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容子 ルイス容子 ルイス

羽毛ふとんってどう選べばいい?キャリア25年のプロに聞きました

羽毛ふとんの必要な季節になりました。

フリーランサーとして、羽毛ふとんの企画の仕事をして25年になります。

羽毛は、その断熱性能、保温性、軽さにおいて、他に類をみないほど優れた天然素材です。

水鳥が与えてくれるこの恩恵をむだなく有効に使うことが、私たちの使命と思いながら、羽毛ふとんに関わってきました。

そこで学んだことを基に、ぜひ、みなさんに知っていただきたい「自分に合った一生ものの羽毛ふとんの選び方」について書きたいと思います。

羽毛ふとんとは、ダックまたはグースの羽毛とスモールフェザーを混ぜ合わせたものを、マス目に縫製された生地に充填したおふとんのことです。

生地は通常、中身の飛び出しを防ぐためにダウンプルーフ加工という加工が施されています。

マス目の縫製がなく、後からミシンがけしてキルト状にしたものがありますが、これはタタキと言って、かなり充填量の少ない、ダウンブランケットなどに使用される方法。

ですので、通常の寒さ対策の羽毛ふとんを買う場合は、かならず、ひとマスごとにマチという壁で仕切られたキルト縫製が施されている羽毛ふとんを選びます。

大切なのは、快適な睡眠を得る条件を満たしているかどうか

羽毛ふとん側面

快適な睡眠を得られる条件として、寝床内温度と寝床内湿度という数値のめやすがあります。

寝床内温度が33℃プラスマイナス1℃、寝床内湿度が50%プラスマイナス5%とされています。

 

裸の状態で寒くも暑くもない温度は約29℃といわれています。

睡眠中は代謝機能が低下、体温も下がりますので、おふとんの中での快適温度はそれより3℃から5℃高めが理想的とされています。

そこで、この快適寝床内温度と湿度が保てるように、羽毛ふとんがきちん設計されていることが重要といえます。

 

羽毛の持つ「断熱性能」を設計することが大切

ふとん

快適なおふとん内の寝床温度と湿度を保つには、睡眠中に受ける寝室の室温の影響を考慮しないといけません。

言い換えれば、暖かいお部屋で眠るのと、冷え込んでいるお部屋で眠るのとでは、快適な寝床温度と湿度を保つための、羽毛自身の性能のバランスを調整する必要があります。

つまり、おふとんの外からの影響を受けにくくするために、羽毛の持つ「断熱性能」を設計することになります。

異なる室温の寝室環境に対して、羽毛ふとんの設計を行うノウハウはコンフォートインデックスと呼ばれています。

これは原料羽毛の段階から、膨大な実験と測定を行って集積したデータを分析して、羽毛の性能を数値化することに成功した公的専門機関(C.I.L.快適睡眠環境研究所)による検査データに基づいています。

これによって、充填する羽毛の種類、羽毛とスモールフェザーの配合率(ダウン率)、充填量、ダウンパワー(嵩高)、キルトのマチ高などを設計して、一枚の羽毛ふとんを作るノウハウといえます。

このノウハウで作られた羽毛ふとんを使うことをオススメします。

写真はC.I.L.で行われている羽毛の断熱性能のテストの一部です。

写真はC.I.L.で行われている羽毛の断熱性能のテストの一部です。

 

産出地より、羽毛自体の性能が肝心

ふとん

言い換えれば、羽毛の色、ホワイトまたはグレー(シルバー)はまったく羽毛ふとんの性能の良し悪しには影響を受けません。

また、羽毛の産出国として、ポーランドやハンガリー、フランスや中国などがありますが、産出国も関係ありません。

羽毛はどこで産出されたのかが問題ではなく、その羽毛自体がどのような性能を持っているのかの検査結果が問題なのです。

羽毛そのもののダウンボールの大きさは確かに影響がありますが、わずか1グラムの羽毛に2000粒を超えるダウンボールが存在しているわけですから、多少のダウンボールの大小の差は、設計段階で調整することが可能です。

また、マザーグースの羽毛とよくいわれますが、マザーグース自体はそれほどたくさんの数が存在しているわけではありませんから、これだけを選りすぐるという考え方は、ある意味、自然界に対して、少し傲慢すぎるという見方もできます。

 

鳥種ではなく、設計の内容が重要

グース

野生のカナディアングースたち。ダウンはあくまで食用のための副産物ですので、基本的に野生の鳥たちを殺すことはありません

では、ダックとグースとではどうでしょうか? グースはダックより身体自体が大きいですから、当然、ダウンボール自体も大きくなります。

グースがダックより価格が高くなるのは、主にそのせいですが、設計により、ダックの羽毛でも十分な性能を引き出すことができます。

鳥種が重要なのではなく、設計の内容が重要ということです。

グースやダックは、羽毛の採取のために飼育されるのではありません。食肉のために育てられます。

ニワトリと同じです。主に輸出用食肉のためにグースやダックを飼育している国もあります。

ダウンボールの写真です。

ダウンボールの写真です。この神秘的とも言える自然の造形が、たくさんの恩恵を私たちに与えてくれます

時代も変わり、気候や自然環境も人々のライフスタイルも大きく変化しつつあるなかで、羽毛自体の生産体系と需要供給体系も大きく変化してきています。

つまり30年、50年前の羽毛ふとんの価値を測る物差し自体も、大きく変化してきているといえます。

羽毛ふとんをことさら高級品として見る必要もなく、同時に、価格競争の対象として扱えるような、安易な商品でもないといえます。

快適な睡眠環境を維持する調整能力があるのは、唯一羽毛だけです。

どんなに進歩したテクノロジーも、この羽毛の能力にはかなわないのです。

 

断熱指数TOGの数値の見方

鳥の種類や産地だけで羽毛ふとんの良し悪しを判断することでは、「一生ものの羽毛ふとん」は手に入らないことは理解していただけたと思います。

ポーランド産の羽毛だから暖かい、ということではなく、寝床内温度と湿度が快適数値になるように、そのおふとんがきちんと設計されているかどうかが問題なのです。

室温の違いによって断熱性能を設計することは、欧米の羽毛ふとんや、アウトドア用のダウンジャケットなどにはすでに適応されています。

この断熱性能の設計は断熱指数TOGの数値で表されています。

室温や体質で羽毛ふとんを選ぶための早見表です

室温や体質で羽毛ふとんを選ぶための早見表です

例えば断熱指数13というと、およそ、室温13~15℃のお部屋向きとなり、断熱指数15は室温10℃から11℃というようになります。

したがって、寝室の室温がだいたい就寝時どのくらいなのかがわかれば、断熱指数の数値を目安に羽毛ふとんを購入すると、暑すぎたり、寒すぎたりの失敗がありません。

ただ、暖房をつけて眠る方、屋外の空気の影響を受けやすい家の造り、寒がりの方、あるいは年齢のちがいなどによって、めやすとすべき断熱指数TOGの数字は前後します。

ふとん

羽毛ふとんの設計は、その前後幅を多少考慮していますが、同時に羽毛はあくまで自然素材ですから、その性能をめいっぱい引き出して使う必要があります。

羽毛は信じられないほど丈夫で回復、蘇生能力の強い素材です。また、奇跡的ともいえるほど長持ちする素材なのです。

羽毛は機械のように壊れることはありませんが、適切なメンテナンスが必要です。

「一生使える羽毛ふとん」と最初に書いたのは、メンテナンスを適切な時期に行うことで、80年90年と使えるからです。

 

丸洗いや打ち直し(解体リフォーム)をすれば長く使い続けられる

ふとん

羽毛はほんとうに信じられないほど、ありがたい自然界からの贈り物なのです。

羽毛ふとんを使っていると、正直、あっという間に5年10年が経過します。気がつくといつ買ったのかも記憶にないくらいです。

数年から10年を経過している場合、プロによる丸洗いや打ち直し(解体リフォーム)をすることをお勧めします。

丸洗いはふとんそのままを側生地ごと洗います。洗って乾燥させてフカフカにしてくれます。

打ち直しは、主に汚れのある古い側生地を解体し、中身の羽毛を取り出して、洗浄乾燥させ、新しい側生地に充填し直すというメンテナンスです。

生地は100年は持ちませんから、羽毛だけを生かすのです。

この打ち直しを10年に一度くらいしておくと、一枚の羽毛ふとんを、子供たち、孫たちに受け継ぐこともできるわけです。

また仕立て直しと言って、一枚の羽毛ふとんから2枚のサイズの小さい羽毛ふとんに作り替えたり、足し羽毛などをして、新しいアイテムに作り直すことも可能です。

写真は古い羽毛ふとんの解体。側生地を裂いて中の羽毛をすべて取り出します

写真は古い羽毛ふとんの解体。側生地を裂いて中の羽毛をすべて取り出します

一生ものの羽毛ふとん、これがおよそ数万円から10万円前後で買えるというのは、ある意味、理にかなった投資といえます。

産地や羽毛の色、鳥の種類や側生地の色柄を判断材料として買うのではなく、また、特に安いからという理由でもなく、ほんとうにその羽毛の性能の価値を理解した上で、ぜひ、一生ものの一枚を手に入れてください。

羽毛ふとんの購入先は数限りなくありますが、公的検査機関(C.I.L.快適睡眠環境研究所)の検査をパスし、断熱指数で設計された羽毛ふとんについて相談、購入できるお店の情報としてご紹介できるのは下記になります。

「まちの、いえ」という老舗の寝具店の協同組合があります。国からの協同組合認可を受けている団体です。

そこで扱っている羽毛ふとんが、先にご説明したコンフォートインデックス (快適睡眠のための寝床内温度と湿度を保てるように断熱指数TOGを設計するノウハウ)で作られた羽毛ふとんです。

ここで購入可能な最寄店を問いあわせることも可能です。また、羽毛ふとんについての質問も受け付けています。

次回は、羽毛ふとんのもう一つの優れている点、軽さについてご説明します。軽くて暖かい、これにまさる寒い時期のおふとんはありません。

文章と文責/写真(ダウンボールの写真を除く)/イラスト 容子・ルイス

 C.I.L.快適睡眠環境研究所

※ 「まちの、いえ」協同組合本部 電話/078・381・5160 メール/ oka@machino-ie.jp

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