退去時の原状回復と東京ルール、敷金精算との関係性
ここでは引っ越しなど賃貸住宅を退去する際、部屋の原状回復に伴う東京ルールの約束事と掃除、敷金精算について解説します。
サッカーW杯において日本のサポーターが試合後にゴミ拾いをする姿は世界中から称賛されましたが、「来た時よりも美しく」というのは日本人が持つ美徳だと思います。
しかし部屋を退去する際の掃除に関しては、ついつい聞き流してしまいがちな約束事があるのです。
借りたものは綺麗にして返したい

Audtakorn / PIXTA(ピクスタ)
賃貸住宅を退去する際は、家具の搬出が完了して部屋が完全に空になった状態で「解約立ち合い」を実施し、管理会社と借主の双方で部屋のキズや汚れの状態を確認します。
筆者も賃貸管理の仕事に従事していた時に何度も立ち合いましたが、指定の日時に部屋を訪問すると、借主が一生懸命にお部屋を清掃している真最中という場面によく出くわしたものです。
借りたものは綺麗にして返したいというのは大変に素晴らしいことですが、「敷金をより多く取り戻すため」ということですと話は変わってきます。
入居時の契約時に必ず説明がある費用負担の原則と例外

ひとり君 / PIXTA(ピクスタ)
借主が解約して退去すると部屋はどうしても傷んでいるものです。
そのため退去が完了すると貸主は次の貸し出しに備えて部屋の原状回復を実施しますが、その際の費用負担に関しては「東京ルール」と呼ばれるガイドラインによって原則と例外が定められています。
費用負担の原則

akkarapol / PIXTA(ピクスタ)
東京ルールの基本的な考え方としては経年劣化・自然損耗・通常の使用による住宅の損耗等の復旧は貸主の費用負担で行い、故意・過失・善管注意義務違反・その他通常の使用を超えるような使用による損耗等は借主の費用負担で復旧するということになっています。
故意・過失としてはタバコによるヤニ汚れや結露を放置したことによるカビやシミ、飲み物をこぼしたことによるシミや汚れといったものが該当します。
費用負担の例外

もとくん / PIXTA(ピクスタ)
それでは退去前に部屋を清掃してシミや汚れを綺麗にしておけば敷金がより多く戻ってくるかというと、そういうものではありません。
東京ルールでは例外事項として「貸主と借主は両者の合意により上記の原則と異なる特約を定めることができる」とされており、これに基づいてほとんどの賃貸借契約では室内クリーニングや和室にある畳、襖、戸襖の張替費用を借主負担としています。
金額を明示している場合とそうでない場合がありますが、退去時に借主が清掃をしていようがいまいが貸主は業者による室内クリーニングを実施します。
これらは契約前の重要事項の説明で必ず触れる内容で、筆者も在職中はこの点に関しては特に念入りに説明しました。
業者によるクリーニングは必ず入る

ABC / PIXTA(ピクスタ)
貸主にとって退去が完了した部屋は次の入居者を迎えるための商品ということになりますが、再び貸し出すには部屋を完璧な状態にまで整備しなければなりません。
商品と呼べる状態に仕上げるためには退去者が行う清掃などあてにならずプロの手を借りる必要がありますが、その際の費用は単純に単価×広さで決められるもので、借主が事前に清掃したから安くなるというものではありません。
最近では「敷金礼金ゼロ」をうたい文句にした物件も増えてきましたが、そういう場合であっても「退去時清掃費用」という名目でなにがしかのお金を契約時に諸経費として徴収するものです。
また「室内クリーニングの費用を負担するのはやむを得ないとして、実施する業者は自分で探す」と食い下がってくる方が何人もいましたが、貸主としては見ず知らずの業者に大切な商品を任せることはできないのだということを常に説明していました。
敷金精算にはほとんど影響しない

freeangle / PIXTA(ピクスタ)
退去時の清掃によって返還される敷金の金額が変わってくることはほとんどないというのが筆者の実体験に基づく結論です。
特にタバコのヤニによるクロスの汚れは素人の清掃で落ちるようなものではなく、クロス貼替えが必要となって相当な金額が発生する覚悟をしておいた方がいいでしょう。
そうはいっても借りたものはやはり綺麗にして返すべきであり、部屋の清掃はマナーとして実施すべきだと思います。