家づくり

遠藤 宏遠藤 宏

きみが傾いているのか、ぼくが傾いているのか

日本には様々な建物があれど、「なぜか小屋を偏愛してしまう」というカメラマン・遠藤宏さん。旅先で「妙に引き寄せられてしまった」という小屋との出会いをレポートしてくれました。

田んぼに佇む小屋

私は畑や田んぼ、漁港などに佇む小屋に魅せられて日本各地を訪ねている小屋好きカメラマンです。
例年なら新緑のこの季節、小屋を求めて旅をしたい気持ちでウズウズしていますが、今年は新型コロナのためにゴールデンウィーク中も外出を控え、これまでに撮影した写真を整理していました。

お気に入りの小屋を眺めていられれば、それはそれでわたしにとっては「It’s a wonderful world !!」。
なかなか旅に出られないこの時節柄、写真の中で一緒に小屋を観察するのはいかがでしょうか。個性豊かな小屋たちをどうぞご堪能ください。

まずはこちらから。トタンの物置小屋です。

泉谷しげる風?トタンの物置小屋

うん、傾き方がよい具合ですね。
こうした小屋は住宅と違って必ずしも基礎が打たれていませんから無理もありません。時間とともに錆びも不具合も出てきます。一般的にはこれを劣化というのでしょうが、私は小屋への愛を込めてひそかに「熟成」と呼んでいます。

そうして眺めると、体は左に傾きつつ、頭だけは垂直を保とうとしているところなんかが、近所や職場でひょっこり会うと気軽に「おう、こんちは」って挨拶してくる、ひょうきんで明るいおっちゃんといった感じに見えてきます。

「ほら、俺、左に傾いているだろ。ドアを開けるときは手動だけどよ、手を離せば自重で閉まるから、閉まる時だけ自動ドア。どう、すごいだろ?」とかくだらないことを言ってそう。いたずらっぽい口調は泉谷しげる風です。

小屋もおっちゃんも、中身がどうなっているのかは永遠の謎ですね。
いや、くだらないのはわたしの妄想なんですけどね。よくわかってます、すみません。

あれ、よく見ると、この小屋も傾いています?

この小屋、傾いている?

「いや、おれは傾いていないよ。きみが傾いているんじゃないのかい?」
「写真を撮る時にカメラが傾いていたのかな? 水平が出ていなかった? いや、そんなはずはなんだけど。え、ひょっとしてわたし自身が傾いている?」
眺めていると、逆にジッと問いかけられているかのような錯覚に陥ってきます。

考えてみれば親戚のおじさんおばさん、友人知人、会社の同僚や上司で、バランスよくスッとまっすぐに立っている人なんて、ごくまれ。
「なくて七癖」とはよく言ったもので、みんなどこかしらにちょっと癖があって、「あれ、わたしがおかしいのかな?それともあの人がおかしいのかな?」なんて悩んだりします。

地面は人それぞれに水平があって、互いにその水平がずれているから気が合ったり、すれ違ったり、いがみ合ったりしているのかも、なんて。

でもほら、こちら。
互いに傾いている小屋たちです。ズレをお互いに理解し合えば人もこうして仲良く寄り添えるかもしれませんね。

傾きながらも寄り添い合う小屋

いや、話をちょっときれいにまとめ過ぎたかな、これは。
え、わたしの傾き方ですか?んーこんな感じです。

ひっくり返っている小屋

って、それは傾いているんじゃなくて、ひっくり返ってるんだって!!
あれ、まさかさかさま?
お後がよろしいようで。

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