「枯らし」ってどういう意味? 梅雨時の入居を避けた方が良い理由

梅雨シーズン真っ最中ですね。

衣替え、エアコンの掃除、サッシまわりや雨樋の点検と雨漏り箇所の補修など、梅雨に向けての準備は万全ですか?

ところで、新築マンションや新築一戸建てを購入・建築する場合、気になるのが新居の引き渡し時期です。

雨天での引っ越しはできるだけ避け、梅雨の晴れ間を狙って、新居に移り住みたいと考えている人も多いことでしょう。

しかし、家族の健康を考えるなら、梅雨のシーズン中の引き渡し・入居はできるだけ避けるのがベストだといえます。

新居が完成しても、すぐに入居できるわけではない

引き渡し

tkc-taka / PIXTA(ピクスタ)

新築マンションでも新築一戸建てでも、あるいはリフォーム工事でも、住宅が完成してから引き渡しまでに、住戸内に風を通し、床・建具などに塗られたペンキや壁紙・内装材などの接着剤を完全に養生・乾燥させる必要があります。

これを建築用語で「枯らし」といい、枯らしに必要な期間を「枯らし期間」と呼んでいます。

一般にマンションや一戸建て住宅で2~3週間程度、大型の住宅や公共施設で1か月~数か月程度、さらにコンクリートをふんだんに使った美術館や博物館で1~2年程度の枯らし期間が必要だといわれています。

もちろん、立地条件や建築面積、使用する資材・建材によっても、枯らし期間の日数は異なります。

目がシクシク

Mills / PIXTA(ピクスタ)

しかし、この枯らしが不十分だと、入居後に目がシクシクする、あるいは家具やカーテンにカビが発生するなどの不都合がいろいろと起きてくるのです。

そう、まるで1990年代後半に問題になった「シックハウス症候群」と同じような現象が、現代の新居で再び発生し、大切な家族を苦しめることになるのです。

当時は不動産バブルによる建設ラッシュと、資材・建材に含まれているホルムアルデヒドなどの有害な化学物質に対する取り締まりが緩やかだったことから、それまで経験したこともなかったシックハウス症候群が勃発し、重大な社会問題になりました。

つまり、建設ラッシュで「不十分な枯らし状態」のまま新居を引き渡す事例が多発するとともに、安価なホルムアルデヒドなどの有機化合物の多用で、深刻な事態を引き起こしてしまったのです。

 

有機化合物を制限しても、枯らしが不十分だと健康に悪影響が

有害化学物質の低減対策とその特徴

有害化学物質の低減対策とその特徴

主な枯らしの方法としては、「換気」「ベークアウト」「空気清浄機」「吸着剤(材)」の4つがあげられます。

その中で最も有効な方法が「換気」で、機械換気設備の運転や窓開けによる通風です。

一般の新築住宅なら、2~3週間程度、機械換気と窓開けを併用することで、室内に放散されるホルムアルデヒドやVOC(揮発性有機化合物)を排除するとともに、建材からの放散を促進させるため、すべての化学物質の濃度低減に有効だといわれています。

ただし、夏期と比べて室温の低い冬期や、窓開けが十分に行えない梅雨のシーズンなどは、その効果が低くなるのが現状です。

 

「ベークアウト」による「枯らし」には限界がある

換気

ABC / PIXTA(ピクスタ)

次に「ベークアウト」は、暖房設備や熱源ヒーターを使用して室温を上昇することでVOCの放散を促進させ、新築直後のホルムアルデヒドやVOCの濃度を低減させるという方法です。

しかしベークアウトでは、建材の表面から放散されるトルエンやキシレンなどの化学物質には効果が大きいのに対して、ホルムアルデヒドのように建材の内部に含まれていて、徐々に表面に出てきて室内に放散される物質に対しては、あまり大きな効果は期待できません。

空気清浄機

北海道魅力発信社 / PIXTA(ピクスタ)

この他、換気が十分に確保できないクローゼットや押入れ、キッチンなどにおいて、「空気清浄機」を設置して化学物質を吸着・除去するという方法や、通風や換気の悪い空間に「吸着剤(材)」を設置して、化学物質が室内に発散される前に吸着・分解するという方法もありますが、これらの方法はあくまでも「換気」や「ベークアウト」を補完するものです。

2003年(平成15年)7月1日に改正建築基準法が施行されてから、すでに15年が経過し、施主や購入者の意識も、メーカーの取り組み方も大きく変わりました。

特にハウスメーカーや資材・建材メーカーでは、ホルムアルデヒドなどの有害な化学物質を使用しない素材や塗料、接着剤などを開発し、自然素材や健康素材、非ホルムアルデヒド素材による家づくりがスタンダードになっています。

そのため、ある程度の枯らし期間を確保すれば十分だとする考えが主流になっているのも事実。

なかには「換気」と「ベークアウト」を併用することにより、冬期でも梅雨のシーズンでも、約束した期日に新居を引き渡そうとするケースが少なくないのが現状です。

 

いま話題の「隠れホルムアルデヒド」とは?

住宅内の空気環境を汚染する有害化学物質の種類と特徴

住宅内の空気環境を汚染する有害化学物質の種類と特徴   ※トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレンの空気中の濃度が一定量を超えた場合は、機械換気設備の設置や有害物質の除去などの対策を施す必要がある。

住宅内の空気環境を汚染する有害化合物としては、「ホルムアルデヒド」や「クロルピリホス」「トルエン」「キシレン」「エチルベンゼン」「スチレン」などがあげられます。

この中で、発ガン性の疑いがもたれているホルムアルデヒドは、2003年(平成15年)7月1日に施行された改正建築基準法によって、その使用が大幅に制限されました。

また防腐剤や防蟻剤に用いられたクロルピリホスは、使用そのものが禁止されました。

さらにトルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレンなどのVOC(揮発性有機化合物)は、2000年(平成12年)4月1日に施行された住宅性能表示制度によって、住宅内の空気中の濃度測定の対象(必須項目)となり、一定量を超えた場合は機械換気設備の設置や有害物質の除去などの対策を施さなければならなくなりました。

建設中

HAKU / PIXTA(ピクスタ)

このような法律の改正や対策が功を奏じ、シックハウス問題は撲滅されたかのように考えられています。

例えば2015年(平成27年)4月1日に施行された改正住宅性能表示制度では、それまで必須項目になっていた「空気環境」に関する項目が「選択項目」に変更されたのも、そうした背景があったからだといえるでしょう。

もっとも国土交通省では、「構造の安全」や「劣化の軽減」などの項目と比べて「空気環境」の測定は建設後でも可能だからと、説明していますが……。

ところが、問題はそう単純ではありません。

接着剤や塗料などに含まれるホルムアルデヒドをゼロにしても、隠れ(潜在)ホルムアルデヒドを完全に除去することは難しいのが現実なのです。

 

原材料に含まれていなくても注意が必要な理由

石油ストーブ

HIRO / PIXTA(ピクスタ)

隠れホルムアルデヒドは、熱分解などで材料の中から分離して出てくるもの。

そのため、原材料に含まれていなくても、別の物質が熱で変化してホルムアルデヒドになって出てくる可能性がある、ということです。

また、ホルムアルデヒドは空気中にも微量ですが含まれていますし、沸点がマイナス20度で簡単に気化してしまうため、家具などに含まれているホルムアルデヒドが、石油ストーブを使用したり、喫煙することで、室内に発生してしまう危険性が指摘されているのです。

梅雨

barman / PIXTA(ピクスタ)

室内のホルムアルデヒドを限りなくゼロにするためには、家具などにホルムアルデヒドが含まれていないかを確認すると同時に、梅雨のシーズンや冬期の引き渡しを避け、換気による枯らしを十分に行う必要があります。

花粉症や喘息などのアレルギーに苦しむご家族がいる場合は、特に注意が必要だといえるでしょう。