介護リフォームは突然に!手すりはどこに設置?費用や補助金の手続きは?
昨年、建売住宅を購入し、後期高齢者である75歳の義理の母との同居生活をスタートしたという日刊住まいライターのあわみさん。新居での母の転倒事故をきっかけに、急きょ介護リフォームをすることになったそうです。あわみさんは2級福祉住環境コーディネーターの資格を持ち、特別養護老人ホームで介護スタッフとして働いています。
「原因は手すりが圧倒的に少なかったからだと思います。介護用手すりをレンタルにするか、手すりの取り付け工事をするか迷いましたが、この先自分たちも使うことを想定して、取り付け工事を選びました」。どのようにして工事の内容を決めたのか、費用はどれくらいかかったのか、補助金を受けるにはどんな手続きが必要なのか、など具体的なプロセスや設置してみての感想などについて詳しく語ります。
家の中に手すりが少ないことがケガの原因に?
新居での暮らしが始まってから、母はよく歩いて散歩や買い物に出かける活発な生活を送っていましたが、ある日、玄関ポーチの階段で転倒し、利き手の手首を骨折してしまいました。
階段は2段しかありませんでしたが、タイルの模様によって段差がわからなくなり、つかむ場所もなく顔から倒れ込んでしまったとのこと。
もともと骨粗しょう症や白内障などで治療を続けている母ですが、背中も少しずつ曲がってきており、足元に一層の注意が必要だなと感じていた矢先の出来事でした。
筆者の住まいは、新築の建売住宅です。手すりは必要最低限(屋内階段の片側のみ)のものしかついていませんでした。今回のケガは手すりが少なかったことが大きな原因と考え、後期高齢者となった母のケアプランと介護リフォームについて、話を進めていくことにしました。
5か所に手すりの取り付け工事を行うことに
後期高齢者にあたる75歳の母は、これから介護保険制度によるサービスも必要になってくると見越し、母、夫と相談の上、要介護認定を受けることに決めました。
要支援・要介護度が決まると、その程度に応じて、市区町村からさまざまなサービスを受けられるようになります。その一環として、住宅改修工事の補助を受けるため、まずは区役所の高齢者支援の窓口へ電話で問い合わせました。
後日、電話で案内してもらった必要書類を区役所の窓口へ持参して詳しい説明を受けるとともに、要介護認定の認定調査を受けるための申請を済ませました。
認定調査の「申請日」から、要介護度の決定を待たずに介護保険制度のサービスを受け始めることができるため、さっそく、筆者宅管轄の地域包括センターに相談し、工事に向けて具体的な話を進めていきました。サービスの利用料は、要介護度が決定した後に精算します。
すぐに地域包括センターのスタッフとの面談の日が決定し、同時に福祉用具販売の営業担当も現場を見に来てくれました。現在の母と自宅の状態を見てもらいながら、工事内容を決めていきます。
ケガ当時の母の状態
- 利き手の手首骨折(ヒビ)のため、日常生活が不便
- ゆっくりであれば、坂道や階段も杖なしで歩ける
- 事故前、手すりがない場所での姿勢変更の際は、壁に手を付いていた
- 骨粗しょう症と白内障があるものの、注意することで日常生活を送ることができていた
自宅の状態
- 部屋ごとの段差はなく、屋内階段の手すりはある
- 屋外階段や、玄関の上がり框、浴室内などの姿勢変更が必要な部分に手すりがない
転倒の原因
- 身体の支えとなる手すりがない
- 床タイルの目地で段差を見誤った
以上を確認の上、5か所に手すりの取り付け工事を行うことになりました。
補助を受けることで工事費は1割負担の1万5900円に
手すりの取り付け工事にかかった費用は、合計で15万9000円でしたが、介護保険サービスの補助を受けることができたので、1割負担の1万5900円で済みました。工事は、半日ほどで終了しました。
介護保険サービスを利用する場合、工事の許可が下りるまで2~3週間ほどかかるため、その間、転倒した玄関ポーチには、置き型手すりをレンタルして設置しました。レンタル費用も1割負担で、1か月間のレンタルで950円ほどでした。
手すりを設置した箇所を順番にご紹介します。
玄関ポーチに外用手すり
こちらは改修前の玄関ポーチ。
外用手すりをつけたので、上り下りがしやすくなりました。
玄関上がり框にL型手すり
こちらは改修前の玄関上がり框。
L型の手すりをつけたので、段差があっても出入りしやすくなりました。
浴室の出入り口に縦型手すり
こちらは改修前の浴室の出入り口。
縦型の手すりを付けたことで、浴室への出入りがしやすくなりました。
浴槽横に横型手すり&浴槽の出入り場所にL型手すり
こちらは改修前の浴槽です。
浴槽横に横型手すりを、浴槽の出入り場所にL型手すりを付けたことで入浴しやすくなりました。
いろいろな立場の人が関わるから報告・連絡・相談が大切
介護リフォームを決意してから補助を受けるまで、区役所の窓口へ行ったのは1度だけ。そこまで大変さは感じませんでした。
ただ、要介護認定や工事の申請など、日数のかかる手続きが必要となったため、長かったなという印象があります。
また、関わる方の人数が多かったため、母の代わりに訪問や電話のやりとりをすることが多く、報告・連絡・相談をきちんとすることを意識しました。
工事の条件の確認や、区役所への工事の申請と完了報告など、難しい部分はすべて業者の方がしてくれたので、悩むことはほとんどなかったです。
関わる方がみなさんとても優しく、「暮らしやすくサポートしよう」という気持ちが伝わってきたので、安心してお任せできました。おもに関わったのは以下の方たちです、
- 区役所の福祉課の方
- 要介護度の認定調査員
- 地域包括センターのスタッフ
- 福祉用具販売会社の営業担当
- 福祉用具販売会社の工事担当
中でも、福祉用具販売会社の営業担当の方には大変お世話になりました。
介護リフォームの全体の流れをはじめ、現場の状態、母の状態、申請手続きや費用面、工事に取り掛かるまでの福祉用具のレンタルや、今後必要になりそうな福祉用具についてなど、いろいろと相談に乗ってくれました。
区役所に問い合わせをして工事完了報告するまでの期間は約2か月
工事に関わる手続きは、福祉用具販売会社の方々が、直接区役所の方とやり取りを行ってくれました。結果や通知は筆者宅に届くので、随時連絡して手続きを進めてもらいました。工事完了までの流れは以下となります。かかった期間は約2か月ほどです。
- 区役所の高齢者支援窓口に電話で問い合わせ
- 高齢者支援窓口にて要介護認定の申請手続きを行う
- 地域包括支援センターへサービスの利用を申し込む
- 地域包括支援センターの職員と福祉用具販売員の初回訪問
- 自宅で要介護認定調査の実施
- 置き型手すりの設置・詳しい工事の計画と見積依頼
- 見積内容の承認・区役所への住宅改修工事申請の手続き依頼
- 区役所から工事申請の許可・工事の依頼
- レンタル品の撤収・着工・区役所への完了報告の依頼
- 要介護認定の結果の通知
- 認定結果の負担割合による支払金額の精算・集金
- 区役所へ工事完了報告
リフォーム後も玄関で母が転倒。手すりのおかげで助かった
母は計画当初、お年寄り扱いされているのが不本意なようにも見えました。でも、リフォーム後、完成した手すりに触れながら、「怖かったけど、これで安心!」と玄関前の階段を上り下りしてくれました。
ほかの箇所についても「あると使うわね、使うということは、本当は必要としてたのよ。便利!」と嬉しそうに言ってくれたので、思い切ってリフォームしてよかったと思いました。
実は工事の後も、母が玄関ポーチの階段で足を踏み外してしまったのですが、手すりを握っていたおかげで大事には至りませんでした。
タイルの目地で段鼻を見誤って踏み外してしまったので、それ以降は階段マットを敷いています。
手すりを付けたことで油断せず、歩きやすい足元に整えておくことも重要だ気づかされました。今後も家族みんなが安全に暮らせる環境づくりをしていきたいと思っています。
●教えてくれた人/あわみさん
2級福祉住環境コーディネーター。現在は特別養護老人ホームで介護スタッフとして働いている