「リースバック」と「リバースモーゲージ」はどう違う?
事業の運転資金などまとまった現金が必要になったときの選択肢の1つに、不動産の「リースバック」という方法があります。
「リースバックはリバースモーゲージと言葉は似ていますが、似て非なるもの」と話すのは、宅地建物取引士で不動産会社に勤務する吉井希宥美さん。吉井さんにリースバックの仕組みや注意点について解説してもらいましょう。
1.リースバックとは

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不動産の「リースバック」とは、自宅などの不動産を専門の不動産会社へ売却し、その後、オーナーに対してリース料(家賃)を支払うことで、引き続きその不動産を利用できるという仕組みです。
一番のメリットは、そのまま売却した住宅に住めることでしょう。住宅ローンから解放されるうえ、そのまま自宅に住み続けることができ、子どもが公立小学校・中学校に通っていても学区変更をしなくて済みます。
また、住宅の所有権はありませんので、固定資産税やマンションの管理費などの支払いは不要になります。まとまった現金が手に入るので、住宅以外の用途にも使うことが可能です。
リースバックをするときは、不動産リースバック業者に依頼するのが一般的。広く販売活動することがありませんので、近隣の人に売却したことを知られることも、ほとんどありません。
2.リースバックする際の流れは?

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リースバックの利用を考えているなら、まずは不動産会社に相談しましょう。
すべての不動産会社がリースバックを行っているわけではありませんので、リースバックをしている不動産会社を探し、見積もりを取ります。
見積もりは数社から取ることをお勧めします。通常の不動産売買と同じように、売却額や諸費用が不動産会社によって異なるからです。
リースバックの場合、売却金額のほかに「家賃(リース料)」の設定が行われます。多くの不動産会社は「利回り」で家賃を設定します。たとえば、
投資回収期間:10年、利回り年10.0%の場合
リース料は2,000万円÷(10年×12カ月)=16.6万円
投資回収期間:12.5年、利回り年10.0%の場合
リース料は2,000万円÷(12.5年×12カ月)=13.3万円
このように、リースの設定の仕方により、家賃が数万円も異なります。
このように、リースバックの際は買い取り金額も大切ですが、それ以上に家賃設定が重要となるのです。
リースバック利用の際に注意すべき点は、売却価格が住宅ローンの残債よりも多くないとリースバックの利用が難しくなることです。
住宅ローンの残債が2,500万円で売却価格が1,500万円だった場合、抵当権の解除ができなくなります。その場合リースバックは難しいと考える方がベターです。
3.買い戻しの際に注意すること

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リースバックには、先にお伝えしたメリットに加えて、もう1つ特徴的なことがあります。それは、将来的に「買い戻し」ができることです。
いったん不動会社に売ってしまった不動産をもう一度購入できるのです。同じ家にずっと住むことができるのは、とても大きなメリットです。
しかし、一般の住宅購入と違って注意する点がありますのでご紹介しておきます。
賃貸契約の契約内容をすべて履行してはじめて買い戻しできる
リースバック契約の際には、契約書に「再売買予約権」という買い戻しする際に予約できる権利について触れ、買い戻しの際に優先されるように設定してあることがほとんどです。
しかし、賃料を2~3か月以上に渡って滞納してしまうと、買い戻す権利がなくなると同時に賃貸契約も無効になり、住んでいる家を退去しなくてはなりません。
通常の住宅購入よりも住宅ローンの審査が厳しくなる
一度リースバックで売却した家を買い戻す際に、住宅ローンを組むことは不可能ではありませんが、通常の住宅購入に比べると住宅ローンの審査は非常に厳しくなります。
銀行の審査が通らなかった場合は、ノンバンクでも融資してくれることがありますが、高金利になりますので注意が必要です。
4.まとめ

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リバースモーゲージは高齢者向け。年金の補てんや老人ホームへの入居費用の確保を目的としていて、借り入れ資金は死亡後に一括返済します。
リースバックの場合、事業の運転資金などに利用し、安定したら買い戻しをするなど、資金の使用用途を自由に決められます。買い戻しを見据えた行動を選択できるので、若い人向けのものといえるでしょう。
ファイナンシャルプランナー(AFP)/宅地建物取引士一般社団法人/家族信託普及協会®会員 吉井希宥美