スーパーもない!ファミレスもない!豪雪地帯に学ぶ保存食の作り方
12月から3月まで、雪に閉ざされる岐阜県郡上市石徹白(いとしろ)。
人口はわずか250人。スーパーもファミレスも、病院もなく、それらがある近隣集落へは車で30分かかる集落です。
取材に伺った日は幸いにも雪が少なかったのですが、山道に不慣れな私は、くねくねと続く九十九折の峠道を越えるだけでも四苦八苦。
今ほど除雪設備が十分ではなかった昔は、さぞや冬の食料調達に知恵や工夫が必要だったことだろうと、苦労が偲ばれました。
だからこそ、石徹白には保存食の知恵が脈々と受け継がれています。
第1回は豪雪地帯での暮らし方、第2回は過疎地での子育て事情についてご紹介してきたこの連載。
最終回となる今回は、「石徹白に受け継がれてきた保存食の知恵」について、石徹白洋品店の平野馨⽣⾥(かおり)さんに伺いました。
■ 寒いほど美味しくなる!お正月料理“ニシン寿司”
保存温度が高いと酸味が強くなってしまうお漬物。
寒さはお漬物の最高の“調味料”と言えるでしょう。
寒冷地の石徹白はお漬物づくりに最適な土地。何種類ものお漬け物が各家庭で作られています。
その中でも、ほとんどの家庭で作られているのが「石徹白かぶらの塩漬け」です。
この集落の在来種である「石徹白かぶら」は、漬けると全体がピンク色に染まり、冬の食卓に彩りを添える石徹白の冬の“風物詩”です。
石徹白でお正月料理として食べられているニシン寿司も、各家庭で味が受け継がれてきた郷土料理。
年末に作り、お正月にみんなで食べます。子どもから大人まで人気のお祝い料理です。
【ニシン寿司の作り方】
- 大根と人参を細かく切って、3%の塩で漬けて水を出します。
- 水が上がったら水を捨てて、ご飯と麹、ニシンを加えます。
- 2週間ほど漬けたら、出来上がりです。
焼いて食べるのがスタンダードですが、平野さんは生で食べるのも好きと言います。ニシンの替わりに、刻んだするめを使うのもおすすめだそうですよ。
■門外不出の発酵食「肉の漬物」
他の地域にはない、石徹白オリジナルの保存食が「肉の漬け物」です。
比較的新しい保存食で、平野さんによると「今80歳くらいの方が10代の時に、石徹白に働きにきていた韓国人から教えてもらって、『美味しい、美味しい』ってあっという間に広まった」とのこと。
豚キムチのような味で、ご飯にもお酒にも合う箸が止まらない一品です。
【肉の漬け物の作り方】
- 白菜を塩漬けにし、水が上がったら水を捨てます。
- 白菜の漬け物に、お好みの肉(鶏肉、豚肉、牛肉何でもOK)、ニンニク、唐辛子を混ぜ込みます。
- 1〜2週間くらい漬け込んだら、フライパンなどで焼いて食べます。
「冷凍しておけば、夏まで食べられます。でもいつもその前に食べ切ってしまいますけど(笑)」
美味しいだけでなく、美容にも良いお漬け物。これらを大量に作っておくことで、冬の厳しい寒さを乗り切っているのですね。
皆さんもこの寒さを生かして、ぜひ試してみてください。
【取材協力】
石徹白洋品店 平野馨生里さん(岐阜県岐阜市出身)
都内で広報の代理店に勤務した後、郷里である岐阜の地域づくりに惹かれUターン。2011年9月に石徹白に移住。
ショップ&ギャラリー「石徹白洋品店」を営み、石徹白に伝わる野良着「たつけ」と「はかま」を復刻したり、民話をベースにした絵本をつくったりと、石徹白の文化の伝承に力を注ぐ。
石徹白洋品店:http://itoshiro.org