不動産

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所有者不明土地を相続したけど、売却や賃貸はできる?

一つの土地の所有者が複数の場合、今までは、すべての持ち主の同意が得られないと、売却・賃貸ができませんでした。
事実、一部の持ち主が分からない土地は国内にたくさんあり、そのような土地は売却・賃貸ができないという問題が生まれていたのです。

そこで、国土交通省と法務省は、一部持ち主が分からない土地について、売却や賃貸ができる仕組みを整えてきました。今後さらに、所有者不明土地が私たちにとって身近になりそうです。

宅地建物取引士の吉井希宥美さんに解説してもらいましょう。

1. どうして持ち主が分からないと売却・賃貸できないの?

家系図

CORA / PIXTA(ピクスタ)

土地の売却や賃貸に関しては、民法でルールが定められています。

民法では持ち主が分からない場合でも同意を得なくてはならないケースがあり、実質、売却・賃貸ができなくなります。売却や賃貸ができないとその土地にかかわる人たちだけでなく、街づくりにも影響が出かねません

1-1  売却・賃貸の同意の割合は民法によって定められている

不動産が複数の人により「共有」されている場合、生きているかどうかも分からなかったり、誰だか分からない人が共有していたりすると、賃貸や売買ができないことがあります。

不動産を相続した場合に、名義変更を長年行っていなかった場合などはこのケースの代表例です。世代が変わり、誰が相続したか分からなくなってしまうことが多いのです。

このケースが売却・賃貸できないのは、民法に次のことが定められていることが、その理由です。
・売却
「処分」にあたり、共有者全員の同意が必要
・賃貸
「管理(有物の使用・利用・改良行為)」にあたり、共有者の過半数の同意が必要

もし、共有者が3人で、不明の所有者1人だったら賃貸はできても売却はできないのです。自分の持ち分だけ売却することは理論的に可能ですが、境界がはっきりしにくいなど、実際に売却は難しいでしょう。

公園

よっちゃん必撮仕事人 / PIXTA(ピクスタ)

1-2 土地を収益・処分できないと街づくりにも影響がある

国土交通省から発表されている「所有者不明土地の実態把握の状況について(平成28年度)」によると、10万筆をサンプルとし、国土交通省と法務省がそれぞれ調査した結果を活用し、推計すると、所有者不明率は3割にも及ぶようです。

また、「所有者不明土地問題研究会」による「地籍調査を活用した推計」では、所有者不明の総土地面積は、 約410万ha。九州の土地面積・約368万haよりも多くの土地が所有者不明になっていることになります。
このことは相続できないだけでなく、街づくりでも問題となります。

公園や大規模施設をつくろうとしたときに持ち主が分からないと、行政が計画地を思うように取得できず、計画倒れになってしまう可能性があります。
これでは住民にとって、良いと思われる施設を作ることができず、住みよい街づくりができません。

2.今後の不動産探しに影響は?

空地

haku / PIXTA(ピクスタ)

国交省と法務省は所有者が見つからない土地の活用を進めるため、住所や連絡先が分かる一部の所有者によって、土地の売却や賃貸ができる仕組みをつくろうとしています。2020年の通常国会に関連法改正案が提出される予定です。

2-1 金銭の供託で売却時の問題を解決

売却の場合、まずは共有者が不明所有者の持ち分について金銭を法務局に供託することで、ほかの共有者が土地を取得する仕組みをつくります。
土地の賃貸や盛り土などの「管理行為」については、不明となっている人以外の残りの所有者の承諾で、実行を可能にします。

ただし手続きを行う際は、登記簿や固定資産課税台帳などの調査、行政機関や親族らへの聞き取りなどを行い、不明者が突き止められなかったことが前提となります。
また、ほかの所有者が異議を申し立てることができるように、政府や公共団体が一般に知らしめる「公告」をすることも行わなくてはなりません。

2-2 好立地の不動産が手に入り、環境改善にもなる

売りたくても売れなかった土地が今後販売される可能性が出てくることは、土地探しをしている人にとっては朗報です。土地選びの際、選択肢が増えることは自分の希望通りの物件に巡り合う可能性が高くなります。

所有者不明の土地は地方の山林が多いのですが、宅地も少なくありません。宅地の売却・賃貸ができないと、空き家や荒れ地が住宅地に点在することになり、周囲に悪影響を及ぼしてしまいます。
売却できなかった土地が公園や施設、住宅になることで、環境がよくなれば、街としての価値や不動産価値もアップするでしょう。

3.まとめ

空き家

ゆふこ / PIXTA(ピクスタ)

不動産登記簿の所有者が不明なケースをなくそうと、2019年5月17日に「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律」が成立し、同24日に公布されました。
登記官には2019年11月1日から所有者の探索のため調査権限が与えられ、不明者の登記について特例が施行されました。また、2019年11月1日から所有者不明の土地は裁判所の選任した管理者が管理できるようになりました。

今回の仕組みづくりにより、さらに所有者不明土地の売買が身近になってくるでしょう。

ファイナンシャルプランナー(AFP)/宅地建物取引士一般社団法人/家族信託普及協会®会員 吉井希宥美

【参考】
※ 日経新聞 「土地、一部所有者で売却可能に 所有者不明地で対策
※ 国土交通省 「所有者不明土地の実態把握の状況について(平成28年度)
※ 法務局 「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律について

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