お宅拝見

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【注文住宅事例】甘すぎないインテリアも魅力の店舗併用住宅

栃木県・宇都宮駅から車で10分ほど北上した幹線道路沿いに、フィトテラピー(植物療法)をベースとした焼き菓子やハーブティーなどを販売しているお店があります。オーナーは佐藤景子さん。そのお店と、併設する住まいを訪ねました。

独学で始めた店舗経営を結婚・新築を機に再開

外観

景子さんは夫と子ども3人との5人暮らし。住まいは店舗を併設した分棟式で、片流れの屋根を載せた大小2つのグレーの箱が目印です。

背後には雑木林のような豊かな緑が広がっていますが、地続きの隣地は、実は造園業を営む夫の実家の敷地です。奥には両親の住まいや社屋も点在しており、夫も家業に就いています。店の切り盛りで忙しい景子さんにとっては、夫の実家は幼い子どもを預かってくれるありがたい場でもあります。

店内

 

景子さんは結婚前の20代から、市内の別の場所でカフェを営んでいました。高校卒業後、ダンサーを目指して東京の短大へ進学したものの、都会の水は合わないと感じて帰郷。「自分の好きな空間で何かをつくって売るのが自分には合っている気がした」と振り返る景子さんは、まず実家の一角を改装して母と姉の3人で雑貨店を始めました。

その店は2年ほどで閉じてしまいましたが、きっと店を営むおもしろさに目覚めたのでしょう。 次に目指したのがカフェでした。しばらくカフェやお菓子教室のスタッフとして働きながら自分なりのお菓子やケーキを研究する傍ら、県内の有名店や都内の人気カフェなど、好みの店には勉強のため、何度も通ったそうです。

また、いずれ店で使いたいアンティークの家具や雑貨を少しずつ収集。そのうち、物件探しも始めました。何年もかけ、ようやく東武線・南宇都宮駅のそばに見つけたのが、家賃が安く駐車場付きで改装OKの古い一軒家。ここで夢の実現の第一歩を踏み出すことになりました。
アロマオイル

2年のブランクを経て新天地で再開したイートインOKの洋菓子店は好評でしたが、現在はフィト菓子やハーブティー、アロマオイルなど心と体に調和をもたらしてくれるアイテムを提供するショップとして営業しています。

その空間を彩るのはもちろん、集めていたアンティークの家具や雑貨。景子さんならではの、甘すぎない独特のセンスに満ちています。
店舗併用住宅の設計を手掛けたのは、夫の友人の建築家、三上孝幸さんと石崎敦子さん夫妻です。「箱づくりは主人とおふたりに任せて、中は私の自由にしていいと言われました。与えられたものをうまく使うほうが自分には合っているのだと思います」と景子さん。

カフェへの転用も可能な大らかなワンルーム

LDK
店の向かいに建つ住宅棟は、南と西が実家の敷地と接し、樹木に囲まれた好立地。ぶどう棚が掛かった路地を挟むことでオンとオフが切り替えられ、それぞれの気配も感じられて安心だと景子さん。

ダイニング

薪ストーブを中心に据えたLDKは、屋根の傾斜がそのまま天井に表れた吹き抜けの大空間です。三上さんによれば、将来ここをカフェに転用する可能性も考えて設計したといいます。

確かに、ゆくゆくは長男である夫が家業を継げば、一家がここに住み続けるかどうかは分からない。通常の家より幅広の通路、広いユーティリティや裏動線を確保したゆとりのキッチン、間仕切りのない大らかなワンルーム状のLDKなど、いわれてみればカフェに切り替わっても即使えそうです。
階段

薪ストーブ越しに見上げる階段。階段の突き当たりの窓や、リビング奥の横長の窓からも西側の豊かな緑が眺められます。スケールが大きいわりに大味に見えないのは、景子さんが家具、照明、 雑貨などディテールにまでこまやかに気を配り、楽しみながら住みこなしているからに違いありません。
ピクチャーウィンドウ
吹き抜けに面した南の開口部。奥には夫の実家の広大な敷地があり、間には大木が生い茂る樹林が広がります。
吹き抜け
ダイニングから吹き抜けに面した2階の個室の開口部を見上げたところ。1階奥のリビングは将来、仕切って個室にすることもできます。
ユーティリティ

薪ストー ブの背面に見える壁の奥にはユーティリティがあり、上部には小屋裏収納が設けられています。ピザやパンも焼けるオーブン付きの薪ストーブはデンマーク・HWAM(ワム)社製。冬場は薪ストーブの暖気が家全体に回ります。

洗面所

洗面所もゆとりの面積を確保しました。コンクリートのカウンターと実験用シンクが目を引く、オリジナルの大きな洗面台。足元がオープンで使いやすそうですね。

古い扉

洗面所の入り口には、前のカフェで使っていた古い扉を再利用。こんなしつらえにも景子さんならではのセンスが感じられます。

景子さんは将来のことは分からないし、店を大きくしたい気もなく、「好きな空間で好きなものを提供することが自分の喜びや癒やしになり、それが周りにも伝わればいい」と淡々と語ります。欲ばらず、流れに任せる生き方が自然と運を呼び込むのかもしれません。

SHOP DATA
keica
栃木県宇都宮市岩曽町1014-3
電話番号    028・305・1615
営業時間 11:00 ~ 17:00
木・金・土のみ営業
※情報は「住まいの設計2017年5-6月号」掲載時のものです。

設計/三上石崎建築計画事務所
撮影/川辺明伸

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