「クール便」配達のリアル。キャリア14年元宅配ドライバーに聞く
よく巷で見かける白い色にクール便の文字が入ったトラック。
さぞかし荷台の中は、冷気でひんやりと思いきや、実はほとんどが常温の荷物で満たされています。
冷気の効いているクール便の収納スペースはというと両側の前方に申し訳ない程度に備えてあります。
つまり、クール便の文字はクール専用車両という意味ではなく、クール便の収納可能なスペースと装備がありますよ、の意味です。
他の車両も同じように、「クール便」をうたっていなくてもクールの装備がありますのでご心配ありません。
今回は、「クール便」の実情についてご紹介します。
現在の「クール便」対応は、完全なキャパオーバー!

mits / PIXTA(ピクスタ)
宅配会社によっては、完全クール便専用車というのもありますが、ほとんどが兼クール車であるのが実情です。
荷物の割合は8割、9割が常温の荷物です。
以前は、圧倒的に多い常温の荷物を中心に業務は行われ、数の少ないクール便をないがしろにされた感がありました。
そうした蓄積の結果、数年前に大手宅配便会社がクール便の常温仕分けや常温配達で社会問題を起こし、それ以来クール便には特に神経を使っています。
しかし実際、どの宅配業者も完璧なクール便の受け取り体制が整っているかというと疑問が残るところです。
設備と人手が圧倒的に不足しているのです。つまり完全なキャパオーバーなのです。
ドライバーの負担を軽減する対策が急務!
ドライバーがクール便を配達する際に使う「クールバック」をご存じでしょうか。
銀色に光った箱。
配達する際にあらかじめ冷してあるクールバックにクール便を入れ配達に行きます。
夏のクール便の配達でドライバーは、日陰を探してまるで忍びのように背を壁にして配達します。
それでも夏の炎天下の元、いくら保冷剤を入れているとはいえクールバックの中の温度は徐々に上がっていきます。

セーラム / PIXTA(ピクスタ)
配達完了できない場合、クールバックに不在のクール便を入れたまま他の荷物を配達したのでは温度低下の恐れがあるので、営業所に戻り冷蔵庫もしくは冷凍庫にすぐに保管しなければなりません。
車のクール便の貯蔵庫もエンジンを切ってしまえば、温度は上がってしまいます。
温度を保つためには、常にアイドリングをしなければならず、騒音やCO2などの環境問題にもつながります。

千和 / PIXTA(ピクスタ)
このようにクール便が配達の効率を落としている元凶の一つになっていると言っても過言ではありません。
今や品質も落とさずに、なおかつドライバーの負担にならないクール便対策が必要なのです。