社会派人気ブロガーのちきりんさんが、ご自宅をリノベーションして得られた多くの学びを「これからリノベする人」にも共有したい!と考えて書かれた『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50の
自宅をフルリノベした人気ブロガー・ちきりんさんのリノベ体験談やリノベーションの考え方などを4回にわたってお届けしています。
第3回目のテーマは「リノベの予算」です。
プランニング中に何度も顔を出しては施主を悩ませる “予算調整”。
でも、ちきりん流で論理的に考えるとスッキリ解決しちゃうかも。
「予算いくら?」という質問の真意

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個別相談に行くと必ず聞かれる「予算はいくら?」という質問。
いやいや、いくらくらいでリノベができるかこっちが聞きたいくらいだよ、という人も多いでしょう。
それでも聞かれる予算。なぜリノベ会社はそこまで予算を聞いてくるのでしょうか。
それは、予算によって見せる世界が変わってくるから。
例えば、予算2000万円なら間取りを大胆に変更し、ふんだんに自然素材を使い、豪華なキッチンやバスルームを備えるプランも提案できます。
でも、予算500万円の人にその煌びやかな世界を見せても無意味です。もちろん逆も然り。
だとしても、無垢フローリングにするといくらかかるか、オーダーキッチンはいくらで作れるかを知らないのに予算なんて組めないよ、と思うかもしれません。
ところが、リノベ会社にとってもこの段階でそれを明示するのはとても難しいのです。
というのも、ひとことでユニットバス、もしくはオーダーキッチンといっても、ピンからキリまで大きな価格差があるからです。
リノベ費用の多くは設備の材料費よりも人件費です。

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例えば床材。
ヘリンボーン貼りはとてもおしゃれですが、貼るのに時間がかかる上、無駄になる端材も発生するため面積以上の床材が必要。
だから「床を無垢にするといくらかかりますか?」と聞かれても、リノベ会社も明確に答えられないのです。
そうなると、予算は自分で決める以外ありません。ではその予算はどうやって決めたらいいのでしょうか。
「月いくら払えるか」から予算を考える

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貯金がいくらあるから、ローンがここまで組めるから、だから予算はこれだ! と決める人、または施工事例を見てだいたいの予算感をつかむ人もいるでしょう。
でも、もっと論理的に予算を決める方法があります。
それは、「リノベ後の家に、月いくらの家賃を余分に払えるか考えること」です。
ちきりんさんはまず、リノベをした後、何年ここに住むだろうと考えました。
その答えは「できれば20年は住みたい」。
次に考えたのが「今の部屋と新しくなった部屋、もしどちらも賃貸だったら、何万円、家賃が高くても新しい部屋に住みたいか」
そういう流れでちきりんさんは予算を考えたそうです。

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ちきりんさんの答えは「お風呂もキッチンも新しくなる。動線も完璧。二重窓で断熱性も高くなる。これなら家賃でプラス月3万円は払う」。
次に考えたのが「フリーランスなので、仕事の打ち合わせやネット会議ができるスペースを整えたい。そのために月いくら払うか?」
その答えは「月2万円ならオフィス分として払える」。
つまり「圧倒的に暮らしやすくなる家に月3万円、オフィスとして使うための費用として月2万円、合計5万円が、自分として納得できる額」というのが、ちきりんさんの答えだったのです。
そして、この額×住むであろう期間をかけた額が、ちきりんさんのリノベ予算となりました。
ちきりんさんは所有物件をリノベ―ションしたので予算はリノベ費用のみでしたが、物件から購入する人だって考え方は同じ。
何年住んで、月々いくら払ってもいいと思える部屋になるのか。
一度、そこから考えてみてはいかがでしょう。
優先すべきは何? 予算配分の考え方

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今回ちきりんさんにお話を聞いて大きく頷いたポイントのひとつはココ。
予算を決めたら、その次に考えるべきは優先順位です。
ちきりんさんの優先順位トップは「暮らしやすさ」。
おしゃれな内装よりも基本性能が大切、という考えでした。
なので、ちきりんさんはスケルトンリノベという貴重な機会にしかできない断熱や間取り変更などの工事に優先的に予算を投下。
そして、余った予算内で設備をチョイスし、内装を楽しみました。
予算と優先順位を決めれば、ブレない。
「150万円の浴室は無理だな」「オーダーキッチンはやめよう」といった判断がスパッとできるようになります。
もちろん、寒くてもいいからおしゃれな家に住みたいんだ!という人もいるでしょうし、それはそれでいいんです。
リノベーションで何をしたいのか、どんな暮らしを実現したいのか、よく考えて優先順位の上から予算を配分していきましょう。
それでも迫られる予算調整はどう切り抜ける?
予算と優先順位をしっかり決めても、細かい予算調整には何度も頭をかかえることになるでしょう。
そんな時は、自分のこだわりのない部分はどこなのかを考え、そこの予算をどんどん削りましょう。

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例えば、日本製のトイレはどこも素晴らしい。
だからちきりんさんは「どのメーカーのどの品番でもいい、一番安く仕入れられるものを」とリクエストしたそうです。
また自然素材にもこだわらず、むしろメンテナンスのしやすさを重視して、無垢フローリングではなく手入れが簡単な突き板フローリング、珪藻土ではなく塗り壁風に見えるクロスを採用。
そのおかげで、玄関ホールの輸入壁紙やリビングの壁に貼ったタイルなどに費用を充てることができ、こだわりある内装もしっかり実現できました。

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内装はメリハリがつけやすいポイント。
譲れる部分と譲れない部分、しっかりすみ分けて予算を配分すれば、叶わなかった内装リクエストも実現できるかもしれません。
おしゃれな内装や最新設備と天秤にかけられる、予算という名の重し。
どうやってその総額を決めるのか、それをどうやって配分して予算を死守するのか、リノベ予算の考え方をここではお伝えしました。
これで悩ましい予算問題もスッキリ解決……するといいですね。
さて、次回は最終回。
ちきりんさんが作り上げた暮らしやすい理想の家のなかで、特に気に入っているポイントをご紹介します。
そこかしこに常識にとらわれないオリジナリティがキラリ。
さあ、次回はいよいよ魅惑的な(?)ちきりん邸に潜入です!
■ちきりん
関西出身。大学卒業後、金融機関に就職。アメリカの大学院留学を経て、外資系企業に転職し、在職中にブログを書きはじめる。
退職後、2011年からは文筆家として活躍。『自分のアタマで考えよう』『マーケット感覚を身につけよう』(ダイヤモンド社)ほか著書多数。
「Chikirinの日記」は月間ユーザー30万人を超える人気ブログ。