「やる気はあるのに、できない!」の意外な理由とは?心理学を応用した片付け習慣・その8
忙しい毎日を送る中で、片付け習慣を身につけるのは難しいものです。とくに子育て中の方や共働きの方などは、不意に発生する用事も多いですよね。
子どもが熱を出したり、仕事のトラブルで帰宅が遅れたり……。
そんな時には、「片付けをしよう!」というやる気自体はあっても、「なんでだろう?結局できなかった……」ということもあるのではないでしょうか。
「やる気がないわけではないが、なぜかできない」という現象が起こる原因と、その対策をお伝えします。
「なぜかできない……」その原因は、やる気不足ではありません!
アリゾナ州立大学で心理学とマーケティングの名誉教授をしている、ロバート・チャルディーニという学者がいます。
彼によると、「やる気がないわけではないが、なぜかできない」ということは誰しも頻繁に起こるそうです。
ダイエットをしているのにレストランでデザートを頼んでしまったり、運動のために階段を登ろうと決めたのにエレベーターを使ってしまったり……。

Key West / PIXTA(ピクスタ)
こうなってしまうのは、まだまだやる気が足りないからでしょうか?
一概にそうとも言い切れないという、興味深い心理実験の報告があります。
薬物中毒患者にも効果抜群だった!「〇〇したら、〇〇する」作戦
アメリカでは薬物中毒が深刻な社会問題となっており、中毒患者の更生施設もたくさんあります。
施設では退院後の就職のために職務履歴書を書くように勧めていますが、なかなかうまくいきません。

freeangle / PIXTA(ピクスタ)
そこで、以下のような実験が行われました。
- Aグループ:「職務履歴書を書いて下さい」とだけ伝えます。
- Bブループ:「昼食後に食堂の席が空いていたら、そこで職務履歴書を書いてください」と伝えます。

YsPhoto / PIXTA(ピクスタ)
つまりBグループには、職務履歴書を書くために必要な条件を付け加えたのです。
心理学の実験でも稀に見る大差をつける結果に
ただ「職務履歴書を書いてください」と伝えただけのAグループは、一人も書きませんでした。
いつでもどこでも書けるにもかかわらず、一人も書けなかったのです。
ただ、この結果自体は被験者の属性を考えれば不思議ではないかもしれません。
驚くべきはBグループです。
「食堂の席が空いていたら」と条件を加えるだけで、なんと8割の被験者が職務履歴書を書くことができたのです。

さわだゆたか / PIXTA(ピクスタ)
日常の動作の一つをスイッチにして、記憶を呼び起こす。
「やる気はあるが、なぜかできない」
その理由は、単に忘れているだけ。
より具体的に言うと、「行動するのに適切なタイミングを逃しているだけ」の可能性が高いとロバート氏は分析しています。
日常の中で適切なタイミングを逃さないように捕まえれば、物事は習慣化することができます。
たとえば、「朝食を食べてお皿を洗ったら、すかさずハンディモップを持つ」「夜の歯磨きを終えたら、そのまま水回りを掃除する」という具合です。

mits / PIXTA(ピクスタ)
片付けは、空いた時間を使ってやろうとするとついつい忘れがち。
日常の動作に組み合わせて、「〇〇したら、〇〇する」という一連の流れで覚えてみましょう。
そうすれば、難しく思える片付け習慣も意外とすんなり習慣化できるかもしれません。
【参考】