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日本モダンガール協會代表・淺井カヨさんの本棚を拝見!「本は安定剤みたいな存在」

クローゼットや机の引き出しと同様、なんだか覗いてみたくなる他人の本棚。各界の大の本好きに、普段は見せない「奥の院」を見せていただきます。(取材・文/大平一枝  撮影/本城直季

現代版モダンガールが語る、大正〜昭和の本から教えてもらったこと

淺井カヨさんの本棚

『主婦之友』(大正6〜平成20 年)。古い婦人誌は、料理、手芸、連載小説、悩み相談、マナーから広告まで、読みどころ満載

名古屋で暮らしていた小学生時代、父に連れられて行った古書店で、よく漫画や100円の本を買ってもらった。大学卒業後、移り住んだ西荻窪では、100円本が軒先に売られていて、毎日のように買って帰った。

淺井カヨさんは語る。「ずっと本が好きでした。今でも外出すると必ず本屋に寄ります。本はないと不安、安定剤みたいな存在です」

淺井カヨさんの本棚

モダンガール(大正末〜昭和初期)のライフスタイルを研究、実践しているので、この言葉が書名に入っていれば迷わず買う

大正末期から昭和初期を生きた日本のモダンガールの研究や調査、講演を行う。2年前、大正から昭和中期にあった洋館付き住宅を、限りなく忠実に再現。

ファッションから生活様式まで当時のスタイルを追体験している。テレビや電子レンジ、炊飯器もない。2階の書斎の特注本棚には、その時代の雑誌や書籍が一面に。

淺井カヨさんの本棚

昭和初期のユーモア小説が好き。上段は全集。同名でも印刷所違いのものを買い、見比べることも。下段右側は批評もの

「戦前のものを集めだしたのはʼ00年ころからです。旧仮名遣いで読むのに慣れてしまい、現代の本はちょっと読みにくいですね。活版印刷で組んだ文字、今の本にはない美しい装幀、写真がない代わりに、絵やイラストが繊細で。文体もなにもかも、この時代の書物はとにかく大好きです」。

人見知りと自嘲するが、好きなことについて語る姿は生き生きとして、雄弁。本当に楽しそうだ。

淺井カヨさんの本棚

パリの上流社会で活躍したポーランド人画家、タマラ・ド・レンピッカの作品集。1920 年代のファッションの参考にしている

淺井カヨさんの本棚

『四季の家庭料理』は、文章のみの料理本。当時の料理本はビジュアルはあってもイラスト程度。「表紙が洒落ていて好き」

淺井カヨさんの本棚

昨年復刻版が大ヒットした同書の初版。自由に書き込める白紙ページが付いた、当時の少年少女版

淺井カヨさんの本棚

くすりと笑えるユーモア小説を収集。なかでも昭和中期まで活躍した作家、佐々木邦の文体が好き。本書の装画も魅力

淺井カヨさんの本棚

弥生美術館学芸員、内田静枝さんの著。同館で開催された「セーラー服と女学生」展の服飾史を学べる

はがきが伝える人との距離感

淺井カヨさんの本棚

モダンガールの手紙の書き方を解説したもの。「御礼やお誘いの言い回しがやわらかでメールにも転用できます」

とくにこのころの手紙の書き方の解説書や、やわらかな文体に惹かれるという。「お手紙や品物をいただいたら"落手いたしました"。あるいは"けっこうなお品物をお恵みいただき"と、すぐお礼状をはがきにしたためます。今はメールがあるけれど、昔の人もすごく、返信が早いんです。人と人との付き合いが丁寧だったんですね」

淺井カヨさんの本棚

2 階にある淺井さんの書斎には南に面して大きな出窓があり、様々な調度品がセンスよく設えられている

またこの時代の書物は、「はっきり断らなければいけない時の言い回しの宝庫」とのこと。相手を傷つけず、ノーを伝える。炎上もブロックもない世界。彼女は、はがき一枚から、人間としての品格を読みとっているのだろう。

淺井カヨさんの本棚

旅先の骨董店で買った古い婦人帽。マネキンは雑貨店を営む知人からのいただきもの

淺井カヨさんの本棚

プールで使う板子。今のビート板のようなもの

現代の消費生活の否定でも、盲目的な懐古主義でもない。楽しいから、心地いいから、学べるから、自分の肌に合うからこの暮らしをしている。「好き」が溢れた本棚が、そう代弁していた──。

淺井カヨさんの本棚

愛知県にある明治村で撮った写真を昔風に加工して額装したもの

淺井カヨさんの本棚

日本人画家に依頼され、スケッチのモデルをした後、贈られた自画像

 

淺井さんへのQ&A

淺井カヨさんの本棚

Q 書斎にあるこの本棚は?
A 持っている本に合わせてサイズを指定した、大工さんによる造作工事です。自宅は、取り壊し予定の旧家を参考に、設計しました。

Q 書店に行く回数は?
A 外出したら必ず立ち寄ります。古書店や古本祭りは、思わぬ出会いがあるのでとくに好きですね。

Q 古書の購入に、ネットは使いますか?
A 欲しい本を検索をします。見つかったら、実際その書店に行って、現地で確かめてから購入します。好きな本を置いている書店は、同じ傾向のものを置いているので、来訪したほうが楽しいです。どの店でも近現代史のコーナーはチェックします。

淺井カヨさん
1976 年、名古屋市生まれ。’07年、日本モダンガール協會設立。大正末期から昭和初期を生きた日本のモダンガールの調査研究、ファッションから生活様式まで実践している。’16 年、洋館併設の自宅「小平新文化住宅」完成。同宅で、夫で音楽史研究家の郡修彦さんとともに蓄音器コンサートなどのイベントを開催し、暮らしぶりを公開している。著書に『モダンガールのスヽメ』(原書房)。

※情報は「リライフプラスvol.28」取材時のものです

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