厚木基地の騒音は今や激減!? 基地周辺ではどんな飛行機が飛んでるの?
今から20数年前、当時自動車関連会社に勤務していた筆者は日産座間工場(当時)を訪れる機会がありました。
そこで、工場内を巡っている際に「バリバリバリ」と空気を震わせるような騒音に何度も包まれて驚いたことをよく記憶しています。
騒音の原因は厚木基地から離陸したジェット戦闘機によるもので、軍事基地の近くで暮らすことの難しさを筆者はその時初めて知りました。
今回はそんな厚木基地について2回に分けてお話しします。
周辺で生活する人にとっては重大な問題
厚木基地は在日米海軍と海上自衛隊が共同使用する軍事基地で、神奈川県厚木市と綾瀬市にまたがっています。
横須賀を母港とする空母ロナルド・レーガンの艦載機の本拠地として、また日本周辺海域の監視活動や実験開発、全国の基地を結ぶ航空輸送等に従事する部隊の基地として運用されています。

240pikaru / PIXTA(ピクスタ)
ほぼすべての飛行機が離着陸可能な2400mの滑走路が住宅街のど真ん中にあるのですから、周辺ではすぐ目の前をこんなものが横切ることが日常的。
地域住民にとっては基地の存在は重大な問題です。
最近では戦闘機の騒音の問題はほとんどない
厚木基地周辺では「騒音」というイメージが付きまといますが、実際はどうでしょうか。
厚木基地に離発着する飛行機は小田急江ノ島線に沿って飛行するようです。
筆者の町田市のマンションはルートから少し外れており、ちょうど目線の高さで飛行機を見ることになります。
厚木基地周辺では空母が横須賀に入港すると戦闘機が飛ぶようになります。
しかし、艦載機の訓練で最も騒音被害が大きい夜間離着陸訓練は、筆者が平成14年に引っ越してきた時にはすでに硫黄島に移転されており、騒音に悩まされたということは筆者の場合ありません。
また在日米軍の再編により艦載機の航空部隊が2018年から岩国を主要な拠点としたこともあり、最近では戦闘機が飛ぶことすら稀になっています。
戦闘機以外の飛行機の騒音など、たかがしれています。
都心まで乗り換えなしで通勤できるエリアとして、小田急江ノ島線沿線は大いにオススメできるようになりました。
厚木基地周辺を飛ぶ飛行機
軍事基地というものにはいろいろと複雑な問題がついてまわるものですが、様々な飛行機を見ることができて乗り物好きにとってはうれしいという一面もあります。
そのため基地の南北にある撮影スポットは常に愛好者で賑わっています。
哨戒機P-3C
以前は最もよく見た飛行機ですが、最近は数が減ってきたように感じます。
潜水艦を探知するほかに日本近海を航行する船舶を観測し、かつては北朝鮮の工作船を発見したこともあります(個人的には最もカッコいいと思っている)。
哨戒機P-1
最近では最もよく見る飛行機です。
日本で独自に開発された哨戒機で、ジェットエンジンであるためP-3Cよりも活動範囲が拡がり、コンピューターの導入により情報処理能力が向上しています。
ジェット機ですが音は静かです。
レーダー照射があったなかったで、日本と韓国ともめたのがこの機種です。
輸送機C-130R
これもよく見る飛行機です。
1954年の初登場以来半世紀が経過した現在でも70か国以上で使用されており、基本設計が優れていて開発から半世紀以上経過していてもエンジン・プロペラ・電子機器以外はほとんど手が加えられていません。
そのため「世界最高の輸送機」とまでいわれています。
評価試験機UP-3C
評価試験機で飛行機の能力を向上させるための試験を行う飛行機で、日本に1機しかありません。
赤外線弾道ミサイル観測センサーシステムが搭載されており、頭の上の小さいコブの中にはセンサー装置が、機体の下のボックス内にはレーダー装置が搭載されています。
機首から突き出たツノのような物は空気の流れの速さを測定する機器です。
飛行艇US-2
ヘリコプターや船では難しい海難事故の救助に使用される飛行艇で、高さ3mの荒波でも着水可能です。
より短い距離で離着水できるよう、時速90kmという普通の飛行機では絶対に失速する速度でも飛べる構造となっています。
6年前にヨットによる太平洋横断の途中で遭難したニュースキャスターを救出したのもこの飛行機です。
輸送機オスプレイ
何かと話題のオスプレイは厚木基地周辺でもたまに見ることができます。
輸送機とはとても思えぬ機体の小ささとカマキリを思わせる形状が印象的です。
ちなみにプロペラが縦回転の時は比較的静かですが、ヘリコプターのように横回転の時は大型ヘリよりも大きな音がします。
東名高速の大和トンネルは実は厚木基地のためにある!
日本最悪の渋滞ポイントとして知られる東名高速の大和トンネルが、厚木基地のために設けられていることをご存じだったでしょうか。
住宅地の中にある厚木基地ではこれまで何回か地域住民を巻き込む重大事故が発生していますが、昭和36年には離陸に失敗して墜落した米軍機が相鉄線の架線と線路を損傷して不通にするという事故が発生しました。
そのため滑走路の延長部分である大和駅~相模大塚駅区間はコンクリートによってトンネル化されたのですが、同様の事故が発生した場合に被害を軽減させることを目的に東名高速でも道路に蓋をするような構造でトンネルが設けられたのです。
慢性的な渋滞解消のための道路拡張の最大の妨げとなっていたのがこのトンネルですが、2017年よりついに拡張工事が始まりました(周囲の土砂を除去してトンネルを掘り起こし、外側に新しい壁を設置して内側の壁を撤去する)。
在日米軍基地である厚木基地内は日本国内にあるアメリカの飛び地のようなもので、普段は立ち入ることができません。
しかし、毎年4月に開催されるイベントでは基地内に入って飛行機を間近で見ることができます。
次回はその「厚木基地日米親善春祭り」についてお知らせします。