羽毛ふとんを80年以上使うための洗浄とリフォームとは?キャリア25年のプロに聞きました

羽毛ふとんの正しい選び方について、今まで2回にわたってご紹介してきました。

暖かくなってくると、羽毛ふとんがそろそろ不要となってきます。

今回は、羽毛ふとんのリフォーム、打ち直しと仕立て直しについてのお話です。

お手持ちの羽毛ふとんがリフォームによって見違えるようになり、親子3代に渡って使うこともできます。

羽毛は実は、寝具向け素材(天然、人工問わず)の中でも、特にその耐久性と再生能力において最も優れている素材です。

適切なメンテナンスにより、親子3代(通算80年以上)の間使える素材です。

ぜひ、お手持ちの羽毛ふとんを、せめて一生の間、快適に使用できるように、メンテナンスについての知識と理解を持っていただけたらと思います。

羽毛ふとんの洗浄方法は大きく分けて3つ

羽毛ふとん

羽毛ふとんはまず側生地から汚れていきます。

また、側生地を通して、体から出る水分や油脂分などが羽毛にまで浸透していきます。

すでに5年以上使用されている場合は、洗浄をお薦めします。羽毛ふとんの洗浄方法には大きく分けて3つの方法があります。

 

1.丸洗い

羽毛ふとんをそのまま丸ごと洗う“丸洗い”。

丸洗いの場合、側生地のシミ抜きなどをした後、布ふくろ(カバー)に入れてロールアップして縛り、他の羽毛ふとんといっしょに大きな洗濯機で洗い上げ、布ふくろから出して、平台乾燥のあと、まとめて大きな乾燥機で乾燥させます。

ロールアップして縛る理由は、羽毛ふとんの側生地はダウンの飛び出しを防ぐダウンプルーフ加工のため、生地目がつぶされていますから、水や洗剤の浸透に非常に時間がかかるのと、中の羽毛が含む大量の空気で、羽毛ふとん自体が水の中で風船のように膨れて、中まで洗剤水が入らないためです。

きつく丸めることで、より早く洗剤や水が中に入ります。

古い側生地をそのまま生かしますから、洗浄の前に、目に付く大きなシミなどはシミ抜きします。写真は丸洗い工程の一部です。

側生地のシミ抜き処理

側生地のシミ抜き処理

側生地を守るため専用ふくろに入れます

側生地を守るため専用ふくろに入れます

洗剤水が浸透するようにきつく丸めて縛ります

洗剤水が浸透するようにきつく丸めて縛ります

洗濯機

丸洗い用の洗濯機です

平台乾燥の後、大きな乾燥機の熱風で一気に乾燥、殺菌します

平台乾燥の後、大きな乾燥機の熱風で一気に乾燥、殺菌します

 

2.ふくろ洗い

羽毛ふとんを解体して、中身の羽毛だけを取り出し、袋に入れて、他の羽毛の袋といっしょに洗うのが〝ふくろ洗い〟です。

側生地は廃棄処分となります。

中身の羽毛を取り出して洗いますので、丸洗いの場合よりも洗浄力は増します。

ただ、他の羽毛ふとんの羽毛といっしょに行われるのと、一度にまとめて大量の羽毛を洗浄、乾燥させることになります。

 

3.プレミアムウォッシュまたはロイヤルウォッシュ

羽毛ふとんを個別に一点一点解体して中の羽毛を取り出し、袋などに入れず、そのまま直接洗う方法です。

小さな個別用の洗濯機を使い、羽毛の芯、つまりダウンボールひとつひとつまでを洗い上げます。

これがいわゆるプレミアムウォッシュまたはロイヤルウォッシュと呼ばれる方法です。

お値段は多少高くなる可能性はありますが、5年〜10年に一度の洗浄で、しかも、結果布団のかさ高が3割前後増しますから、十分に投資の価値はあると言えます。

乾燥除塵のプロセスも一つ一つ行われますので、他の羽毛と混ざることはありません。

最初から最後まで、プライベートで安心なサービスを受けられます。

羽毛ふとんを一枚を専用解体機にかけます

羽毛ふとん一枚を専用解体機にかけます

羽毛ふとんの側生地を裂いて、中の羽毛をとりだします

羽毛ふとんの側生地を裂いて、中の羽毛をとりだします

羽毛を余すところなく取り出します

羽毛を余すところなく取り出します

お客さまのカルテが作られ、最終工程まで間違いのないよに管理されます

専用のカルテが作られ、最終工程まで間違いのないように管理されます

 

プレミアム(ロイヤル)ウォッシュを薦める理由

1の丸洗いを除いて、2のふくろ洗いと3のプレミアム(ロイヤル)ウォッシュの場合は、解体して中身の羽毛ふとんを取り出しますので、古い側生地は廃棄処分となり、新しい側生地に充填されます。

このプロセスを行なっている工場にもよりますが、新しい側生地を選べる場合もあります。

綿100%の生地または化繊(通常TCまたはTTCと呼ばれる生地)の選択になりますが、綿は値段は高めとなり、少しおふとん全体が重たくなりますが、綿ならではの通気性など、優れた点も多くあります。

プレミアム(ロイヤル)ウォッシュッシュをかける前に、側生地の質と色柄を確認することをお薦めします。

白い生地を希望される方は、ベージュやクリームなど、薄くても色が付いていないか、かならず確認してください。

(クリームやベージュでも、ふとんカバーを通して地色が透けて見えてしまう場合があります)

集めた羽毛を洗濯機にバキュームダクトを使って移動させます

集めた羽毛を洗濯機にバキュームダクトを使って移動させます

個別洗濯機。他の人の羽毛と混ざることはありません

個別洗濯機。他の人の羽毛と混ざることはありません

芯まで洗いあがった羽毛

芯まで洗いあがった羽毛

洗い上がった羽毛をバキュームダクトで乾燥機へ送ります

洗い上がった羽毛をバキュームダクトで乾燥機へ送ります

これ以降の、詳しいプロセスについては、ぜひこちらのサイトをご覧ください。

 

羽毛ふとんの「リフォーム」とは

次に、打ち直しと仕立て直しについてご説明します。

日本では多くの会社がこれを“羽毛ふとんのリフォーム”と呼んでいます。

打ち直しは、オリジナルのサイズを変更しないで、洗い上げた羽毛を新しい側生地に充填する場合を言います。

仕立て直しは、オリジナルのサイズを変更して、ダブルサイズをシングルサイズにしたり、厚手の冬用羽毛ふとんを、薄手のダウンブランケットなどに変更する場合のリフォームを言います。

この場合は、必ず羽毛ふとんに詳しいお店の人と相談されることをオススメします。

私自身は、シングルの古い羽毛ふとん2枚をプレミアムウォッシュしたあと、仕立て直しで、ダブル1枚にしてもらいました。

取り扱い店にもよりますが、早いところで工場到着から1週間から10日で受け取ることができます。

示書に従い、充填していきます。打ち直しの場合、オプションとして足し羽毛もされます

指示書に従い、充填していきます。打ち直しの場合、オプションとして足し羽毛もされます

打ち直しも仕立て直しも、プレミアム(ロイヤル)ウォッシュを行うことで、中身のダウンボールは完全に蘇り、さらに性能がアップ、かさ高も増して、側生地は新しくなり、見違えるようになります。

いつ買ったのかも記憶にないような古い羽毛ふとんでも、絶対に捨てないで、打ち直しや仕立て直しを検討してみてください。

10年、20年前の羽毛ふとんは、当時、かなり高いお金を支出して買われている場合が多いと思いますが、むしろ今のものよりも優れたダウンが使われている可能性があります。

また、多くの場合、おふとんに縫い付けられている品質表示(ラベル)が薄れて読めなくなっているはずです。

お店に持ち込んだ際、羽毛ふとんに詳しい店員さんとよく相談されることをお薦めします。

また、マス目(キルト)の種類(立体加工の設計)や、充填量を増やす場合の足し羽毛、アレルギー源をシャットアウトする加工の有無など、いくつかの選択肢やオプションがありますから、正しい知識を持つお店を選ばれることをオススメします。

 

羽毛ふとんであることが大前提

羽毛ふとん

注意すべき点は、かならず羽毛ふとんであること。

羽毛ふとんと思い込んでいても違う素材が使われたりする場合があります。

また、羽毛の充填量(ダウン率)が半分以下で、ほとんどがスモールフェザーである場合には適応されません。

事前に羽毛布団のプロと相談できるのが理想的です。

私自身がお薦めできるお店は、現場で羽毛ふとんのリフォームを取材して、直接確認できている「まちの、いえ」組合に加盟しているお店と、そこが直接つながっている資格のある工場です。

もちろん、ここ以外でも同じサービスを受けることは可能です。

ただ、値段の安さにつられて、どんな洗い方をするのかを確認しないで、あるいは確認できないシステムに、大切な羽毛ふとんを預けてしまうことはお薦めできません。

プロに任せる以上は、プロとしてかならず信頼できる場所を選んでください。

工場

 

自宅でのクリーニングにも挑戦してみましたが…

また一方で、羽毛ふとんは自分で(家庭で)も洗えるともいわれています。

そこで、実際に洗って試してみました。

洗えないことはないのですが、アメリカで使われているような相当大きなサイズのドラム式乾燥機が必要です。

あるいは、コインランドリーの大型洗濯機や乾燥機を使う方法もあります。

コインランドリー

清十郎 / PIXTA(ピクスタ)

その場合、乾燥にどれだけの時間がかかるかわかりませんが、私が自宅の大型ドラム式乾燥機で芯まで乾燥させた場合1日3〜4時間使い、トータル3日かかりました。(これは、ふとんのサイズや乾燥機の仕様で異なりますから、厳密ではありません)

また、洗濯は大変です。洗濯機はいくら大型でも家庭用では無理ですから、バスタブにお湯を張って、洗いました。

これはさすがに重労働です。

羽毛ふとんは、先述したように、ダウンプルーフ加工がされていますから、生地が水をはじいて、しかも風船のように膨らんで、なかなか水が入り込みません。

また、逆に水を含むと、信じられないほど重たくなり、バスタブから運び出すのもたいへんでした。

また、側生地ごと洗濯するわけですから、とてもダウンボールの芯まで洗えたとは思えません。

そうなるとこれだけの手間暇をかけて自宅で洗うということの意味がわからなくなります。

生乾きのダウンは臭いの原因を作るようなものですから、結果、あまりお薦めすることはできません。

 

日本は羽毛ふとんの情報が圧倒的に少ない

羽毛ふとん

ぜひ、羽毛ふとんを5年以上お使いの方は、プレミアム(ロイヤル)ウォッシュとリフォームを考えてみてください。

ご利用される会社によっては、リフォーム終了後も、未使用期間最長6か月まで無料で保管してくれるサービスもあります。

軽いとはいえ、かさばるふとんを不要なときに預かってもらえるのはたいへん助かります。

また、ダブルサイズの羽毛ふとんを、子ども達用にシングル2枚に仕立て直したり、春秋用に薄がけに作り直すなど、目的や用途を考え直すのも、羽毛ふとんでこそ可能な合理的なプランです。

3回にわたり、羽毛ふとんについて詳しく説明してきました。

私自身は北カリフォルニアに在住しています。25年以上、羽毛と羽毛ふとんの企画や寝装寝具ブランディングの仕事をしてきました。

その中で、日本で生活する友人たちと話をしていて、あまりにも羽毛ふとんのことが一般的に知られていない、理解されていないことに愕然として、この投稿を行いました。

特定の会社やブランドを推す意図はありませんが、自分の体験やリサーチを通して、この目で確認してきてお薦めする問い合わせ先をご紹介しています。

もちろん、他にも優秀で信頼性の高い会社やブランドはたくさんあります。

みなさん、ご自身でいろいろと納得のいくまで調べられることをお薦めします。

 

貴重な天然資源である羽毛を長く大切に

羽毛ふとん

羽毛ふとんを使うのは私たち消費者です。工場でも会社でもありません。

羽毛ふとんに限らず、消費者が公平な正しい知識を得ていくことこそが、良い商品やサービスを育て、さらに悪い点を改善していく最大のパワーとなります。

そのことが商品やサービスの発展と、品質と価格の正しい関係を作り上げていくことにつながり、日本の消費カルチャーを育てていくのだと思います。

日本製の商品は世界でも高い位置にランクされています。

そんな中で、羽毛ふとんはかならずしもその価値の高さに対して、正当な評価を得ていない残念な部分があります。

必要以上の安価や、本来、もっともリフォーム、リユース、リサイクルに適した素材なのに、無駄に廃棄処分されている現状、これらは正しい知識がこれまで、私たち消費者に上手く伝わらなかったことの弊害ともいえます。

売って終わり、買って終わり、とされてきた消費優先の時代はもう終わりました。

貴重な天然資源である羽毛を無駄なく快適に末長く使い続けるためにも、ぜひ、正しい知識を得て、メンテナンスやリフォームにトライしてみてください。

命を賭して貴重な羽毛を提供してくれるダックやグースのためにも、このシリーズの記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

 

文章と文責/写真 Yoko Lewis Glogowsky

「まちの、いえ」協同組合本部 電話/078・381・5160 メール/ oka@machino-ie.jp

上記へお問い合わせいただくと、お住まいから最寄りのお店のインフォメーションを得ることができます。また、羽毛ふとんについての質問にも答えていただけます。