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憲法学者・木村草太さんの本棚を拝見!「小学生の頃から図書館が好きだった」

クローゼットや机の引き出しと同様、なんだか覗いてみたくなる他人の本棚。各界の大の本好きに、普段は見せない「奥の院」を見せていただきます。(取材・文/大平一枝  撮影/本城直季

研究に必要な空間の条件とは

扉を開けると、正面の大きな窓いっぱいに空と緑が広がり、東京であることを忘れそうになった。

研究室の正面窓から見下ろした風景

まるで、森だ。

窓辺には、無垢材の天板の大きな机があり、足元にラグが敷かれ、靴を脱いで上がる。「靴を履いていると集中できないのです」。

部屋の主、憲法学者の木村草太さんは言う。傍らには、木製のワゴンがあり、その上には茶を点てる道具が。気分を切り替えるために、さっと点てて楽しむという。

気持ちの切り替えに、さっと点てる抹茶。朝、出勤後に飲むと、目が覚めてすっきりするという

研究室には、北海道・旭川の家具メーカー、カンディハウスのお気に入りの小テーブルと椅子も持ち込んだ。もともとあったグレーの事務用のスチール製テーブルとキャビネットは、部屋の隅に追いやられている。

「味も素っ気もないスチールのテーブルでは事務仕事を、無垢材の机では研究を、と分けて使っています。研究は、本を読んで、考えて、書く、の繰り返し。自分にとっては、抜け感のあるこの森のような風景や、温かみのある木の味わいが不可欠なのです」

ひとつの空間を、家具やしつらいで巧みに使い分ける。「自分自身」をよく知っている人である。

東急ハンズで購入したケヤキ無垢材の一枚板を、同店で別売りしていた脚に載せただけ、という仕事机

趣味の将棋のコーナー。下段は、日本将棋連盟発行の機関紙『将棋世界』。創刊は1937年の歴史ある月刊誌だ

図書館通いと建築への興味

辺境地での探検をテーマにした著作が多い高野秀行さんの作品は、新作が出ると買う。「社会科学的な探究心に惹かれます」

中学生の頃読んだ『指輪物語』は、文庫本、トールキン生誕100周年に合わせて発売された新板、どちらも所有している

図書館司書の母の影響も多少はあるのかもしれないが、小学生の頃から図書館が好きだったと振り返る。毎日のように通ったのは横浜市中央図書館と神奈川県立図書館だ。

「どちらかに行けば目当ての本が必ずありました。前川國男設計の県立図書館の建築がまたいいんです。建物自体も好きだった」

奥平康弘さんは優れた憲法理論を残した憲法学者。「原則に立ち返りたいときに紐解く」というバイブルはすぐ手の届く棚に

木村さんは将棋が趣味。本書は、棋士の森内名人による将棋の体系書である。「研究書の模範」として精読

山形県米沢市をモチーフにし壮大な空想世界を描いた漫画。子どもの頃からの愛読書。「宮沢賢治にも通じる世界観が魅力」

部屋の片面の壁はすべて、憲法の専門書。つまり仕事関連の棚。取材中も専門書店の御用聞きが本の注文を取りに来ていた

ダグラス・アダムスのSF。「普通は銀河のスケールを生かして書くものですが、それを無駄遣いしているところに惹かれます」

建築史や建築関連の本が並ぶ。磯崎新、安藤忠雄らの名も。下段は社会学。全体に興味のある趣味中心の棚

研究室の書棚のひとつは、建築史や建築文化についての本で埋まっていた。群馬県の邑楽町(おうらまち)建築家集団訴訟を手伝ったのが縁で、今は近代建築にも興味があるという。その過程で気づいたことがある。

「プラスチックも鉄もずっときれいということはありません。ただの汚れになる。でも木は、傷も味わいになり、歳月と共に美しくなっていく。そこに惹かれますね」

気鋭の学者の思索の空間。居心地のよさの秘密を見た気がした。

初めての著書の装画を依頼した山本陽光さんの原画

木村さんへのQ&A

築年の古い団地を購入し、建築家に依頼してリノベーションした自宅のことも話してくれた

Q 左右の壁一面にあるこの本棚は?
A もとから造り付けられていました。たまたま木製だったのですが、無機質なスチールなどより、木の質感がもたらす味わいが好きなので、気に入っています。

Q 本はどんなところで買いますか?
A 仕事関係の本は専門書店に頼んでいます。最近、なかなか立ち寄れませんが、新宿の紀伊國屋書店にはよく行っていました。学会などの旅先では、会場近くの古本屋をのぞきます。

Q  建築の本も多いようですが
A もともと好きなジャンルですが、群馬県邑楽町(おうらまち)建築家集団訴訟のお手伝いで建築家の方と交流が増えたことがきっかけで、建築の文化としての側面に興味を持ちました。

木村草太さん
1980 年、神奈川県生まれ。首都大学東京教授(憲法学専攻)。東京大学法学部卒業。『報道ステーション』(テレビ朝日)コメンテーターをはじめテレビ・ラジオでも活躍。著書に『平等なき平等条項論』『憲法の急所』『キヨミズ准教授の法学入門』『集団的自衛権はなぜ違憲なのか』他多数。趣味は将棋、音楽鑑賞。2児の父でもある。

※情報は「リライフプラスvol.26」取材時のものです

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