家づくりに役立つロングセラー。キホンが根幹からわかる『住まいの解剖図鑑』
数多くある家づくり本のなかから、自分の求める情報が載っているものを探し出すのは、なかなかに至難の業。
ここでは、優れた家づくり本をセレクトし、おすすめポイントを内容とともにご紹介。
一冊目に紹介するのは、2009年の発売から現在も売れ続けているロングセラーの『住まいの解剖図鑑』です。
人気の本であり続ける理由について見ていきましょう。
住宅設計の「当たり前」。その理由が丁寧に書かれている
筆者の増田奏さんは、一級建築士として住宅設計を中心に活動するかたわら、大学で建築計画・建築設計の分野で教鞭をとってこられました。
当初は住宅設計を学ぶ建築系の学生に向けて書き始められた本でしたが、住宅設計の実務に携わる人や、自宅を建てようとする一般の人でも参考にできるように内容を広げた結果、「解剖図鑑」という形式になったそうです。
住宅設計には、先人が長年培ってきた定石があり、そこにはきちんとした理由があります。
この本では、なぜそうなっているのか、初心者でもわかりやすいよう丁寧に解説してあるのです。
読み物として楽しめる
この本、『図鑑』というだけあって、イラストが多用されていてとてもわかりやすいのが魅力です。
形状や寸法などについても、図面ではなくイラストを使って解説してあるため、建築の知識がなくても重要なポイントを理解しやすくなっています。
また、ひとつのテーマにつき大体4ページとテンポよく解説が続き、読みたいテーマだけ読むといったことも可能。
テーマの導入部では、家づくりをお弁当づくりに、庇を帽子に、と身近なものに例えて解説してあるので、建築本を読んでいるというより、ちょっとした雑学本を読んでいるような読みやすさがあります。
あらゆる住まいに対応している
先ほど「これから自宅を建てようとする一般の人」に向けて書かれている、と紹介しましたが、あらゆる住まいに共通する情報が載っています。
ドアやリビング、キッチン、ベッドルーム、収納、水回りなどは、どんな家にもあるものなので、マンションをリノベーションするときや賃貸住宅を選ぶときの参考にもなります。
敷地の使い方などは、建売住宅を購入する際にも知っておくとよいでしょう。
住まいを持つ人すべてにとって、参考になる情報がたくさんあります。
キッチンひとつとってもたくさんのプラン案がある
個人的にとても参考になったのが、キッチンの項目です。
冷蔵庫、コンロ、シンク、まな板などを置く作業台の4つのキッチン機器をどのように配置すればよいか。
答えは、①冷蔵庫から食材を取り出す、②シンクで洗う、③切る、刻む、④鍋にブチ込む、という料理の手順がスムーズに進められるよう配列する。
それだけで終わらないのがこの本のよいところ。図のように、配置についてもさまざまなプラン案が紹介されています。
我が家でも、このプラン案をもとに冷蔵庫の位置を変えてみたところ、①→②の作業がスムーズに行えるようになりました!
住まいは、ちょっとした工夫でとても住みやすくできるのですね。
図面をしっかり見たくなる
図面を見ても、実物の建物がどのようになるかは、なかなか想像できません。
しかし、『住まいの解剖図鑑』をひと通り読むと、図面に込められた設計者の意図が少しわかるようになります。
一か所でもわかる部分があれば、図面に対する苦手意識が薄らぎます。
わからない部分は知りたくなり、どんどん理解できるようになるでしょう。
「この本を読めば設計のすべてがわかる!」というわけではありませんが、理解へのきっかけになることは間違いありません。
気軽な気持ちで手に取ってもらいたい一冊です。