ガス給湯器の操作パネルに「88」と表示されることがあるのはご存じでしょうか。東京・世田谷で大家をしているアサクラさんは、貸している部屋でこの表示が出たそう。
そのときにおこなった対応と、ガス給湯器の利用者が知っておくべき点検制度のポイントについてもまとめてもらいました。
給湯器パネルに「88」の表示が!その意味は?
とある平日の昼、入居者さんから携帯電話に連絡が入りました。聞けば、ガス給湯器のパネルにエラーメッセージが出てしまっているとか。早速お部屋にうかがい、表示を確認させていただきました。
このようなノーマルな画面表示が、時々「88」に切り替わります。
入居者さんのお話では、ふつうにお湯も出て問題なく使えているそうなので、即故障と判断するような状態ではなさそうです。
とはいえ、つい先日、うちの事務所でガス漏れがあったこともあり、ちょっとナーバスになっていた僕は、早速東京ガスに電話して聞いてみることにしました。
「88」の表示が出たら「あんしん点検」を申し込もう
東京ガスの方のお話によると「88」の表示は点検時期を知らせるメッセージなのだそうです。給湯器の使用を開始してから10年が経過すると、表示されるような仕組みになっているとのこと。
たしかに、この部屋をリノベーションする前から設置されていた給湯器なので、それくらいは経っているなと思い当たります。
同時に聞かれたのは「点検に関するハガキは来なかったですか?」ということ。そう、通常はパネルに「88」が表示される前にハガキが届くのです。いつもは給湯器の製造メーカーからこんなハガキが届いて、入居者さんに点検を受けるようにお願いしていました。
ですが、今回のお部屋に関してはハガキが届いた記憶がありません。ひょっとしたら、いろいろな書類にまぎれて失くしてしまったのかも…。
入居者さんには点検時期を過ぎてしまっていたことをお詫びし、東京ガスによる「あんしん点検」を手配させていただきました。当然ながら、ガス給湯器はマンションの持ち物なので、点検費用はうちがお支払いすることになります。
「長期使用製品安全点検制度」について
さて、今までハガキが来たら点検をお願いするということをルーティンのようにこなしてきましたが、そもそも「あんしん点検」がもとづいている「長期使用製品安全点検制度」とはなんぞや?という話。
点検を手配する際に東京ガスの方に聞いた情報や、東京ガスのホームページに掲載されている情報をまとめてみましょう。
ガス機器を長期間使用した場合、経年劣化に伴い故障が生じ、重大な事故につながる恐れがあります。それを受けて2009年に「消費生活用製品安全法」が改正され、「長期使用製品安全点検制度」が設けられたのです。
この点検制度の対象となるのはガス給湯器だけではありません。経済産業省のホームページでは9品目が列挙されています。
・屋内式ガス瞬間湯沸器(都市ガス用、LPガス用)
・屋内式ガスふろがま(都市ガス用、LPガス用)
・石油給湯機
・石油ふろがま
・密閉燃焼式石油温風暖房機
・ビルトイン式電気食器洗機
・浴室用電気乾燥機
恥ずかしながら、食洗器や電気乾燥機が点検対象であるとは知りませんでした。
注意したいのが「利用者が任意で受ける点検」だという点、つまり強制ではないというところ。電話で問い合わせた際も「義務ではない」と説明されました。
「あんしん点検」に立ち会ってみた
しかし、大家からすればマンション設備を安全に使ってもらうのは基本中の基本。義務だろうがなかろうが、点検は欠かさずおこないたいです。せっかくの機会なので、勉強がてら「あんしん点検」に立ち会わせていただくことにしました。
赤い枠で囲ったところが点検口で、ふだんは見えないように隠してあります。
これを開けて、給湯器の製造年を見ると、
「2009年4月」で、まさに「長期使用製品安全点検制度」が実施された当時に設置されたことが分かります。
給湯器のフタを開けると、
へえ、こんなふうになってるんですね。初めて見ました。
きちんとガスが燃焼しているか、ガス漏れがないか、排気口の一酸化炭素の濃度に異常はないかなどを東京ガスの方がテキパキと点検していきます。
検査の結果、異常なしということで一安心でした。30分もかからなかったと思います。最後に、リモコンを操作して「88」の表示を消して完了です。
聞いたところでは「88」のエラーメッセージは、この操作をおこなわないかぎり、表示され続けるそうです。ついついおろそかにしがちな点検ですが、このシステムなら忘れたままになってしまうこともないですね。
点検のハガキを失くした僕としては、二重のセーフティネットが張られていて助かったと感じました。今後は見落としのないように、マンション内の給湯器の製造年一覧表を作成することにしようと思います。
点検にかかった金額は「9,020円」
ちなみに、次に「88」が表示されるのは、また10年後。東京ガスのホームページによれば「設計上の標準使用期間を10年と算定」しているそうですから、さすがに次のエラーメッセージより前には新品と交換することになるかと思います。
なお、今回の点検にかかった料金は「9,020円」。
ホームページによると内訳は「点検出張料」が2,640円、「点検技術料」が6,380円だそうです。休日対応の場合は休日料金(出張料+技術料で11,330円)となるようなのでご注意ください。
もし異常が見つかり、修理などが必要な場合は別途料金がかかるのは言うまでもありません。
上記の金額は2020年2月に東京ガスに依頼した場合の料金ですので、リンナイやノーリツ、パロマなどの各機器メーカーに依頼した場合は、それぞれ料金が異なることもあります。メーカーによってキャンペーンなどをおこなっているケースもあるようです。余裕があれば、比較検討してみるといいかもしれませんね。
大家としては、点検をしっかり受けていただき、安心してガスを使うことをおすすめいたします。
【参考】
※ 東京ガス「長期使用製品安全点検制度」
※ 東京ガス「あんしん点検」
※ 経済産業省「消費生活用製品安全法改正について」