前編につづき、心理学で片付けが週間づく方法を、ハーバード大学院の教授のトッド・ロジャース(Todd Rogers)が発表した論文『Reminders Through Association.』を参考にご紹介しています。
後編では、論文を参考に応用した、片付けのテクニックです。
誰でも簡単に実践できますので、ぜひ試してみてくださいね。

つむぎ / PIXTA(ピクスタ)
イラストの方がインパクト大!文字はあまりにも身近にありすぎて注意を引かない

Graphs / PIXTA(ピクスタ)
まず【前編】で出した問題の答えからご紹介いたしましょう。
出題は以下になります。
無作為に選んだ人を対象にして、「コーヒーショップのクーポンを渡して、忘れずにそれを使ってもらう」という課題を与えます。
そして、コーヒーショップのレジには以下の2つの方法をリマインダーとして設置しておきます。
A.レジの横に、「クーポンを使う」と書いた紙を貼っておく。
B.映画『トイ・ストーリー』に出てくるキャラクターの写真を見せて「この写真を見たらクーポンを使う」と覚えておくようにあらかじめ伝えておく。
そして、その写真をレジの横に貼っておく。
どちらのグループが、クーポンを忘れずに使う確率が高かったでしょう?

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「そりゃ文字で書いてあるAグループでしょ! Bグループの写真なんて、なんの意味もないじゃない」と思うところです。
しかし実験の結果、なんとBグループの方がクーポンを使う確率が36%も高くなったのです。
500人の被験者を対象に行われたので、信頼性はとても高い数字です。
これは多くの人にとって意外な結果だったと思いますが、それが心理学の面白いところ。
「普通」や「常識」というものを心理学で研究してみると、実はあまりあてにならないこともあります。
現代人にとって文字はあまりにも身近にありすぎて注意を引かず、見てもすぐにその場で忘れてしまう傾向があるようです。
スマホのカレンダー機能やリマインダー機能も同様で、文字で通知されるため「重要性」が認識されにくいのでしょう。
なんでこれがここに?目を引かす、注意を引かせることが大事!

TATSU / PIXTA(ピクスタ)
それに比べて、「目を引くもの」のリマインド効果は非常に高くなります。
「なんでこんな場所に、これがあるの?」という注意を引いてくれて、それから「あ、そういえば〇〇をしなきゃ!」と思い出すことで脳の中で意識を連結させた方が、人は実際の行動に移しやすくなるということです。
では、この「Reminders Through Association(邦訳:連想リマインダー)」と呼ばれるテクニックを、お部屋の片付け習慣を身につけるために活用するにはどうすれば良いのでしょう?
いま、お部屋を見渡してみてください。
「これ、なんでこんなところにあるんだっけ?」というものがありませんか?
それを、リマインダーとして設定してみるといいでしょう。
できるだけ「変なモノ」を!その環境に似つかわしくないモノで習慣づける
実験によると、あまりにも周囲の環境と馴染んだものには「連想リマインダー」は向いていないようです。
例えば、キッチンの中で食器をリマインダーにしようとしても、それはあまり効果がないということです。
そのような場合は、数年前の旅行でお土産に買った奇妙な色の人形でも、抽選でもらった変なロゴが入っているマグカップでもなんでも構いません。
大事なのは、「その環境に似つかわしくなくて、なるべく目を引くモノ」ということです。
違和感があればあるほど効果的なので、あえて目を引く変なものを探してきて置くのもアリです。
ちなみに、筆者の場合は100均で買った「だるま」を使っています。
真っ赤で目を引いて、そこに存在する必然性がまったくないのでリマインダーとしては最強です。
そして、それを見たら「10分だけ片付けをする」と決めてください。
片付けの場所は、決めなくても大丈夫。
最初のうちは、とにかく10分だけ時間をとって片付けをすることを習慣にしてみましょう。
目を引くモノだけに、悪目立ちを避けるにはどうしたらいい?

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「連想リマインダー」の欠点としては、リマインダー自体が変なものであるが故に、どうしても普段から目を引いてしまうことです。
そこで、「毎日視界に入るけど、自分しか見れないような場所」に置いておくのがオススメです。
女性なら毎朝使う化粧品を入れた棚の中でもいいですし、男性ならスーツをしまっているクローゼットの中でもいいでしょう。
そして、それを見たら「そうだ、10分間掃除をするって決めたんだ!」と思い出してください。
紙のメモやスマホのカレンダー機能より、片付け習慣を身につけられる可能性がグッと高まります。
片付けを習慣化するテクニックはいくつかありますが、その中のひとつとしてぜひ試してみてはいかがでしょうか。
(おわり)
【参考】