世田谷のマンションといえば聞こえはいいですが、うちは築50年の小さいマンションです。
現在はなんとか満室の状態を保ってはいますが、これからどうなるかはわかりません。
近所では毎月のように古い住宅が解体され、あとに建つのは賃貸併用型の住宅ばかり。ライバルは増える一方です。
現在の家賃を維持して満室状態を保つには、入居者に魅力を感じてもらうための努力はかかせません。
そこで差別化のアイデアとして思いついたのが「別荘つき賃貸」です。
山小屋の離れを週末スモールハウスにリノベ?
「別荘つき賃貸」という言葉だけだと、リゾートマンションや瀟洒なログハウスが思い浮かびますが、もちろんそんな優雅な話ではぜんぜんありません。
活用するのは、以前もお話しした築古の山小屋の隣に建つ小さな離れ。
ご覧の通り、「別荘」の「べ」の字も感じさせない、小さくて古ぼけた建物です。
母屋に比べると築年数が浅くて状態も良く(それでも築30年越え)、独立しているので単体で利用できます。
この建物をリノベーションして、入居者の方々が利用できる「別荘」として提供してみようというわけです。
しかしネックになるのは、なんといっても建坪3坪に満たない狭小空間。
たったの六畳といえば、どれだけ狭いかおわかりになるでしょう。
僕としては「別荘」などという優雅さ漂う呼び名はやめ、「スモールハウス」と呼びたいです。
肝心の中身はというと、内装工事はほとんど行われていない、質素な内装です。
かんたんな2階建てになっていて、2階は天井の低い屋根裏部屋のような作りです。
文字通りのスモールハウスですが、自慢できるのは周囲の環境です。
裏には小川が流れ、その向こうには竹林が茂って天然のグリーンカーテンとなり、真夏の日差しをやさしくさえぎってくれます。
絵に描いたような田舎の景色ですが、住所は東京。
クルマなら高速を使って1時間強、電車でも最寄り駅まで2時間弱でアクセスできます。
一泊すれば十分にゆったりできる近さが魅力です。
ウサギ小屋のごとく狭い場所ではありますが、川のせせらぎや鳥の声を聞きながら、のんびり読書したり昼寝したりできるのは、この山小屋ならではの楽しみでしょう。
週末スモールハウス……ひょっとしたら、面白がってくれる人が案外いるかもしれません。
週末スモールハウスに必要な設備ってなんだろう?

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もちろん、課題はたくさんあります。
たった六畳の部屋が2つという狭小スペースをどう活用するかです。
2階は屋根裏のような低い天井ですから、のんびりしたり眠ったりする場所に充てたいところ。
となると、わずか六畳ほどの1階に、どんな設備を配置するかがポイントとなります。
そもそも、週末スモールハウスに必要な設備ってなんでしょうか?
何を入れて何をあきらめるかが、物件の利便性を大きく左右することになりそうです。
それを考えるには、改めて「週末スモールハウスの使い方」について考えなければなりません。

ばりろく / PIXTA(ピクスタ)
滞在スケジュールは、金曜の夜か土曜日の昼に出かけ、日曜の夕方までといったところでしょう。
普通は1泊、多くても2泊。
山奥ですから、山歩きや川遊びなどを楽しみたい人はいるはず。
となれば、汚れた体をきれいにする設備は必須です。

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できればバスタブまで設置したいのですが、残念ながらそのスペースはありませんから、シャワーブースにしましょう。
近場に温泉もありますから、ゆっくりお風呂につかりたい人には、そちらをオススメすることにします。
次に、キッチンはどうでしょうか?
正直言ってスペース的に厳しいです。
週末だけ過ごす場所ですし、駅の近くには飲食店もありますから、自炊できる環境がなくても大きな不満にはならないと考えます。
そのかわり、電気ケトルと電子レンジ、冷蔵庫などは設置しましょう。
これで冷凍食品やインスタントラーメン程度なら食べられます。

Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)
食事するには、食器やコップなどの最低限の洗い物をするシンクはほしいところです。
そこで、シャワーブースとは別に、きちんとした独立の洗面台を設置して洗い物のできるキッチンシンクを兼ねるようにします。
などなどと考えた結果をまとめると以下のとおり。
【必要】トイレ、シャワーボックス、洗面(兼キッチンシンク)
【不要】バスタブ、キッチン
これくらいなら最低限の利便性を確保しつつ、なんとか六畳におさまりそうです。
賃貸とはちがう個性的なインテリアを試す
工夫したいのはインテリアです。
毎日生活する場所は、インテリアも大事ではありますが、やはり利便性がもっとも重視されます。
退去時の復旧などの問題を考えると、建材もメンテナンスしやすいものに限られてしまいます。
ですが、たまの週末に訪れるだけの家なら、多少の不便さなら非日常として受け入れてもらえそうです。
たとえば、これは洗面用に検討中の水栓。

「サンワカンパニー」の「ラベンナ」
十字型のハンドルが気に入って、前から使ってみたかったのですが、片手で操作しづらいこともあり、マンションに導入するのは躊躇していました。
ですが、たまに遊びに来る空間ならまったく問題ないでしょう。
狭い家ですが、いつもと違う場所に来た新鮮さを味わってもらう意味でも、普段の賃貸では試せない、ちょっと変わったアイテムや建材を用いて個性的な部屋を作ろうと思います。
以前、オスモカラーの回でご紹介したヒノキのタイルや、

「西粟倉・森の学校」の「ユカハリ・タイル ひのき コグチ」
ボックス貼りで組んだボーダータイル、
海外製の個性的なデザインの壁紙などです。

「Cole & Son」社の壁紙「ノーチラス」
これらの建材は、その個性の強さもさることながら、材料費そのものが高いので、まず賃貸では使えません。
ですが、六畳の部屋の一部に用いるだけなら材料も少なくて済みます。
できるところはなるべくDIYに挑戦すれば、さらに費用は圧縮できるでしょう。
削れるところは削りつつ、いつもよりもちょっぴりぜいたくで個性的な空間をめざします。
さて、この古ぼけた建物がいったいどんなふうに変身するか?
無事に工事が終わりましたら、改めてこちらでご報告したいと思います。