仕事、貯金、自分の時間…介護でどこまで日常生活が変わる?
厚生労働省の平成28年度の調査によると65歳以上の者がいる世帯数は全世帯の48.4%。
そのうち、要介護者がいる世帯の中で、介護する人の約6割は要介護者と「同居」しているといいます。
”介護は突然始まる”とはよく聞きますが、家族を介護するにあたって生活はどのように変化するのでしょうか?
今回は、「介護をする家族の生活」についてのお話です。
介護で生活はどのように変化する?
介護・医療の情報サービスを提供する「株式会社エス・エム・エス」が介護にかかわる家族394名を対象に「介護をする家族の生活変化についての意識調査」を実施。
介護を始めるにあたって、介護者は生活にどのような変化があったと感じているのでしょうか。
変化の内容を見てみると、
1位:時間82.3%、2位:仕事58.6%、3位:お金53.9%。
4位以下は人間関係、健康、食事、趣味と続きます。
筆者の母が祖母を介護していたときは、病院の送り迎えをはじめ、生活の世話、通常の家事までこなしていたため、プライベートな時間はほぼありませんでした。

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回答の詳細をみてみると、介護中心の生活は外出の機会が減り、人付き合いが減るという意見も。

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グラフから、介護に携わるということは”今までの自分の生活が制限される”ということが想像できます。
介護で「離職」を選択する人も意外に多い!
調査で明るみになった、介護による生活の変化。
介護は、時間だけでなく介護者の”働き方”にも変化を与えます。
”介護離職の経験はない”との回答が約7割を占めるものの、”自分自身が介護離職した”という割合は25.5%。

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離職までいかなくとも、時短勤務に切り替え、雇用形態の変更、有休を使うなど、介護者は介護の時間確保のために仕事の時間をも減らすことが必要とされるようです。
そして”働く時間”を削るとなると、心配になってくるのが”お金”の問題。
働く時間が減る、もしくは離職となると収入が減り、介護の心配だけでなく自身の生活費にも大きな影響を及ぼします。
介護離職した人・離職予定の人のデータを見てみると、介護者の生活費は”自分の貯金”、”家族(夫や子供の収入)”で賄う人が多く、親の年金や貯金に頼る割合よりも、自分たちの財布で生活していく傾向にあるよう。

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自身の貯金や家族の収入に頼っている実態から、今後介護者は経済的に困窮する可能性が懸念されるのです。
介護保険利用料の3割負担とは
介護サービスの利用者増に伴い、2017年4月に「介護保険法改正案」が可決され、2018年8月から一部利用者の介護保険利用料が3割負担となったことはご存知ですか?
これについて調査対象者の中で「知っている」と回答した人は約半数。
「合計所得金額220万円以上」かつ、単身世帯なら「年金収入+その他の所得の合計が340万円以上の人」(単身者で年金収入のみの人の場合年間344万円以上)、二人以上世帯なら「年金収入+その他合計所得金額が463万円以上の人」が負担増の対象とされているこの制度。
自己負担が3割負担の対象者は約12万人程度と試算されていて、介護保険を受給している人の3%程度といいます。

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「お金がある高齢者には負担してもらった方が良い」という声が挙がる一方で、今回新たに高額介護サービスの年間の上限が新設された世帯も存在し、3割負担の対象者ではなくても負担増という動きについては不安を感じている人が多いのも事実。
介護保険の自己負担が増えるのであれば介護保険の利用を控えようと考える人もおり、介護サービスを控えることは、介護する側される側の負担増や、疲労を進行させ、症状を悪化させる恐れもあります。

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政府は家族が疲弊しすぎないで、予算的にもやっていける範囲で介護を続けることを推奨していますが、急に介護が始まった家庭で、介護と私生活を上手に両立するというのはアンケートからも並大抵のことではないことが分かります。
誰だって自分の大切な子どもや家族に迷惑はかけたくないはず。
安心して介護を続けられるように、社会全体の仕組み作りが急務となっています。
【参考】
※ 【介護をする家族の生活についての意識調査】介護により生活や仕事の中で変化したこと1位「時間(82%)」介護保険、高収入者の自己負担3割の認知は半数にとどまる