床暖房のメリット&デメリットを種類別に解説。あなたに向くのは?
「冬になると家の中が寒くて辛い」…そんな暮らしを快適にする方法の一つとして、じんわりと足元から温めてくれる床暖房があります。リノベーション会社EcoDecoが運営するサイト「大人のリノベ」担当者に、その良さや気になるコストなどについて教えてもらいました。
快適さを実感すると手放せない

リノベーションされた深沢のSさんは、物件探しの段階から「床暖房を導入できるマンション」を希望されていました
暖房器具としてエアコンの次に思い浮かぶのが、床暖房。リノベの打ち合わせの際にも、床暖房を導入したいという方が一定数います。きっかけはそれぞれですが、実際に導入した方は「現在の賃貸住宅に床暖房があり、新居でもぜひ導入したい」という方や、「友人宅で床暖房がいいと感じた」という「実感したから」という方が多いのです。
床暖房は施工費が高め(詳しくは後半でお伝えします)なので、当初希望していても、結局施工を断念されるケースも少なくありません。それでも床暖房を導入した方からは、やはり「設置してよかった」と言われます。私たちが関わるのは、築30〜50年程度の中古マンションが多く、断熱が施されていない場合も多いので、体感として差を感じやすいのでしょうね。
床暖房はどうやって温める?
床暖房はどのような仕組みで部屋を温めるのかというと、床下に専用のマットを設置して床を温め、さらに空気を温めるという形式で、これを輻射熱(ふくしゃねつ)といいます。輻射熱は、温度の高いところから低いところへ広がっていく性質があるので、温風でなくてもお部屋全体を温めてくれます。
暖かさを感じるまでには少し時間がかかりますが、空気を温めるのではなく、壁・床・天井そのものを温めるため、一度温まると心地いい室温が保たれる良さがあります。オイルヒーターも同じく輻射熱で温めるので、じんわりとお部屋全体が温まります。
温風式の場合にネックになる、「温風が直接当たるのがいや」「乾燥が気になる」「部屋の隅々まで温まらない」という問題が、床暖房だと解消される良さがあります。
どんな人に向いている?
では、床暖房はどういう方に向いているのでしょうか。
温風や乾燥が苦手な方
エアコンやファンヒーターの温風が苦手という方、直接風が当たるのが苦手な方。
部屋が広い(容積が大きい)方
温風式に比べて、部屋のどこにいても暖かさを感じられます。
在宅時間が長い方
立ち上がりの遅さはありますが、一度温まると冷めにくい特長があるためです。
住まいを快適にするために、リノベ会社ができること
気になるコストは?
良いことばかりのような床暖房ですが、問題は「施工費が高い」ということ。方式にもよりますが、ヒートポンプ方式で4.5畳程度に施工した場合、40万円程度が目安です。
ただ、コスト以上に「住まいが快適であること」はとても大切だと思います。特に、大人世代の方は、身軽に動ける今のうちに温熱環境を整えることをお勧めします。
身体機能が低下した場合の住宅を考えておく
「動けるうちにやっておく」
このことは、2019年3月に国土交通省が定めた「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」でも提唱されていて、「アクティブに動けるうちに、住環境を整えましょう」というのが国の考えとなっているのです。
高齢期といわれると遠い未来のことで、あまり自分ごととして捉えられないかもしれませんが、例えば30〜40代の方は親御さんを思い浮かべてみてください。まだまだ動けるけれど、70代になってから住まいを変えることは色々と負担になるかも…と思いませんか?
あとどれくらいこのまま住み続けるかわからないし…とも思われるかもしれませんが、内閣府の集計によると、高齢になって身体機能が低下した場合でも現在の住まいに居住したいと考える方は65%に及びます。高齢になる程、動くことが心理的にも身体的にも負担になりますので、まずはご自宅の温熱環境を整えていくことを優先的に考えてみましょう。
住みながら工事ができる?
答えは、「YES」。ただし、おすすめではありません。今あるフローリングの上に施工するのか、フローリングを新しくして施工するのか、施工範囲はどうなのか…その他さまざまな条件が絡むので、絶対ではありませんが、いずれも工事期間は1週間以内が目安です。工事業者に相談しながら進めましょう。
床暖房は何を選んだらいい?
床暖房には大きく分けて3つの方法があり、それぞれ特徴があります。
表にまとめましたので、比較してみましょう。
▼床暖房の特徴比較
方式 | 向いている住まい | 長所 | 短所 | |
電気式
(ヒーター) |
電気を流すと発熱するヒーターパネルで床を暖める。 |
オール電化や太陽光発電を完備した住まいに向いている。 使用時間が限られている方。 床暖房給湯器や室外機を設置できない状況の方。 |
・省スペース ・使用時間が短い ・後から簡易に設置できる |
(オール電化や太陽光発電などを完備した住まい以外では)ランニングコストが高い ※使用時間によっては他の形式と同程度となる |
温水式
(ガス) |
ガス給湯器でお湯を沸かし、床暖マット内のチューブに温水を循環させて部屋を温める。 |
床暖房専用の熱源器(お湯をつくる)が必要ですが、お風呂給湯器などと一体となっているタイプもあるので、設置スペースがあまりとれない家に向いている。 |
・暖めるパワーが強い |
・床暖チューブ内「不凍液」は10年で交換(メーカー推奨)の費用がかかる ・電気式に比べると立ち上がりが遅い ・給湯器と床暖房熱源器一体型でない場合は、床暖房専用の熱源器が必要になるので設置場所などが必要になる |
電気温水式
(ヒートポンプ) |
空気の熱を利用して、少しの電気でお湯をつくり床暖マットを暖める。 |
ヒートポンプユニット(室外機)を置くスペースがある方。エコキュート利用や割安深夜電力を使用できる方などにお勧め。 |
・ランニングコストが安い |
・初期導入の費用は他に比べるとやや高め ・床暖房ユニット(熱源器)と室外機が必要になるので、十分な設置スペースが必要 ・床暖チューブ内「不凍液」は10年で交換(メーカー推奨)の費用がかかる |
それぞれ一長一短があり、さらにご自宅の状況で設置ができる設備も変わってきますので、専門家に相談してみてはいかがでしょうか。住まいに目を向けるきっかけになれば幸いです。