「リノベ済み物件」と「自分でリノベ」 どっちがいいの?人気ブロガーちきりんさんに聞く
社会派人気ブロガーのちきりんさんは、2019年春、自宅をフルリノベした経験からリノベ本を出版。そんなちきりんさんが、秋のリノベシーズンに合わせてトークイベントを行いました。
会場となったのは、西新宿の新宿パークタワー3~7階にある「リビングデザインセンター OZONE」。5フロアにわたる広大な空間には、新築やリノベーションなどの家づくりに欠かせない設備やアイテムが豊富に揃い、様々な情報収集と体験が1か所で叶います。
今回のテーマは「リノベ済物件か、自分でリノベか」。自分らしい家に住みたいと願うならば、リノベーションを検討するのが必然ともいえますが、リノベ済物件を購入するのか、はたまた自分でリノベーションをするのか。
ここでもまた私たちは大きく悩みます。そんな悩める子羊のような私たちに贈る、ちきりんさん流のアドバイスとは……?
「リノベ済物件?自分でリノベ?」の答えの出し方
「リノベ済み物件」と「自分でリノベ」、どちらがいいのか。その答えは単純で、「既製品が気に入るかどうか」だけです。
「リノベ済物件」は新築物件と同様、既製品。その物件が、自分の好みや暮らしに合致する間取り、内装、設備であれば、「リノベ済み物件」で何も問題はないのです。
「リノベ済み物件」のいい点は、購入したらすぐに入居できること。また、既製品なので、特注品である「自分でリノベ」より経済的負担も軽いでしょう。
さらに、「自分でリノベ」の場合は、中古マンションを購入後、数か月かけてリノベ工事を行うので、今住んでいる家の家賃とマンションの住宅ローンがダブルでのしかかる期間が発生しますが、「リノベ済み物件」ならその心配もありません。

イグのマスタ / PIXTA(ピクスタ) ※写真はイメージです
ただ、そんな効率的で経済的な「リノベ済み物件」の購入を決定するには、ふたつの条件が合致する必要があります。ひとつめは、物件価格や立地、管理状態、専有面積などの物件に関する条件。ふたつめは、室内の間取りやインテリア、設備などの内装に関する条件。
ふたつがセットになっている「リノベ済み物件」は、その両方とも希望に合致していないと「買おう!」という判断ができないので、いつまでたっても住まい探しは終わらないかもしれません。
迷ったら「リノベ済み物件」を見に行こう
そこで、ちきりんさんは言います。「私はリノベ済み物件を買おう」とか「スケルトンにして自分でリノベしよう」とか最初にハッキリ決めなくても、「まずはリノベ済み物件を見に行けばいい!」と。
ですが、前述のとおり物件に関する条件と内装に関する条件のどちらも満たす物件と出会うのは、なかなか難しいかもしれません。もし何件見ても希望の「リノベ済み物件」に出会えないという人がいたら、それはきっと内装や設備についての条件が厳しいのでしょう。

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そんな人は「自分でリノベ」に切り替えるのがベターです。「自分でリノベ」なら、内装や間取りは自分好みにできるので、物件条件だけ合致すれば購入に踏み切れます。
また、リノベ済み物件を購入して、一部改修するという方法もあります。大きな間取り変更や設備の入れ替えは大がかりになりますが、コンセントの位置や壁紙の変更、広い個室の分割など、「ここだけ変えれば住める」物件なら、コスト的にも手間的にも選択肢に入れる価値はありそうです。
過去に住んだ「おうち変遷」から「自分らしさ」を発見

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「自分でリノベ」は楽しいけれど難しい。その難しさは、「こんな暮らしをしたい」というやや抽象的な要望や、「ここをこうしたい」という具体的な希望を、リノベ会社にしっかり伝えなければいけないところにあります。なので、まだふたり暮らしが始まったばかりの結婚後すぐのタイミングなんかは難しい。
自分たちが住みたい家や理想の暮らしが具体的に言語化できていなければ、もちろん、それらを作り上げることはできないのです。
そこで、ちきりんさんがおすすめするのは、「おうち変遷」を振り返ること。今まで住んだ家のここがよかった、ここは不便だった、などを言語化すると、自分がどういう暮らしを望んでいるのかをイメージしやすくなります。

genki / PIXTA(ピクスタ)
もし、住んだことのある家が少ない場合は、色々なホテルに泊まったり、友達の家にお邪魔したりして、経験値を意識的に増やしていきましょう。
ちきりんさんも、「おうち変遷」を振り返って、「階段の上り下りや自主的メンテナンスが必要な戸建ては絶対にいらない」「トイレと洗面は扉なしの同じ空間がいい」「暗い部屋が好き」などの自分にとっての大事なポイントを蓄積していったのだそう。
「自分らしい家を賃貸派」の人がマーケットを変える

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ところで、「自分らしい家に住みたいけど、買いたくない(保有したくない)」という人も現代には一定数いるでしょう、とちきりんさん。35年ローンを組んで家は買いたくないし、身軽でいたい。
でもその一方で、自分のライフスタイルに合った間取りや好みの内装にしたい。「所有しない」という価値観を持つ若い世代を中心に多そうなニーズです。
最近では、DIYや間取り変更が可能な賃貸が徐々に増えてきていて、賃貸でもリノベ物件のようなオリジナリティの高い住まいを手に入れることが可能です。
DIY可能な賃貸物件は大家さんにとっても得なこと。自分好みにDIYできれば、きっとその人は長く住み続けてくれるでしょうし、そうなると、退去するごとにかかる補修費用はしばらくかからず、空室リスクも減ります。
ですが、まだまだ十分に普及していないのが現状です。それは契約が面倒だから。
DIYやリノベーションをした箇所が故障したら誰が修理負担するのか、手をかけてDIYしたのにアパート取り壊しで退去を余儀なくされる、など、様々な問題が考えられるため、契約が煩雑で大家さんに敬遠されがちなのです。

HIME&HINA / PIXTA(ピクスタ)
そこで私たちができることがひとつ。不動産会社で「リフォームやDIY可能な賃貸物件はありませんか」と聞くのです、ダメ元で。
そういう人が月に数人でも来れば、不動産会社も大家さんも「今はそういうニーズがあるのか!」と気付き、DIYはダメだとかたくなに拒否した姿勢を考え直すかもしれません。繰り返しますが、ダメ元です。
「でも、その小さな声を積み重ねることこそが、消費者である私たちがマーケットを変えるためにするべき行動なのです」とちきりんさんは教えてくれました。
ちきりんさんの話を聞くと、このテーマのようなストレートな選択肢だけでなく、「買いたいマンションにまずは賃貸で住んでみる」や「リノベ済物件を買って、自分で改修する」など、変化球的な選択肢もあることに気付くことができます。
家は大きな買い物です。
色々なことが分からず、あやふやなまま勢いで「えいや!」と買うよりは、自分の理想の暮らしをもう一度よく考えたり、家族のライフステージをイメージしたりしながら、そんな少しずらした選択肢も柔軟に検討すると、自分らしい住まいを手に入れるチャンスが増えるかもしれませんね。
みなさまが素敵な住まいに出会えますように!
最後はちきりんさんの決まり文句をお借りして。
そんじゃーね!

退職後、2011年からは文筆家として活躍。『自分のアタマで考えよう』『マーケット感覚を身につけよう』(ダイヤモンド社)ほか著書多数。
人気ブログ「Chikirinの日記」を運営する。