不動産

WriternistaWriternista

相続のルールが変わる!配偶者居住権をわかりやすく解説

2020年4月より、1980年以来40年ぶりに遺産相続にかかわる民法が大幅に改正され、新しく「配偶者居住権」という権利が認められるようになります。
改正の大きな目的は「残された配偶者の住まいや生活の安定化」「介護などに貢献した配偶者や親族への配慮」などです。

ここでは、「配偶者居住権」について詳しく解説します。

遺産相続を機に家族が争うことがないよう、正しい改正内容を知っておきましょう。

1. 配偶者居住権の新設

待合室

OrangeMoon / PIXTA(ピクスタ)

 

残された配偶者の住まいや生活の安定化のために新設された権利が「配偶者居住権」です。

 

1-1 法改正の背景

内閣府が発表した「令和元年版高齢社会白書(概要版)」によると、平成30年度の高齢化率は28.1% となっています。

日本の総人口は、平成30(2018)年10月1日現在、1億2,644万人、65歳以上の人口は、3,558万人です。

総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は28.1%となっていて、令和47(2065)年には、約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上となると考えられ、2065年には3高齢者が38.4%になると考えられています。

今回の改正は、長寿化とともに残された配偶者の生活が困窮することがないよう、配偶者の住まいや財産を守ることがおもな狙いです。

ほかにも、婚姻期間20年以上の夫婦や、介護に貢献したにもかかわらず相続権がない親族への配慮など、現代の家族構造を配慮した改正が行われています。

1-2 配偶者居住権と適用の条件は?

シニア 女性

しげぱぱ / PIXTA(ピクスタ)

配偶者居住権は新しく設けられた法律で、2020年4月1日から施行となります。

所有権がなくても配偶者が今後も賃料を払うことなく、自宅に住み続けられる権利、つまり、所有権がなくても、配偶者は家賃を払わずに住み続けることができるのが特徴です。

配偶者居住権は登記が可能で、第三者に対抗することができます。

また、配偶者を短期的に保護する「配偶者短期居住権」も新設されます。

ほかの相続人が相続することが確定した日、または相続開始から6か月を経過する日のいずれか遅い日までは、配偶者が無償で居住できる権利です。

この権利を使うためには、後述する要件を満たす必要があります。

1-3 配偶者居住権が新設された理由は?

3,000万円の自宅と3,000万円の預貯金を配偶者と子ども2人が相続するケースを考えてみましょう。

現行の民法では、配偶者の法定相続分は、不動産や金融資産を含めた、すべての遺産の2分の1となります。

遺産の中には自宅も含まれるため、自宅を配偶者が相続すると、残った3,000万円の預貯金は子ども2人で1,500万円ずつ分けることになり、預貯金の取り分ゼロとなります。

現金がないとその後の生活が心配になります。

預貯金がなく、財産が自宅のみとなれば、自宅を子どもと分けることは難しく、売却する可能性が高くなります。

これでは、ますます生活が心配になるでしょう。

このような事態を避けるために、配偶者居住権は新設されたのです。つまり、自宅の所有権が子どもであっても、配偶者が望めば居住することが可能になります。

1-4 配偶者居住権はどんなときに成立するのか

配偶者居住権が成立するためには以下の条件を満たす必要があります。

  • 配偶者が遺産である建物に相続時に住んでいたこと
  • 以下のいずれかのケースを満たすこと

ア)遺産分割協議書に「配偶者居住権」が明記されている場合
イ)遺言書に「配偶者居住権」が明記されている場合
ウ)家庭裁判所の審判に「配偶者居住権」が明記されている場合

2.配偶者居住権のデメリット

介護施設

PHOTO NAOKI / PIXTA(ピクスタ)

 

配偶者居住権によって、自分が自宅を相続しなくても住み続けることができるようになりますが、そのために生じるデメリットを予想してみましょう。

2-1 自由に増改築ができない

配偶者居住権は終身で配偶者が自宅に住み続けることはできますが、建物所有者が子どもなど別の人の場合、承諾を得なければ増改築する、賃貸に出すなどの行為は不可能です。

また、通常の必要経費は配偶者が負担しなくてはなりません。

2-2 老人ホームの入所費用が確保できない

配偶者が老人ホームに入居しようと考えている場合、もし自宅の所有権が配偶者にあれば、自宅を売却してホームの入居金などの費用に充てることができます。

しかし、配偶者居住権により自宅に住んでいる場合、所有権は配偶者以外になりますので、売買は不可能ですので入居費はほかの資産から捻出する必要があります。

2-3 子どもの立場から考えたデメリットもある

配偶者居住権を使って配偶者が自宅に住む場合、自宅の所有者は子どもになることが多いと思います。

万が一、子どもが自宅の売却を考えた時、配偶者居住権を解除して、親を退去させることは難しくなります。

もし、家を売りに出したとしても、家賃を得られず、入居中の物件を購入しようとする人がいるでしょうか。

配偶者居住権は解除できないために、権利が付いたまま売却をすることになります。現実を考えると、売却はできないと考えた方が良いでしょう。

3.相続を正しく理解して自分で判断できるように

車いす

Mills / PIXTA(ピクスタ)

 

遺産相続に関する民法が40年もの間改正されず、今改正されようとしていることの意味は大きいです。

家族構成の変化、長寿化、IT化など、世の中に大きな変化が起こっているということです。

暮らしをよりよくするための改正ですが、最初は実情にそぐわない部分も出てくることが予想されます。

相続は誰にでもやってくることです。

他人事と思わずに、セミナーに参加する、専門家に相談するなどし、どのような手段を選んだらよいか、自分たちで判断できるようにしておくことが大切です。

 

宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー(AFP)/家族信託コーディネーター 吉井希宥美

 

<参考>
内閣府「令和元年版高齢社会白書(概要版)」

  • B!