不動産

高幡和也高幡和也

不動産を「キャッシュで買うと安くなる」は本当?

土地や建物などを購入する場合に、その不動産を「現金」で購入する買主は一般的な視点から見ると「良いお客さん」に映るかもしれません。

しかし実際は、買主が不動産の代金を手持ちの現金で支払っても銀行ローンで支払っても、売主の立場から見ると「どちらでも同じ」なのです。

今回はこの「どちらでも同じ」理由についてお話ししたいと思います。

現金払いが売主に有利だという誤解

家賃

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たまに「この物件を現金で購入するので価格の交渉をしてもらいたい。売主さんも現金で支払ってもらった方が喜ぶはずだ」という話を耳にすることがあります。

筆者も何度かこのような依頼を頂いたことがありますが、このような買主さんは、「不動産の売買が割賦販売で行われている」と誤解しているのです。

不動産の割賦販売とは「代金の全部または一部について物件引き渡し後1年以上の長期にわたり、2回以上に分割して受領することを条件に販売すること」と宅建業法で規定されています。

しかし、親族間の売買など特殊な場合を除き、不動産売買で割賦販売が行われることはありません

代金全額をすぐに受領できない割賦販売は売主にとってなんのメリットもないからです。

銀行ローンを利用すれば売主は代金全額を現金で受領できる

住宅ローン

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「ローンで不動産を購入する」という意味は、買主が銀行等からの融資金を利用して売主に「代金を一括で支払う」ことです。

売主の希望によって代金の全額を振込で受領することや、一部現金・一部振込での受領も可能ですし、あらかじめ銀行に伝えておけば「代金全額を現金で受け取る」ことも当然可能です。

現金売買のメリットは買主にしかない

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実は、不動産売買取引を買主の手持ち現金で行うメリットは買主にしかありません。

まず、買主は借入をしなくて良いので金利の負担がありません。

いくら低金利時代だとはいっても返済期間が長期に渡り、借入金が高額になる場合が多い不動産のローンは、最終的に支払う利息の額も高額になるのです。

また、対象不動産の購入希望者が同時期に複数現れた場合、売主の視点から考えるなら「融資審査が必要ない買主」が契約相手として優先される可能性が高いといえるでしょう。

他にも、抵当権設定のない不動産は「担保割れ」の心配がないため換金性が高いことや、将来借り入れを行う場合の担保力など、多くのメリットがありますがそのどれもが「買主にとってのメリット」なのです。

「キャッシュで買うから安くして」が可能な場合も…

保険料

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かなり稀なケースですが、「キャッシュで買うから安くして」が可能になる場合があります。

これは、その取引が「売主が特殊な事情で今すぐ手持ちの不動産を換金したい場合」です。

買主が金融機関から融資を受けようとする場合、融資に必要な書類の用意や実際の審査にはある程度の時間が必要になり、さらに融資の実行までは1か月弱位の時間が必要になることも珍しくありません。

様々な事情でその時間を「待てない」売主は、代金相当の現金を持っている買主を探すしかありません。

その様な場合にのみ、「キャッシュで買うから安くして」が可能となるのです。

住宅地

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ただし、この様な特殊な事情を抱えた売買の買主はおもに「不動産業者」となります。

例えば、個人が自宅としての不動産を求めている場合に、上記のように特殊な事情をもった売主を個人が探し出すことは困難(ほぼ不可能)です。

万一そのような売主を見つけても、その対象不動産の立地・価格・エリア・その他が自分のニーズに合ったものである可能性は非常に低いといえるでしょう。

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不動産の購入に手持ちの現金を使うことは買主にとって数々のメリットがあります。

しかし、個人が自宅などの購入に「現金で払うから」といった理由で価格交渉をすることはやめておいた方がいいでしょう。