不動産

高幡和也高幡和也

ハザードマップで自衛!浸水リスク、不動産業者に説明義務なかった

不動産の取引を行う場合、宅地建物取引業者にはその物件の状況や取引条件、法令上の制限などを詳しく説明する「重要事項説明」が義務付けられています。
ただ、自然災害のリスクについてはその種類によって説明が「義務付けられているもの」と「義務付けられていないもの」があります。

今回は、説明が義務付けられている災害リスク、説明義務がない災害リスク、それぞれの種類と内容について宅地建物取引士の高幡和也さんに解説してもらいます。

「土砂」災害リスクは説明義務「あり」

土石流

撮るねっと / PIXTA(ピクスタ) ※写真はイメージです

土砂災害は、大きく「土石流」「地すべり」「がけ崩れ」の3つに分類することができます。

都道府県は、土砂災害が発生した場合に住民の生命・身体に危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域を「土砂災害警戒区域等」に指定することができます。
土砂災害警戒区域等の範囲は、土砂災害防止法で定める基準等により客観的に決定されます。

土砂災害警戒区域等に指定された区域の土地建物を取引する場合、宅地建物取引業者はその旨を説明しなければなりません。

ただし、これらの区域に指定されていないからといって「土砂災害が発生しない」わけではありません。
対象地が土砂災害警戒区域に含まれていなくても、都道府県が作成している「土砂災害ハザードマップ」などで、近くに指定区域があるかどうか等を確認し、その立地の特性を知っておきましょう。

「地震」による災害リスクは場合によって説明義務「あり」

土地開発

スイマー / PIXTA(ピクスタ) ※写真はイメージです

大規模な盛土造成が行われた一団の住宅地に対して、地震による災害の恐れがあることが確認された場合、都道府県知事等はその区域を「造成宅地防災区域」に指定することができます。

この区域に指定された土地を売買する場合、宅地建物取引業者はその旨を説明しなければなりません。

この区域内の造成宅地の所有者等は、災害防止のために擁壁等を設置するなどの責務を負ったり、都道府県知事等から、災害防止のために必要な措置を講じる勧告や改善命令を受けることがあります。

「津波」による災害リスクは説明義務「あり」

津波避難路

Spica / PIXTA(ピクスタ) ※写真はイメージです

津波が発生した場合に住民等の生命や身体に危害が生ずる恐れがあり、津波による人的災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべきとして指定された土地の区域を、都道府県知事は「津波災害警戒区域」に指定することができます。

この区域に指定された場所の土地建物を取引する場合、宅地建物取引業者はその旨を説明しなければなりません。

また、津波災害警戒区域のうち「建築物が損壊し、⼜は浸⽔し、住⺠等の⽣命⼜は⾝体に著しい危害が⽣ずるおそれがあると認められる⼟地の区域」については、都道府県知事が⼀定の開発⾏為等の制限をすべき⼟地の区域として津波災害特別警戒区域として指定することができます。

「洪水、浸水」リスクは説明義務「なし」

西日本豪雨

yuayua / PIXTA(ピクスタ) ※写真はイメージです

洪水や浸水のリスクについては宅地建物取引業法上の説明義務はありません。

しかし近年、台風や大雨による洪水や浸水の甚大な被害が発生していることなどから、不動産取引の際に洪水や浸水のハザードマップを使った災害リスクの周知・説明を求める声が高まっています。

47都道府県の知事で組織する団体「全国知事会」では今年7月に開かれた「危機管理・防災特別委員会」で、宅地建物取引業者が土地や住宅を取り引きする際は、契約の相手側に対して浸水想定区域が記されたハザードマップを提示するなど、リスクの説明を義務づけるよう国に提言することが決議されました。

また、国土交通省も今年7月、複数の不動産業界団体(公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会など)に対して、土地建物取引業者が土地建物の取引を行う場合には、各市町村等が作成した洪水、浸水ハザードマップを契約の相手方に提示して、その位置(被害想定区域内かどうか)などを情報提供するように文書で依頼しました。

現在は不動産取引時に義務付けされていない洪水・浸水リスク情報の説明ですが、近い将来にはその説明が義務付けされるかもしれません。

パソコン

Ushico / PIXTA(ピクスタ)

対象物件の区域にどれくらいの自然災害リスクがあるのかを知っておくことは、実際に災害が発生した場合に、自らが「どこへ避難すべきか」「どう行動すべきか」等を事前に知っておくことでもあります。

自然災害に関する各ハザードマップは、そのほとんどがウェブ上で公開されています。
購入したい物件が決まったら、宅地建物取引業者から受ける説明だけではなく、ぜひご自身の目でその区域の災害リスクを確認して「減災」に役立てましょう。

 

【参考】
※ 内閣府「チーム防災ジャパン
※ 国土交通省「津波災害警戒区域等についての宅地建物取引業法に基づく重要事項説明について
※ 公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会「不動産取引時のハザードマップを活用した水害リスクの情報提供について
※ 国土交通省「都市:宅地造成等規制法の概要
※ 国土交通省「土砂災害防止法の概要
※ ハザードマップポータルサイト

 

 

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