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デザイナー・サイトヲヒデユキさんの本棚を拝見!「本の手触りから伝わる感動はなくならない」

クロゼットや机の引き出しと同様、なんだか覗いてみたくなる他人の本棚。各界の大の本好きに、普段は見せない“奥の院”を見せていただきます。(取材・文/大平一枝  撮影/本城直季

「紙の本がなくなるという不安感はないです」

サイトヲヒデユキさんの本棚

小学4年生のとき、何冊もの週刊漫画雑誌のホチキスを外し、バラバラにして、針金の穴を使い、好きな作家の作品ごとに和綴じにし直した。つまりこれが製本。表紙には厚紙を使い、漫画のキリヌキをコラージュ。こちらは装丁。

グラフィックデザイナーのサイトヲヒデユキさんは、誰に教わるでもなく、すでに子どもの頃から、独学で製本と装丁をこなしていたのだ。

サイトヲヒデユキさんの本棚

仕事場の一角には現役の活版机が。活字も多数所有しており、自分で組んで活版印刷で作品をつくることもある

遊びに来た友だちが、作家ごとに1冊に綴じられた漫画を見て「わっ、すげー!」と歓声を上げた。その日から今日まで、たぶん彼は好きなことしかしていない。

サイトヲヒデユキさんの本棚

デザインをした本のストック。梱包の紙に押された欧文書体は、海外のスタンプ

サイトヲヒデユキさんの本棚

サイトヲヒデユキさんの本棚

言葉とデザインへの飽くなき偏愛

サイトヲヒデユキさんの本棚

「『建築文化』(彰国社)は特色3 色刷の表紙がかっこいい。建築雑誌に限らず1960 年代のグラフィックは好きですね」

本の装丁、カタログ、フライヤー、CDジャケットのデザイン。本を売り、本にまつわる展示をするギャラリー、書肆サイコロの店主。築30年のビルのあちこちに本が溢れている。

サイトヲヒデユキさんの本棚

4歳上の兄の影響で小学生の頃、つげ義春の漫画と出会って以来のファン。正月などにひたすら読み返すそう

サイトヲヒデユキさんの本棚

「戦後の日本の抽象表現が正しいものだったのか、最近読み返しています」

サイトヲヒデユキさんの本棚

詩人、藤富保男の北園克衛解説本。「北園克衛の詩と装丁が好きで。配置をひと目みるとわかる独自の世界観があります」

詩集、小説、評論、建築やデザイン関係の本、画集、60年代の雑誌いろいろ。この大量の本をちゃんと読んでいるんだろうか? 答えはYESだ。

「この本のどこが好きですか」と聞くと、「え〜っと、そうここ。博学と無学っていう詩が好きなんですよ」と山之口漠の詩集のたった1ページを開いてみせる。

サイトヲヒデユキさんの本棚

山之口漠は好きな詩人のひとり。「路上生活をしながらもプライドはは捨てず詩を書きつづけていた姿勢に惹かれます」

「藤富保男さんの詩も深い所をついてくる。心を見透かしているような怖ろしい詩を書くんです」

本への偏愛ぶりが、静かな口調からじんじん伝わる。彼が稀有なのは、書かれた内容と同じ熱さで本の佇まいをも愛しているという点である。

サイトヲヒデユキさんの本棚

北園克衛と同時代のシュルレアリスト、瀧口修造の著。独特の表現力で展示の批評をしており、芸術の見方の教科書的な本

サイトヲヒデユキさんの本棚

デザイナー羽原肅郎の自装の著。蛇腹製本や、グリッドの使い方、本としてのたたずまいが魅力的

本の手触りから伝わる感動はなくならない

サイトヲヒデユキさんの本棚

サイトヲヒデユキさんの本棚

いっぽう活版のデザインや展示にも積極的に取り組む。

「手作りや、函装、布の上製本など、出会ったときの手触りから伝わる感動は、どれほどデジタル化が進んでもなくならない。むしろいま確実に求められていると思います」

言いきる強さが清々しく胸に響いた。

サイトヲヒデユキさんの本棚

 

サイトヲさんへのQ&A

Q ギャラリー兼仕事場兼自宅の3階建て。蔵書はどれくらい?
A 詩集や随筆、美術関係の本や漫画がおそらく5000冊あります。

Q このビルはどうやって?
A 事務所にギャラリーを併設したかったので、広めの物件を中央線沿線限定で探しました当時築20年、1階でお米屋さんを営む二世帯住宅でした。リノベはnuリノベーションさんにお願いしました。

Q 手製本もされていますが、本の世界のデジタル化についてはどう思いますか。
A デジタルの本はただのテクスト。データとしてしか残らないもの。一方で、手触りのある本のようにイマジネーションを掻き立てるものは何百年も残るのでは。

サイトヲヒデユキさんの本棚

サイトヲヒデユキさん
デザイナー、書肆サイコロ店主。
1970年、千葉県生まれ。デザイン事務所を経て2001年独立。
装丁、グラフィックデザイン、CI、企画、制作まで仕事は多岐にわたる。
’90 年代から古書サイトを運営し、2010 年、東京・高円寺に事務所併設の「書肆サイコロ」を開店。
デザイン・写真・アート・言葉や印刷物に関わるさまざまな展覧会を開催。

※情報は「リライフプラスvol.24」取材時のものです

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