予算設定は?ローン返済方法は?「家づくりの資金」をわかりやすく解説

今回アドバイスしてくれるのは、ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さん
家を建てるとき、買うとき、なんといっても悩ましいのは予算のこと。
「いくらの家を建てられるか」「住宅ローンはどのくらい借りられるか」「ローンの返済額はどう設定したらいいのか」など、様々な疑問が噴出します。
そこで今回は「家づくりにかかるお金のこと」をファイナンシャルプランナーで、節約アドバイザーでもある丸山晴美さんにアドバイスしてもらいました。
現在家づくりを検討している30代夫婦と子ども一人の3人家族が今回の主人公。
夫・住男(38歳)、妻・まい(30歳)は、長男・の小学校入学を前に念願の家づくりを決意しました。
最近では顔を合わせれば、話題は家づくりのことばかり。
そんなお悩みに応える、丸山さんのアドバイスが彼らに届けばいいのですが。
POINT1 予算組みは無理なく返せる金額を見極めること

cora/PIXTA(ピクスタ)
住宅を取得するときに、理想の間取りや仕様を先に決めてから、その費用を予算とするのは危険です。
家にかかる費用から資金計画をスタートするというのは一見当たり前のように思えるかもしれませんが、ポイントは自分で準備できる金額と余裕をもって返せる住宅ローンを計算し、そこから逆算して予算を考えること。
この先のライフプランも考慮しつつ、長いスパンで計画を立ててください。
住宅ローンは、1年の返済額を年収の25%以内にすることがひとつの目安になります。
POINT2 生活費の見直しで、家計をスリムに
資金計画を立てる際には、日常生活で今かかっているお金をまず見直すことをおすすめします。
そのためにはまず家計を固定費と変動費に分けて考えてみましょう。
固定費とは毎月一定額支出する項目で、代表的なものは住居費や公共料金、通信費、保険料、教育費、クルマの維持経費など。対する変動費は食費、医療費、交際費など。
この2つのうち、まず見直すのは固定費で、削減しても困らないものからリストアップしてみましょう。
例えば…
- 保険料の見直し
- 携帯電話のプラン変更
- 車の維持費
特に車は税金のほか、燃料代、保険代、車検代、修理代など、維持するためのコストがかかります。
最近ではカーシェアやサブスクリプションの登場で、車を所有する概念が変わってきていますから、思い切って考え方を変えてみるの方法もありますね。
POINT3 建てた後にかかるお金、貯蓄しておくお金
注意しておきたいのが、新居にかかるコストは住宅ローンだけではないということです。
特に賃貸住宅ではかからなかった様々な必要経費がかかってくるということです。
以下は住宅を維持するためにかかる主な経費。
- 固定資産税 年間数万~数十万円程度
- 火災保険料 年間十数万円程度
- 光熱費のアップ 広さや部屋数による
- 維持管理費 屋根や外壁の葺き替え、塗り替え費用や補修費用など
- 設備機器の交換費用 給湯器、コンロ、温水洗浄便座などの耐用年数はおよそ10年周期
また長期的にはリフォームの必要にも迫られます。
改修の規模にもよりますが、500万~1000万円程度の費用は覚悟しましょう。
先々の出費に備えるため、年間20万円以上は住宅の維持費用として積み立てておきたいところです。
POINT4 住宅ローンの返済方法は大きく2つ
住宅ローンの返済期間は最長35年。
しかし、定年退職年齢を60歳とした場合、25歳から住宅ローンを利用しない限り、リタイアしたあとも返済し続けることになります。
リタイア後の長い人生のためには貯蓄も必要ですし、できれば退職金は老後の資金として取っておきたいと思うもの。
住宅ローンの返済方法は大きく以下の2つ。
- 返済期間を短く設定し、早く返済を終える
- 返済期間を長く設定し、月々の返済額を抑える
借入金額4,000万円を全期間1.5%で元利均等返済で借り入れした場合
返済期間 | 20年 | 25年 | 30年 | 35年 |
---|---|---|---|---|
毎月返済額 | 193,018 | 159,974 | 138,048 | 122,473 |
総返済額 | 46,324,217 | 47,992,210 | 49,697,093 | 51,438,816 |
総利息 | 6,324,217 | 7,992,210 | 9,697,093 | 11,438,816 |
期間を短く設定すると月々の返済額が増え、それに伴い借りられる額が制限されるなどデメリットもあるものの、完済までの期間が短くなるだけでなく、利息が減るので総支払額が抑えられます。
一方、長く設定した場合、月々の支払いの負担は少ないのですが、その分利息の金額は多くなってしまいます。であれば月々の返済額を減らした分を貯蓄に回して繰り上げ返済を重ねる方法がいいと思います。
また繰り上げ返済を考えるなら、いつの時点で繰り上げを行うのかを計画しておくことも重要です。
今はネット上の様々なサイトで、ローンの返済シミュレーションができるので活用してみてください。
POINT5 家を建てる総予算は「付帯工事費」と「諸費用」を加えたもの
家づくりの予算について調べていくと、よく目にするのが「坪単価」という言葉。
家の規模に応じて坪単価を計算すれば、建築費用の目安になると考えがちですが、実際は坪単価以上に費用がかかることがほとんどです。
「坪単価」とは建物の「本体価格」を延床面積の坪数(一般的には一坪3.3㎡)で割ったもの。
「本体価格」+「付帯工事費」+「諸費用」=住宅工事費の総額となります。
- 本体価格 基礎から屋根までの家自体の建築工事費のこと
- 付帯工事費 敷地の造成費、設備やインテリア、エクステリアなどにかかる費用
- 諸費用 住宅ローンの手続きや登記にかかる費用、手数料や印紙代なども含む
予算を立てるときには、これらの費用を想定することもお忘れなく。
POINT6 予算決めと同時に、住みたい家のイメージを広げておきましょう
予算が決まれば、工務店やハウスメーカー、あるいは設計事務所に予算と間取りなどの希望を伝えることができます。各社ともに予算を考慮しながら、その人に合ったプランを提案してくれるでしょう。
しかしその前に自分の求める家の広さや間取りを自分たちで考えておくことも大切です。
そもそも現在暮らしている家のどこに不満があって新居を計画したのか、家づくりでいちばん大切なポイントはなんなのかなどを考えていけば、自分たちが住みたいのはどんな家なのかを見極めるきっかけにもなります。
リビングやダイニング、子ども室や収納、一つひとつをリストアップして、現状からどう変えたいか、どのくらいの広さが必要かなどについて考え、そのイメージを設計・施工者に伝えるといいでしょう。
POINT7 土地を探している場合、建築業者に頼むとメリットがある
新居を計画する場合、土地から探さなければならない方も多いでしょう。
土地を探す場合、不動産業者に希望のエリアや予算、駅からの距離や日当たりなどの条件を伝え、それに合った土地を探してもらうのが一般的です。
しかし依頼するハウスメーカーや工務店など、建築業者が決まっている場合は、土地探しから相談するという方法があります。
そのような業者はたいてい不動産ネットワークに長けているうえ、自社で不動産部門を持っていることもあり、市場に出る前の土地を紹介してくれるケースもあるからです。
その場合、以下に挙げるような資金面でのメリットを得られる可能性が高くなります。
- 総予算の範囲内で建物と敷地にかける予算をうまく配分して、提案してくれる。
- 場合によっては、業者が提携する金利の低いローンを利用できることがある。
- その場合、土地と建物の代金を一括してローンに参入してくれるため、手続きがシンプルになる。
- さらには仲介手数料などを軽減してくれるケースもある。
もしハウスメーカーや工務店で家を建てることが決まっていて、同時に土地も探しているなら、相談してみるといいかもしれません。
POINT8 住宅ローン返済で大切なことは、長いスパンで考えること
住宅ローンの月々の返済額を設定するときに、現在支払っている家賃を基準にする人は多いようです。
「今支払える家賃相当額なら、なんとかやっていけるはず」と考えるのも無理はありませんが、実はここに落とし穴が。
先に述べたように、戸建て住宅では賃貸ではかからなかった税金や維持費がかかるうえ、年を経るにつれて子どもの教育費もかかるようになります。
借入金額が大きい住宅ローンは返済期間も長いため、ライフプランをよく考え、どの年代でどのくらいの支出が生じるのかを、想定しておくことがとても重要になってきます。
状況次第では想定外の大きな負担になる場合があるのです。
また、これからの不安定な時代、企業の業績変動で収入が減ることも考えられます。
住宅ローンは借入額の50%までボーナス払いが可能となりますが、ボーナスは貯蓄に充てて、繰り上げ返済に使うなどの使い方をしたほうが賢明かもしれませんね。
実際には時代ごとの経済状況に応じて、私たちの家計も変わってきます。
それを見越したうえで、安心できる家づくり予算を組みたいもの。
今回ご紹介した家づくりにかかわるお金の話を参考に、手堅い家づくりをしてくださいね。
監修/丸山晴美
キャラクターイラスト/キタダイマユ
※情報は「住まいの設計2020年6月号」掲載時のものです