不動産 連載

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コロナによる収入減で賃料減額の交渉…大家の判断基準は?

新型コロナウイルス感染拡大に伴う景気の悪化で、今後は家賃の支払いが難しくなる人が増えることも予想されます。東京・世田谷区で築古マンションの大家をしている日刊Sumaiライター・アサクラさんに「賃料減額の交渉」と大家さんの本音について聞いてみました。

「コロナで収入が減ったので家賃を1万円減額してほしい」と言われ…

マンション

ABC / PIXTA(ピクスタ) ※写真はイメージです

先日、小さな賃貸マンションを営む大家さんから相談を受けました。入居者から不動産会社を通して賃料減額の交渉を受けたというのです。コロナの影響で賃料の支払いに困る人が出ることは予想していましたが、身近な人から聞いたのは初めてでした。

話によると「在宅ワークになって収入が減ったので家賃を1万円減額してほしい」という交渉だそうです。長くお住まいの方なのかと思いきや、入居者はまだ一度目の更新を最近終えたばかり。減額交渉のタイミングとしてはいささか唐突な感があります。

コロナの影響による「生活苦」を理由とした減額交渉は十分ありえると思いますが、その物件の家賃が約20万円と高めであることも引っかかりました。

これはもう立派な高所得者向けマンションですから、四畳半の木造アパートで暮らす人が家賃の減額を要求するのとは別次元の話です。

おそらく入居者はかなり生活水準の高い方で、生活に困窮しているというよりは、これからの不況を見据えた上で今のうちに出費を抑えておこうと先手を打っているのではないかと感じました。

大家さんだってローン返済を抱えて苦しい

リフォーム

パタ / PIXTA(ピクスタ)

カギとなってくるのは大家さんの経済状況でしょう。マンション経営で左うちわという大家さんはほんの一握り。大半の大家さんはローンを組んで古いマンションを購入・リフォームし、賃貸収入で返済しているのでキャッシュフロー的にはかなりカツカツです。

先の大家さんは、元々お持ちのマンションではありますが、築古の建物をリノベーションするためにローンを組んでおり、賃貸収入を返済に充てていらっしゃいます。賃料が減れば返済プランが苦しくなるのはまちがいありません。

1万円の差額が生活を根本から揺るがすことはないでしょうが、将来の返済のことを思うと不安に思うはずです。そう考えると、大家さんだって簡単にイエスというわけにはいかないものなのです。

短期的な視点から見れば、減額交渉には「ノー」が正解?

マスク

SoutaBank / PIXTA(ピクスタ)

では、今回の減額交渉に対してどう応じるべきでしょうか?この大家さんは「こんなときに出て行かれたら、次の入居者がいつ見つかるかわからなくて不安だ」とおっしゃっていました。

でも、話を聞いている僕からすれば、逆もまた然り。入居者だってこの状況下で新しい物件を内見し、引っ越しを決めることはそう簡単にできないはずです。

内見に行けば感染のリスクにさらされますし、退去と引っ越しに伴う出費だってかなりのものです。この入居者はそこまで困窮していないようですから、おそらく減額交渉を断ってもすぐに引っ越すことはないだろうと思われます。

相手の足下を見るような話になってしまいますが、一般的な大家さんならこう考える方が多いと思います。実際、不動産仲介業者さんからも同じようなアドバイスを受けたそうです。短期的な観点から判断すれば、「ノーが正解」なのかもしれません。

入居者を知る努力をしていれば、おのずと答えは出る

マンション

ABC / PIXTA(ピクスタ)

しかし、こんな大事な交渉を、不動産会社を間に入れて伝言ゲームのようにおこなうことには疑問が残ります。

先のケースでも、あいだに不動産会社の担当者を介してのやり取りなので「入居者の経済状況がどのくらいひっ迫しているか」や「どんな態度で交渉に臨んでいるか」など、当の大家さんも把握しかねているようでした。

「よくわからないからノー」ではなく、入居者の事情をきちんと理解した上で、より適切な対応を取れれば、結果的に長くお住まいいただくことができ、大家さんのほうも得をする可能性もあるかもしれません。

ふだんから顧客である入居者の暮らしについて知る努力をしておけば、いざ「減額交渉」を受けても、どんなかたちで減額に応じるのが適切か、おのずと明らかになると思います。

たとえ断るにしても、自信と根拠を持ってノーと言うことができるはずです。

コロナの影響で大家さんも想定外の出費を強いられるかも

緊急事態宣言

まちゃー / PIXTA(ピクスタ)

減額交渉に応じる場合、今の社会状況を踏まえれば「緊急事態宣言が続いている期間にかぎって一時的に賃料を減額する」「家賃の支払いを猶予する」といった、いろいろな対応が考えられます。

もし賃料の減額では解決できないほど深刻な場合、賃料の安い物件への転居を提案することが結果的に入居者のためになることもありえます。

大家の側も最終月の家賃をあきらめたり引っ越し代金を負担したり、想定外の出費を強いられるかもしれませんが、今回のような未曽有の事態においては、大家さんだけが無傷ではいられません。

だいぶ昔のことですが、うちのマンションで半年分の家賃を滞納した末に引っ越し代金まで要求した入居者がいました(その当時大家をしていたのは親族でしたが)。なんてひどい話だと思ったものですが、今思えば、そこまで放置してしまった大家にも責任があると思います。

先行きの見えない現在、入居者の事情をよく理解して的確に判断を下すことが、大家さんにとってますます求められるのではないでしょうか。

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