スペインには二世帯住宅がないって本当? 高齢の親は一人暮らしのほうがいい?
最近日本では、子育て中の若い夫婦が両親の家のそばにマンションを購入して住むケースが増えているそうです。
近くなら保育園に迎えに行ってもらったり、帰りが遅いときに小学生くらいの子どもなら祖父母の家に一人でも行けるから、ということのようです。
その後、祖父母世代が歳をとったら同居ということも考えているのでしょうか。
40代くらいで二世帯住宅を建てることを考える方も多いと思うのですが、老後、息子夫婦または娘夫婦と同居することは本当に良い選択なのでしょうか。
近くに住むなら「娘夫婦」or「息子夫婦」?
日本でも最近は、妻の実家の近くに住むケースが多くなったようですが、それでもまだ夫の実家に近くに住むほうが多いのではないでしょうか。
スペインだけではなくヨーロッパでは、娘との関係の方が強い傾向にあります。
そのため、嫁姑の問題より婿姑の問題の方が多いというのが一般的です。
それでも男性は外で働いている場合がほとんどですし、台所争奪戦も少ないので、チクリチクリと嫌味を言われる程度のようですが……。
スペインで認知症が比較的少ないように感じるのは、多分娘と母親の関係がずっと続いているからではないかと思います。
娘と母親なら一緒にお買い物に行ったり、一緒にお茶をしに行ったりして、毎日一緒に楽しい時間を過ごせます。
同居が少ないスペインでは「スープの冷めない距離」に住むのが基本!
娘と母親との関係が強いスペインですが、同居をしている家族はほとんどいません。
階段の上り下りが大変になると、アパートを娘の家のそばに購入する人も多いのです。
または住んでいる家を娘夫婦に明け渡し、自分は近くにアパートを購入します。
スペインでは、「スープの冷めない距離」に住むのが基本のようです。
90歳を超えた未亡人たちも決して娘(息子)夫婦との同居はせず、一人暮らしを続けています。
重いものを持つのが大変になると、お買い物くらいはしてもらっていますが、食事の用意や掃除は基本的に自分一人でしている人がほとんどです。
一定の距離を保つこと、一人の人間として敬意を表すること

筆者(左)と、91歳になる母(右)です
年老いた母親が1人で生活している、年老いた両親だけで生活している、もうしかしたら、そういうことに心を痛める必要はないかもしれません。
少しだけ行動が遅くなっているかもしれませんが、自分たちのペースで生活しています。
好きな時間に起きて、好きなテレビを見て、好きな本を読んで生活している方が、いつも誰かに世話になっているよりもずっと楽なのではないかと思います。
歳をとると火の後始末が気になる人もいるでしょう。しかし、最近は鍋がカラになっていたら自動的にガスが消えるようになっています。
急に倒れたらどうするかという問題もあります。しかし、その一瞬のためだけに楽しい生活を犠牲にする必要もありません。
二世帯住宅は一世帯になった場合、広すぎます。
それぞれが独立しているとはいえ、賃貸に出すにも中途半端ですし、売却することもできません。
小ぶりのマンションなら、売却や賃貸、仕事部屋、娘や息子のひとり暮らし用など、住む人がいなくなった後の利用方法もいろいろ考えられます。
91歳でなんでも一人でできるのは、一人暮らしをしているから?
実は91際になる私の母も、近くのマンションでひとり暮らしをしています。
共有スペースに庭とプールがあるので、孫たちが小さい時は遊んでいるのを上から見ていました。
母は79歳のときに、生まれて初めてひとり暮らしをし始めました。紅茶とお菓子をベッドで食べられる幸せは何ものにも変えられないそうです。
これから足腰が弱くなってどのようになっていくかはわかりませんが、91歳でなんでも一人でできるのは、一人暮らしをしているからではないかと思います。