椅子をオーダーするとき、木材の種類や仕上げ方、座面の種類や高さなどをどう決めればいいか、初心者には難しいですよね。北欧の椅子の専門店「サボファニチャー」で素材選びのポイントを教えてもらいました。
家具製作を学んだ店主が営む北欧の椅子の専門店
「サボファニチャー(Sabo Furniture)」は自由が丘駅から歩いて10分ほどのところにある小さなお店。
25平米ほどの店内には、デンマークの巨匠ハンス・J・ウェグナーの椅子を中心に、美しい北欧の椅子たちがならびます。
店主の小松義樹さんは北欧で家具製作を学んだ経験をお持ちの方。お店にならぶ椅子たちは、どれも小松さんの目で選び抜かれた椅子ばかりです。

イージーチェア(CH25)と小松さん作のチェスト
商品の傍らには、小松さんが製作した自作の家具もさりげなく置かれています。北欧の椅子というとデザインばかりが注目されがちですが、家具づくりに精通した小松さんは材質や構造についても豊富な知識をお持ちなのが頼もしいのです。
「サボファニチャー」では、木材や座面をひとつひとつ選んでオーダーします。自分だけの一脚を選ぶための基礎知識を小松さんに聞きました。
北欧でポピュラーなのはビーチ材とオーク材
ひとことで「木」といってもいろいろな種類がありますね。「北欧の椅子でもっとも一般的なのはビーチ材とオーク材ですね。ビーチは日本語でいうとブナ、オークはナラ。どちらもデンマークで伐採された木材になります」

ビーチ材(ソープ仕上げ)
「ビーチ材はもっともポピュラーな木材で、木目もシンプルで美しいです。比較的安価なので、あまり木材にこだわりがないのであればビーチ材を選ぶのがいいかもしれませんね」

オーク材(ソープ仕上げ)
「オーク材は木目が粗くて、いちばん硬い木材です。長く使いたいとか、傷をつけたくない方はオーク材がいいと思います」どちらも明るい色合いで、いかにも北欧といった雰囲気を感じさせます。
「ビーチ材やオーク材にくらべて、チェリー材やウォールナット材は、いわゆる高級材と言われています。たとえば、うちに展示してあるYチェアはチェリー材です」

CH24(仕様:チェリー材、オイル仕上げ、ナチュラルペーパーコード)
北米で採れる木材なのでデンマークの木材よりも価格が高くなるのだそうです。

チェリー材(オイル仕上げ)
赤みを帯びた色合いが印象的ですが、木材の色選びもなかなか悩ましいですね。
「フローリングの色に近い色でそろえたり、ダイニングテーブルと同じ木材を選んで合わせるといいですよ。逆に、フローリングやダイニングテーブルとちがう色の木材をあえて選んで椅子の存在感を強調するという考え方もあります」
座面は将来的に張替えることもできますが、フレームの木材は替えがきかないので、本当に気に入った木材で注文しましょう。
あっさり白のソープ仕上げか、深みの出るオイル仕上げか
木材と切り離せないのが表面の仕上げです。北欧の椅子には「ソープ仕上げ」という聞きなれない仕上げ方があります。

ソープ仕上げ(オーク材)
「北欧では昔から使われている仕上げ方で、ヨーロッパの中でも北欧だけかもしれないですね。ソープを塗り込んでいるぶん若干色が白くなります。塗膜はすごく薄いので手触りで木材を感じていただけます」
次に紹介するオイルにくらべて安価なので、のちのち自分でオイルを塗る方もいるとか。オイル仕上げのほうはというと…

オイル仕上げ(オーク材)
「ソープにくらべて塗膜が厚いので汚れや傷がつきにくく、目立ちづらいです。オイルで塗装すると加工したての木材よりも色が濃くなりますし、使っていくうちに色に深みが出て、味わいが出てきます」
安価な家具では、厚い塗膜がバッチリついてるものも見かけますよね。
「うちの椅子でもラッカー塗装は選べるんです。透明のクリア塗装で、人工的な固い塗膜がつきます。ただ、ウェグナーの椅子を購入される方は、経年変化も楽しみながら椅子を育てていく方が多いので、今のところうちのお店でラッカー塗装を注文された方はいらっしゃらないですね」
北欧の椅子は耐久性も折り紙付きですので、何十年もかけて木材の変化を楽しんでいけるのも魅力なのです。
ペーパーコード、ファブリック、レザー…座面の種類もいろいろ
座面の種類もいろいろあります。

奥:ファブリック/手前左:レザー/手前右:ペーパーコード
ペーパーコードで編んである座面は物珍しい印象を受けますが、小松さんによれば「北欧では昔から椅子の座面に使われている素材」なんだそうです。
「Yチェアの人気もあって、他のメーカーでもペーパーコードの座面の椅子を見かけるようになりましたね」

ペーパーコード
「適度なクッション性もあって座り心地も悪くないのですが、長時間お座りになるなら張地にウレタンのクッションが入っているほうがいいかもしれません」

ファブリック
座面にファブリックを選ぶとなると、どんな生地を選ぶかも悩ましいです。お店には生地サンプルも用意されているので、展示品の椅子と合わせながら選びましょう。
ほぼ同じかたちで座面のみが異なる椅子(PP58とPP68)をくらべてみるのも面白いですね。

写真左・PP68(仕様:オーク材、ソープ仕上げ、ナチュラルペーパーコード)、写真右・PP58(仕様:オーク材、オイル仕上げ、ファブリック座面)
レザーという選択肢もあります。

CH30(仕様:オーク&ウォールナット材、オイル仕上げ、レザー座面)
これはアイボリーのレザーを張ったCH30という椅子。

アイボリーのレザー
やはりファブリックにはない独特の質感が魅力です。ただ、白系だと汚れが目立ちそうで心配な気がするんですが…
「レザーは経年変化を楽しむことができるんです。フチの部分やお尻のかたちに沿って色が変化していくのを好まれる方が多いですね」
なるほど、木材と同じく椅子を育てていく楽しみですね。汚れや経年変化をあまり見せたくなければ黒のレザーを選ぶといいそうです。
こちらもサンプルで色合いや質感が確認できます。
自分の身長や体型に合った座面高を選ぶことが大切
北欧の椅子が自分の体型に合うか、心配な方もいると思います。
「デンマークで販売されている一般的なサイズ(EUサイズ)とは別に日本サイズ(JPサイズ)というのがあって、座面が2センチ低いんです。女性は日本サイズのほうが座りやすいと思いますね」
これは身長168センチのアサクラがEUサイズに座ったところ。いちおう足がつきましたが、もう少し身長が低い人はかかとが浮いてしまうかも。
「特にペーパーコードの椅子は注意が必要です。コードを張るという構造上、前身頃に硬い無垢の木が入ってるんです」
「足の裏がつかないまま座っていると、この木で膝の裏が圧迫されて足が痺れてしまうことがあります。ペーパーコードの椅子を選ぶなら、よりシビアに座面の高さを考えたほうがいいかもしれないですね」
北欧の椅子かどうかにかかわらず、座面高って大事なんですね。「なるべくご自身の身長や体型に合った座面高の椅子を買うことは、うちのお店ではいちばん初めに説明している重要なことなんです」
今回ご紹介したポイントは基本の基本。
紙幅の都合で紹介できなかった素材や仕上げもありますし、購入後のメンテナンスなど、まだまだ大事なポイントもたくさんあります。ご興味ある方はぜひお店で実際に椅子を試しながら小松さんにいろいろと質問してみてください。
【サボファニチャー(Sabo Furniture)】
東京都目黒区緑が丘2-6-13
営業時間:11:00~19:00 定休日:水曜
電話番号:03-3725-0886