暮らしのコツ

Sumai編集部

作家・エッセイスト大平一枝さんの本棚を拝見!「本はときに人生さえ変えることもある」

クローゼットや机の引き出しと同様、なんだか覗いてみたくなる他人の本棚。作家・エッセイストとして活躍する大平一枝さんの本棚を見せていただきました。

代謝する本棚、しない本棚

家族共用の本棚

大平家の本棚。最近独立した長男の部屋をリフォーム。家族共用の書棚に

「意外に本が少ないんですね」と、初めての来客には必ずといっていいほど言われる。昔からそうだ。とにかく持ちたくない。収納場所が満杯になると息苦しくなる。

コーポラティブハウスを建ててから5回越した。

いろんな理由があるが、ものが詰まるとムズムズしてくる悪癖も大きい。引っ越しで荷物を何十袋も捨てると、なんとも言えない爽快感がある。買っては捨て、捨てては買い、そして越す。なんと愚かなことか。

仕事部屋の本棚

仕事部屋の本棚はニトリの組み立て式を活用。進行中の仕事の資料本、掲載誌が中心。昭和の言葉、原爆開発など、テーマごとに棚を区分け

そしてあるときから、本は代謝するものと考えるようになった。本当に必要な本は5冊、という30年ほど前に誰かから聞いた言葉も胸にある。「必要」の基準は毎年一度は繙く本。そう考えると5冊もない。

だからといってそこまで絞れないのでわが家の本棚は3種。
1.仕事部屋/現在進行系の資料本と掲載誌、著作。
2.リビング/読んでいる途中か最近読み終えたもの。
3.家族共用の書斎/永久保存版のみ。
2はいわば2軍で、永久欠番の棚か古書店へ常に出たり入ったりする代謝の棚だ。

思い出の詰まった本

著書『かみさま』(ポプラ社)執筆のため、美篶(みすず)堂で製本を体験。娘の幼い頃のワンピースを、好きな小説にあしらった。思い出の詰まった1冊

最近読んだ小説のNO.1

今年芥川賞を受賞した今村夏子のデビュー作。よく練られた構成と、違和感を持たせたまま引っ張る作者の力量が昇華。最近読んだ小説のNO.1

手のひらサイズの私家本

古書サイトで入手した限定300 冊、手のひらサイズの私家本。新聞1面の広告、三段八ツ割(通称さんやつ)を集めて評論。とぼけたコメントが秀逸

自分が売った本を何年後かに自分で買ったことも

読みかけ、読了直後の本棚

リビングの一角。読みかけ、読了直後の本置き場。文庫は出版社別に分類。ここがあふれたら古書店へ。ため込まず隙間を残す、いわば代謝する本棚

古書店へはふた月に一度ほど。夫婦で大きな紙袋ふたつ。売れたお金はビールとランチ代に。

独身の頃、自分が売った本を何年後かに自分で買ったという失敗がある。薄い鉛筆の線で分かった。今は傷や加筆のある本は買い取ってくれないことも。

戸田ツトムの装丁本

詩、デザイン、写真。多彩な北園克衛の評論。奇抜な文字組、本文に蛍光色を使った前衛的な戸田ツトムの装丁にしびれる。古書店で入手

新刊は小説中心だが、装丁の優れた本にも弱い。

さて、人様の書棚を訪ね歩くと、紙でできた本への愛が誰も彼も眩しく、心を動かされた。本はときに人生さえ変えることもあると、『ブックシェルフハンター』の取材で再確認した。いつか本城直季さんとまた誰かの知の泉を覗きに行きたい。

最も好きな作家の本

最も好きな作家。左の没後14 年目に編集を手伝った回顧本をきっかけに読むようになった。『輝ける闇』は自身のベトナム戦争取材がベース

庭の写真集

タレント・ちはるさんの本作りを手伝った際、彼女のみずみずしい感性や美意識に触発され、思わず買ったデレク・ジャーマンの庭の写真集。今見ても新鮮

大平一枝さん

大平一枝さん
作家・エッセイスト。新刊は『新米母は各駅停車でだんだん本物の母になっていく』(大和書房)。著書に『男と女の台所』(平凡社)、『届かなかった手紙』(角川書店)ほか25冊。『東京の台所』(朝日新聞デジタル&w)、『そこに定食屋があるかぎり。』(ケイクス)、『あ、それ忘れてました(汗)』(北欧、暮らしの道具店)連載中

※情報は「リライフプラスvol.34」取材時のものです
(取材・文/大平一枝  撮影/本城直季

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