現役不動産営業マンの本音「不動産に掘り出し物がない理由」
住まいの購入を検討するとき、「少しでも価格が安くて、条件の良いものを」と考えるのは当然です。
しかし、そのことに過度に執着し「掘り出し物」を探そうとしても決して上手くはいきません。
結論から申し上げると、世間でもよく言われるように「不動産に掘り出し物はない」のです。
その理由を、住まいを供給する企業側の視点で考えてみたいと思います。
不動産の「仕入れ」に見る業者との「情報格差」

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今回は特に「新築一戸建て」「新築マンション」を想定しています。
これらを供給する業者は、まず建物を建てるための「土地」を仕入れます。
その情報を得るため、仕入れ担当者は様々な人脈を作りに日夜動き回っています。
相手は、地主と繋がりのある別の不動産業者・銀行・税理士・弁護士などです。

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彼らが狙うのは「どこのアパート用地で相続が発生したか」「どこの社宅が売却されるか」など、住まいの「原料」となる土地の情報です。
そうして仕入れた土地に、造成工事をしたり、建物を建てたりと「加工」を施します。
一般の住宅検討者が目にするのは、この「加工」された不動産の情報です。
「掘り出し物になりうる情報」は、「原料」の中にあります。
例えば「地主の都合で早く売却したいから、値段が安くてもよい」といった情報です。
こういった情報は、まず業者がキャッチしていきます。一般の方が直接アプローチするのは非常に困難です。
業者と一般の方との間にある、大きな「情報格差」。
これが一般の方が目にする市場に「掘り出し物」が出てこない、大きな理由の1つです。
不動産業者は「掘り出し物」を作らない

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「掘り出し物になりうる情報」は業者が先に入手していきます。
これがそのまま、一般の方に供給されることはほぼありません。
なぜなら、「掘り出し物」をそのまま市場に出すことは、業者が「損をすること」と同じだからです。
一般の相場より安く「原料」を仕入れることができれば、当然自らの利益を増やすよう、販売価格を調整します。
業者は、「原料」を「掘り出し物」にならない形で世に送り出すのです。
「掘り出し物」という幻想に惑わされない
私は「だから業者は悪なんだ」と言っているわけではありません。
「情報の先取り」も「販売価格の調整」も企業として存続するために必要な戦略・ノウハウです。

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私も業者の端くれとして、土地の仕入れも経験しました。
しかし、どれだけ工夫しても、「掘り出し物になりうる情報」にたどり着くことは非常に困難です。
さらに土地の仕入れのあと、その土地の「加工」と「販売」にも工夫が必要です。
一般の方より楽をして利益を得る、ということは不可能です。
住まいを探す際、大切なことは「掘り出し物」という幻想に惑わされないことです。

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「掘り出し物」を探して、何年も物件見学を続けているお客様に出会ったことも数多くあります。
そうしているうちに、「本当に欲しい住まい」の条件を見失ってしまうのです。
「絶対に譲れない条件」と「譲ってもよい条件」をきちんと整理して、「本当に欲しい住まい」像をつくっていくこと。
これが「掘り出し物」という幻想を追い払うために重要なことです。