好評で、うちのマンションでは常設の備品になりました。

また、女性のひとり暮らしの場合、夜遅くに帰宅するときの駅からの道順に関心がある方が多く、

最寄り駅からマンションまでの簡単なガイドマップを作ることにしました。

明るい道や近道はもちろん、地元で評判の飲食店やインテリアショップなどを掲載したところ、わかりやすいと評判でした。

 

■賃貸物件はみんなに好かれる必要はない!

elwynn / PIXTA

こうやって試行錯誤して内見のご案内をしていますが、大家が内見に立ち会うのを

「なんだか面倒くさそうな物件だぞ」と警戒していそうな方は、一定数いらっしゃいます。

「大家からつねに監視されそう」とか「いろいろ口うるさく言われそう」とか、心配になるんだと思います。

それはそれでいいのです。

大家とはあまり関わり合いを持ちたくないという人には、その人に合ったドライな物件がたくさんあります。

うちは、大家が同じ建物にいて管理していることを安心だと思ってくれる方に入居していただきたいのです。

それがうちのマンションの個性でもあると思っています。

sasaki106 / PIXTA

インテリアのテイストもそうですが、賃貸物件はみんなに好かれる必要は必ずしもありません。

むしろ、たった一人(一組)でいいので、すごく気に入ってもらえさえすれば、商売としては成り立ちます。

そういう意味で、八方美人にならないですむのも経営者としては楽しいところです。

と、ここまで入居者を選ぶなどというおこがましい話をしてきましたが、

そのためには何よりもまず内見に来ていただかなければなりません。

数ある物件のなかからわざわざうちのマンションに足を運んでもらうには、やはり魅力ある部屋づくりが欠かせないのです。

しかし、うちのマンションも、僕が先代から引き継いだときは、それはもうひどいありさまでした。

次回はツッコミどころ満載だった、かつてのマンションの様子を実際の写真とともに振り返り、

リフォームの失敗についてお話ししたいと思います。