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出発点は「沖縄に別荘がほしい」。中古物件のエキスパートが民泊物件をつくった理由

今回は、沖縄にこだわりの詰まった民泊物件を作った方の体験談をご紹介します。

百聞は一見にしかず。まずは写真をごらんください。

中古物件のエキスパートがなぜ民泊を?

沖縄古民家をリノベーション

photo: 渋谷南人

無国籍風のインテリア

photo: 渋谷南人

すごく素敵なお宿だと思いませんか。

手がけたのは先日お仕事で知り合った室田啓介さん。

室田啓介さん

「東京R不動産」を手がける会社「スピーク」に勤めながら、ご自身も「irregular」という会社の代表としてさまざまな物件の再生を手がけている方です。

そんな中古物件のエキスパートがなぜ民泊を始めたんでしょう?

東京にいながら沖縄の物件を手がけるって大変じゃないの?

インテリアをそろえるコツやノウハウは?

などなど、気になることいろいろをご本人に聞きました。

動機はシンプル「沖縄に別荘がほしい」

まっさきに聞きたかったのは「どうして今、民泊を始めようと思ったのか」です。

2020年の東京オリンピックを見据えて宿不足解消の期待を受けて始まった民泊ですが、さまざまなトラブルが報じられると世間の目はすぐに厳しくなりました。

契機となったのは昨年に施行された「民泊新法」。

これに自治体ごとの独自規制も乗っかり、一部の都市では民泊はかなり難しい状況に追い込まれています。

かつて僕のまわりで「民泊は儲かる」と飛びついた人はみな手を引きました。

こんな逆風のなか、民泊を始めた室田さんの動機はひじょうにシンプル。

「沖縄に別荘がほしかったんです」

赤墓ビーチ

photo: 渋谷南人

聞けば、室田さんの奥様は沖縄出身。

お子さんも連れての里帰りもあって毎年何度か沖縄に行くようになり、その魅力を実感するようになったといいます。

でも、僕と同じく東京生まれ東京育ちの室田さんにとっては慣れ親しんだ東京での仕事を捨てて生活のリズムもまったくちがう沖縄に移住するという選択肢はなかったそうです。

かといって、年に数回泊まるためだけに別荘を買うのも割に合わない話。

ベッドルーム

photo: 渋谷南人

そんななかで思いついたのが民泊を作るという選択肢だったそうです。

「沖縄に家族で訪れるときには自分が宿泊する」

「使わないときは旅行者に貸す」

そうすることでお金も生まれるし、物件も空気が淀まず良好な状態に保たれます。

民泊と言うと儲け話ばかり聞かされてきた僕には、室田さんの言葉は新鮮に響きました。

室田さんにとって、自分が望む別荘の条件を整理したとき、いちばん合理的に実現できる選択肢が民泊だっただけのことなのでしょう。

でも、これを実行に移す行動力ってすごいです。

原動力は「自分で泊まりたいと思える宿泊施設を作りたい」

沖縄に民泊を作ると思い立った室田さん、試しに自分でも民泊物件に泊まってみたそうですが、感想はひとことで言えば「ダサい」という印象だったそうです。

「もともとは、空いている部屋をシェアするというシェアリングエコノミーの文脈ではじまったAirbnb(エアビーアンドビー)ですが、日本では圧倒的に投資目的、ビジネス目的でやっている人が多いんですよ。そういう人が作る物件って家具はぜんぶ量販店でそろえて「泊まれさえすればいい」っていう物件ばかりなんです」

たしかにドキュメンタリーやワイドショーで取り上げられる民泊物件って、みんなベタベタのワンルームみたいなインテリアが多かった気がします。

個人的にぜんぜん泊まりたいとは思えなかったなあ。

「そうでしょう?Airbnb(エアビーアンドビー)で海外の物件を見ていると、すごくおしゃれな物件がたくさんあって“ホテルじゃなくてここに泊まりたい”って思わせるんですよ。だから“自分で泊まりたいと思えるような別荘”を作って、それを宿として公開することで、コストと効率重視で作られた宿とはまったく異なる、居心地のいい宿が作れるのではないか?と考えたんです」

ダイニングキッチン

photo: 渋谷南人

以前から沖縄のホテルに泊まるたびにガマンしていたという室田さん。

どこも似たり寄ったりな内装に飽き飽きしていたそうです。

これが室田さんを動かす原動力だったのですね。

この点は、世田谷で賃貸マンションを営む僕にもすごく共感できます。

世の中の賃貸マンションで自分が住んでみたいと思う物件は本当に少ないですから。

遠隔地で民泊を営むには代行業者との契約が必須

室田さんの物件はカテゴリーでいうと旅館業の許可を取得した「簡易宿所」で常駐するスタッフはいません。

夜の外観

photo: 渋谷南人

お客は一組だけの一棟貸し切りスタイルですから、気兼ねなくゆったりとした時間が過ごせます。

でも、室田さんは東京にお住まいで受付業務や清掃はできないはず。

「民泊新法」施行前は雑な物件管理がまかりとおっていたようですが、現在では法律が厳しくなったと聞きますし、そのへんをどうクリアしているのか気になります。

室田さんによれば、宿泊者からパスポートの控えを取る必要があったり、キーボックス番号は宿泊者ごとに変える必要がある(※那覇市以外の沖縄県の場合)など、やはり管理は大変だそうです。

そのため、メールや電話での応対とパスポート写真の事前の収集といった宿泊に関する手続きは「メール代行業者」に委託し、鍵については玄関ドアにRemoteLOCK(リモートロック)という鍵を設置することで、ゲストごとに異なる暗証番号が自動的に割り振られる仕組みを使っているそうです。
なるほど、そういうサービスがあるんですね。

マットレスを敷いたところ

一方、使用後の室内の清掃などは「清掃代行業者」に委託しているそうです。

「代行業者さんに言われたのが“お客さんはそんなに丁寧に物件を扱ってくれないですよ”ということでしたね。宿泊客がシーツをビショビショにするとかラグを食べ物で汚すとか、よくあるそうです」

ああ、それじゃ清掃はプロに任せないと難しいかもしれないですね。

万一の事態(たとえば、台風で窓ガラスが割れた!など)のときも「代行業者」がトラブル対応するようになっているそうです。

遠隔地で民泊を運営するには、こうした代行業者との連携が必要なんですね。

気になる費用ですが、Airbnb(エアビーアンドビー)では宿泊客が宿泊費とは別に清掃代金を支払うシステムになっているそうですから、基本的にはそれでまかなう感じだそうです。

民泊をやるにあたって地元の人たちの反応は?

民泊のハードルといえば、個人的に大変だと思うのはご近所の目。

日本という国はどこでも、ご近所を気にしないと暮らしづらい印象があります。

沖縄でも隣の家が民泊になって急に観光客(とくに外国の人)が出入りしだしたら、警戒されるんじゃないでしょうか?

「たしかに民泊では本当にトラブルが多いと言われます。夜中に洗濯機の使い方がわからない旅行客が隣に住んでる一般人の部屋をピンポンしたなんて話も聞きますし」

うわ、自分のマンションで起こったらと思うとゾッとする。

物件とその周辺

photo: 渋谷南人

「僕の物件がある沖縄の今帰仁村(「なきじんそん」と読むそうです)は、那覇から高速で1時間半ほど行って、そこからさらに30分ほどかかったところにあります。周辺に住む方々はご年配の方がとても多く、本当に静かなんです」

そんな静かなところだとお客さんが騒いだりしたらトラブルになりませんかね?

「僕もそう思って、ご近所のおじいちゃんおばあちゃんに、民泊ができたら嫌じゃないですか?って話を聞いてみたんですよ。そうしたら、このへんは活気がなくて寂しいから、いろんな人に来てもらってどんどん騒いでほしいって言われたんです。むしろ窓全開で騒いでもらっていいって(笑)」

なるほど、都市部では騒音扱いされがちな人の笑い声や騒ぎ声も、高齢化が進む村では歓迎されることもあるんですね。

自治体ごとに異なるルールが存在することからもわかるように、そのエリアのルールと風土を理解することが民泊運営のカギになると感じました。

インテリア

photo: 渋谷南人

次回は、アイデアが詰まったインテリアを作り上げるまでの苦労と工夫についてうかがいます。

 

【紹介した物件はこちら】

irregular INN Nakijin

photo: 渋谷南人

irregular INN Nakijin(イレギュラー・イン・今帰仁)

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