「地震保険」では家を立て直せない!じゃあどうしてあるの?その有用性とは
2014年7月に保険料が改定された「地震保険」。
保険料率の見直しによって、2017年1月以降、再び保険料が改定される予定です。
家計への影響も気になるし、「そもそも地震保険って必要なの?」という方も、まずは「地震保険」の目的についておさらいしておきましょう。
■地震保険の目的は「家を建てなおす」ことではない

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前回のコラムでもお話ししたとおり、地震保険の保険金額は最大でも火災保険金額の50%。
つまり、保険金だけで被災前と同じ家を建てることは“事実上困難”なのです。
では、「家を再建できないなら意味がない!」のかと言えば、そうではありません。
そもそも地震保険は、家を建て直すためというよりも、「被災後の生活再建」を目的につくられたものなのです。
■「二重支払い」を助けてくれる!

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例えば、住宅ローンの返済中に被災して、わが家に住むことができなくなったら、どうなるでしょうか?
払込の猶予や猶予期間中の金利の引き下げなどの救済措置も考えられますが、基本的に住宅ローンの返済義務がなくなることはありません。
新しい家を立てなおしたり、新しく借りたりする際の家賃や住宅ローンと、既存の住宅ローンとの二重支払いは、被災後の家計にとって大きな負担に。
もし、このときに地震保険に入っていたらどうでしょうか?
例えば、建物で1,000万円、家財で500万円の地震保険に加入していたとして、「全損」と認定されれば、受け取れる保険金額は1,500万円。
地震保険金は使途を限定していないので、保険金を家賃の支払いや既存の住宅ローンの返済にあてることもできます。
■どんな人が、地震保険に入るべき?
では、どんな人が地震保険に加入すべきでしょうか?
被災した場合の家計のリスクは、
- 賃貸<持家
- 住宅ローン残高が少ない<多い
- 貯蓄残高が多い<少ない
となるのが一般的。
「住宅ローンの残高がまだ相当残っているけど、貯蓄はそれほどない」
「被災しても頼れる親族や身を寄せる場所はないかも……」
など、被災後の「家計のリスク」が高い場合には、加入を検討してみましょう。
これからマイホームを購入するという方は、保険で備える以外にも「住まい」で備えるという考えもあります。
免震・耐震性の高い住宅は、災害から身を守るとともに保険料も抑えることができますからね。
■埼玉・茨城・高知・徳島は、地震保険料が50%値上げに!
地震保険は、公共性が高いため、商品内容・保険料はどこの保険会社で加入しても同じだというお話は、以前しましたね。
また、建物の所在地(都道府県)と構造によって、金額が変わります。
しかし、2017年1月以降は、震源モデルの更新などにより、保険料率が変わります。
全国平均で19%の引き上げとなりますが、なかでも埼玉、茨城、高知、徳島は50%も引き上げに!
1回で引き上げるのは負担が大きいため、3段階に分けて引き上げていく予定です。
第1段階の引上げ率は、全国平均で+5.1%ですが、都道府県によってもかなり違いがあります。
最大引上げ率は埼玉県の+14.7%、最大引下げ率は愛知県・三重県・和歌山県のー15.3%。
東京都は+11.4%の引き上げとなっています(ともにイ構造の場合)。
これから加入する方は、保険料がどのくらい上がるのか(または下がるのか)、お住まいの地域の動向を確認しておくとよいですね。
上記の引上げ率は現行(2014年7月改定)との比較のため、それ以前に長期契約で加入している場合は、変動率はさらに大きくなることも。
更新間際になって慌てないためにも、実際に保険料がいくらになるのか、早めに確認しておきましょう。
■加入・見直しの際は、損害区分の変更にも注意!
保険金の支払割合を決める損害区分は現行では3区分(全損/半損/一部損)となっていました。
ですが、僅かな損害割合の差で、保険金に大きな格差が生じてしまうことがありました。
このため、より損害の実態に照らした保険金支払とするため、2017年1月から4区分に細分化されます。
来年1月の改定前に加入、あるいは既契約を解約し再契約することで、保険料アップを避けることもできますが、改正前と改正後では保険金の支払額が変わるケースがあることを理解したうえで、検討しましょう。
地震保険の目的と必要性、そして、今後の改定についてお話ししました。
災害への備えは、個々の家計や住まいの状況、その人の考え方によっても変わります。
地震の活動期に入ったといわれる日本。M7クラスの首都直下地震が発生する確率は、30年間で70%と推定されています。
他人事ではない、住まいの「もしも」について、改めて考えてみることも大切ですね。
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【参考】
※ 地震保険基準料率の届出について(2015年9月30日 ニュースリリース)- 損害保険料率算出機構