雨どいをつける?つけない?大いに悩んだ結果…【住宅ライターの家づくり】
雨どいとは、雨水から家を守る役割を担うパーツ。
屋根の傾斜に沿って下へ向かって流れる雨水を軒下で受け止める軒樋と、軒樋を通ってきた雨水を排水溝まで誘導する通路が竪樋、軒樋と竪樋の接続部にあたり樋集水器の主に3つのパーツで構成されています。
家の外観を見ると、雨どいの存在は案外目立ちますが、これまでの新築のお宅の取材で、こだわって雨どいを選んだという施主さんに出会ったことがありません。
目立つ割にはさほど注目されないパーツとも言えそうです。
そんな雨どいですが、我が家を建てる時、つけるか・つけないか、実は最も時間をかけて考えたのが、雨どいだったんです。
片流れの屋根に雨どいは必要か?
我が家の屋根は片流れ。屋根材は、ガルバリウム銅版の波板を選びました。北から南へ下がるように傾斜があり、ウッドデッキを覆うように軒が長いのが特徴です。
建築家と工務店と私たち家族で、さまざまなパーツや設備について確認をしていたときのこと。
最後の方におまけ程度の話題で出てきた雨どいについての確認。
雨どいはナシで、という建築家の意見に、珍しく夫が「雨どいは必要だ」と強く主張したのです。
雨どいをつけるかつけないかは「必要か不必要か」というより「デザインをとるか機能を取るか」という議論に近かったと思います。
大雨の日。土砂降りの日。雨どいがないと大量の水が流れ落ちてきて大変なんじゃないか、というのが夫の懸念事項でした。

東北の山親父 / PIXTA(ピクスタ)
その日から夫は、通勤時、さまざまなルートを通って仕事に通い、雨どいのない家を探すようになりました。
そして毎日帰ってくるなり「雨どいのない家なんて一軒もないよ。やっぱり必要だよ」と言います。
一方、デザイン重視の私は、雨どいがなくても平気なんじゃないかと考えていました。
雨が落ちてくるのは一方向で家の前、玄関前のみ。
大雨の日に好んで出かけたりはしませんから、外出は最低限です。
出入りするときは多少の雨水を浴びることになりますが、それも一瞬。

金子忠利 / PIXTA(ピクスタ)
ウッドデッキに上がれば、そこは屋根の下。
広いウッドデッキの上なら、傘をたたんだり、レインウェアを脱いだりするのは容易です。
雨どいをつけるかつけないか、2週間ほど家庭内で話し合いましたが、平行線。
そのまま再び建築家と工務店との次の打合せに臨みました。
雨どいのデメリットとは?

Graphs / PIXTA(ピクスタ)
私が確認したのは、雨どいをつけることによって生じるデメリット。
雪が落ちる時に雨どいが壊れる可能性がある、と教えてもらいました。
私たちが暮らす静岡県御殿場市は富士山麓に位置し、冬の間、回数は少ないながらも雪が降り、積もることもよくあります。
だからもちろん、屋根には落雪を防ぐ雪止めがしっかりついていますから、雨どいが壊れる心配はなさそうですが……。
工務店の社長には「雪止めをちゃんとつけるし、そもそも落雪で壊れるような取り付けはしないけどね」と笑顔で言われましたが、雨どいをつけなけれは最初から壊れる心配なし、デザインも美しいままです。
夫はそう聞いて、しぶしぶ納得した様子でした。
2年暮らしてみて…「我が家は雨どいがなくても大丈夫!」
雨どいのない家に暮らしてもうすぐ2年が経ちます。
雨の日には、雨の量に見合った水が屋根から流れ落ちる風情のある景色を、家の中から楽しんでいます。
雨どいをつけなかったことで悩んだのは、外構を作る前だけでした。
雨の跳ね返りが大きく、雨が降るたびに雨粒と一緒に跳ね上がる砂がウッドデッキの下段に積もってしまったからです。
雨の後の晴れ間には必ずホウキで掃除をせねばならず、梅雨時にはいたちごっこだったからです。
このことを庭園設計をお願いした専門家に伝えたらウッドデッキ前を犬走りのようにしてくださり、解決しました。
木を植えた土の上に大振りな石が載っているのは、台風直撃の大雨の日、屋根から落ちる激流が植栽部分を直撃し、土が流れ、根がむき出しになってしまったから。
すぐに庭園設計の専門家がいらして、大きな石を土の上に敷いて手直ししてくださいました。
翌年は台風が来ても問題なし。植物たちはすくすくと育っています。
意外だったのは、冬の朝。
おそらく、夜間に凍った屋根上の結露が、朝の日差しで溶け出します。
すると、晴れているのに我が家の前だけ雨が降っているみたいな、摩訶不思議な景色に出会えます。
花や緑が少ない分、朝日を浴びてキラキラ光る水滴が目を楽しませてくれます。
住宅にはついていて当たり前と思っていた雨どいですが、家の構造によってはなくても大丈夫ことを知りました。
これも、建築家との家づくりを選んだからできた経験です。
そして、あれだけ「雨どいは絶対に必要だ!」と強く(それもかなりしつこく)主張していた夫が、冬の朝の景色を家族の中で一番楽しみにしていて、家づくりって本当に面白いと感じています。