今まで大家業をしてきたなかで一番辛かった仕事は、「漏水トラブル」。
水漏れ自体は「築古マンションあるある」な話ですが、いざ自分が大家として経験してみるとすごく大変な実務だったのです。
数回にわたり、「水漏れトラブル」について紹介しています。
前回は水漏れが特定できた箇所の「工事の日程調整こそ最大の難関」という話。
今回は最終回。補修工事の模様とかかった費用についてお話しします。
やきもき待つこともまた大家の仕事である
漏水元の部屋にお住まいの入居者さんとの交渉を経てなんとか補修工事の日程は決まったものの、工事日まではまだ1週間以上あります。

Tomoka / PIXTA(ピクスタ)
最悪なのは、このあいだに再び水漏れが起こるという事態。
しかし、入居者さんの都合を考えると工事の前倒しは不可能です。
漏水の被害に遭った入居者さんには、正直にこちらの事情をお話し、待ってくれるようお願いしました。
こちらのご夫婦はとにかく絵に描いたような人の良い2人で、何の文句も言わずに納得してくださいました。
とはいえ、工事までの1週間にもう一度水が出たら、もはや厚意に甘えるわけにはいかないでしょう。
家賃を返すなりホテルに泊まっていただくなりするつもりでした。
この1週間はとにかく水が出ないことを祈って、ただ待つばかり。
寝ても覚めてもそんな心配ばかりでやきもきし胃が痛くなりましたが、不幸中の幸いというか、工事当日まで漏水は再発しませんでした。
よかった…。
濡れたお風呂の補修工事は大変
工事当日、現場にやってきてくれた防水屋さんは好々爺といった風情の年配の職人さん。

Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)
こんな年末にすいませんと頭を下げる僕に「大家さんも大変だよね」と肩を叩いてくれました。
人の温かさが身に染みる瞬間です。
あとはプロに任せればいいんだ、なんとか乗り切った…
そう思ったのですが、現場に入った瞬間、業者さんが困った表情。
「う~ん、まだすごく濡れてるねえ」
前日、お風呂を使わないでくださいとお願いしてOKをもらったにもかかわらず、お風呂場は使ったばかりのようにビショビショでした。(これって、ひょっとして工事できないのでは…)
そう思って青ざめる僕でしたが、業者さんは「ま、なんとかしますわ」と言ってくれました。(あ、ありがとうございます!)
このとき、業者さんに後光が差して見えたのは、僕の目の錯覚じゃなかったと思います。
具体的にはドライヤーを駆使して工事箇所を徹底的に乾かしてから、工事するとのことでした。
お風呂のドアの木枠は腐ってボロボロ
いざ工事となり、漏水元であるドア枠の下側に設置された水よけを外します。
写真の上に写っているのが問題の水よけですが、ちょっと力を入れただけでボコッと外れました。
かなり傷んでいたのがわかります。
ご覧のとおり、下地の木は腐ってボロボロ。
「こりゃ、水も漏れるわ」と納得の瞬間でした。
業者さんの見立てでは、ドア枠は全体的に劣化がひどく、他の箇所から漏れてもおかしくない状況だそう。
結局、ドア枠まわりをぐるりと補修してもらうことになりました。
あとは、工事が終わるのを待つだけ。
夕方に工事が完了し現場に行ってみると、漏水箇所はバッチリ防水されていました。
漏水の原因だったドア下はもちろん、
ドアまわりをぐるりと防水が。
これでも応急処置でしかないそうですが、しばらくは心配なさそうです。
工事が無事に完了したことを下の階の入居者さんに伝えるとホッとした様子でした。
僕自身も無事に年が越せると思うと肩の荷が下りた気持ちでした。
漏水トラブルでかかったお金の総額は「約18万円」
漏水の心配も晴れてなくなったので、年明けには被害に遭った部屋の塗装工事を行いました。
漏れた水が天井や壁をつたって流れてしまったため、うっすらと跡が残ってしまっていたところを塗装屋さんに塗り直してもらいました。
漏水で故障したダウンライトも交換。年をまたいだ漏水トラブルもようやくこれで解決。
最後に、今回かかったお金です。
まず、漏水元の部屋のお風呂の防水工事が68,000円。
一方、漏水被害のあった部屋の塗装工事(ダウンライトの修理含む)は77,760円。
そして、工事調整のために漏水元の部屋の入居者さんに渡したお金が5,000円。
さらに、被害に遭ったお部屋のご夫婦にお見舞金として30,000円をお渡ししました。
うちとしては、迷惑料として当然という気持ちでしたが、恐縮してなかなか受け取ろうとしませんでした。
「かえってすみません」とか言われましたけど、全然すまなくないです。
悪いのは100%うちのマンションですから。
こういう人柄の良い入居者さんは大切にしたいものです。
こうしたもろもろをひっくるめて費用総額が180,760円でした。
家賃に換算するとおよそ1.5か月分がふっとんでしまった計算になり、経営的にも打撃でした。
やっぱり築古マンションの経営と管理は楽じゃないなあ、と実感した次第です。