体験レポート&リサーチ

Sumai編集部

愛おしい刺繍の世界へようこそ。遼河はるひさんがアトリエへ訪問

遼河はるひさんとatsumiさん

宝塚歌劇団の男役として人気を博し、退団後は女優、タレントとして幅広く活躍する遼河はるひさん。じつはインテリアが大好きです。

そんな遼河さんが、今注目の女性クリエイターの仕事場を訪問しました。今回は刺繍作家、atsumiさんのアトリエです。遼河さん曰く、宝塚と刺繍には、なにやら深い関わりがあるそうで…。知るほどに愛おしくなる刺繍の世界。あなたもハマってしまうかも。

オーダーを受けて刺繍。アクセサリーなども制作

談笑する遼河はるひさんとatsumiさん

遼河:私、こう見えてすっごく手芸好きで、小学生のときはマスコットクラブだったんです(笑)。中学校では手芸で動物の絵本をつくり、高得点を得たことも。家庭科は得意で、「5」しか取ったことがないんです! だから、とってもワクワクしています。今はどんな作品を制作しているのですか?

atsumi:自宅を新築された方からオーダーをいただき、苗字を刺繍しています。インスタグラムに載せている、アルファベットを一文字ずつ刺繍したものをベースに、お好きな色などを聞いてデザインしました。それと、イベントなどの際に販売していたポーチやアクセサリーなどの小物を、ネットショップで販売しようかなと思って少しずつ制作しています。

遼河:ずっと刺繍をしていると肩がこったりしませんか?

atsumi:肩こり防止のために、肘が固定できる肘掛けのある椅子を使ったり、週1回ピラティスに行ったり、寝る前にはストレッチポールなどを使ったりして、翌日に疲れを残さないように気をつけています。それと、ひとりで作業をしていると時間の感覚がなくなってしまうので、なるべく決まった時間に食事を取るよう心がけています。

パテの缶を利用したピンクッション

友人がフランス土産にくれたパテの缶を利用したピンクッション。針は多めに出すが、必ず数えてなくさないよう気をつけているそう。

階段には近著『刺繍博物図』に掲載されている作品が並ぶ

アトリエはメゾネットタイプ。階段にはatsumiさんの近著『刺繍博物図』に掲載されている作品が並んでいます。額装は工房イサドの本田淳さんが担当。

パウル・クレーなどatsumiさんの作品のインスピレーションのもとになった本

大好きだというパウル・クレーの本をはじめ、昆虫の本やエンブレムの本など、atsumiさんの作品のインスピレーションのもとになった本は、どれも個性的。

古本などから生まれる独特のゆる~い世界観

作品のモチーフが心臓など、とてもユニーク

遼河:このアトリエには様々な作品が飾られていますが、よく見るとモチーフがちょっとユニークですよね。植物や昆虫は分かるとして、心臓とか…。このがま口にはおじさんの顔(笑)。ただかわいいだけじゃなくて…。

atsumi:ちょっとグロいとキレイの境界線みたいなところが好きなんです。

遼河:ちょっとグロい系、私も好きです。虫もけっこう好きで、触るのも全然平気だし…趣味が合うかも(笑)。作品をつくるときに、アイデアのもとになっているものはあるんですか?

atsumi:古本屋さんに行くのが趣味で、とくに海外の図鑑などが好きです。私の最初の著書『刺繍のエンブレム』も、いろんなエンブレムが載っている海外の本から刺激を受けて生まれました。最近のお気に入りは、パペットの本。いつか人形をつくりたいと思っていて、以前から欲しかったのですが、やっと古本屋で見つけました。ちょっとゆるい感じも好きですね。暮らしに根づいた内容の本は、アイデアが固まらないときなどに参考にしています。

誰でも気軽に楽しめるのが魅力。キットもおすすめ

様々なサイズの刺繍枠と刺繍する布

作品の大きさに合わせて使い分けられるよう、様々なサイズの刺繍枠が揃っています。刺繍する布も、大小様々なものを用意。

遼河:atsumiさんが刺繍を始めたきっかけはなんだったのですか?

atsumi:母が洋裁も編み物もひととおりやる人で、小さい頃は身の回りのものをいろいろ手づくりしてもらいました。そんな環境で育ったので手仕事が身近で、刺繍なら材料も簡単に手に入るので気軽に始めた感じです。刺繍って、道具も基本的には昔から変わらなくて、ワークショップに来てくださる方も年齢層が幅広いんですよ。ところではるひさんは、どうして宝塚に?

遼河:高校1年のときに、地元・名古屋で宝塚の公演を観たのがきっかけです。もともと歌は好きでしたけど、バレエはやったことがなかったし、そこから猛勉強しました。

atsumi:男役か女役かは自分で決めるんですか?

遼河:そうなんです。メイクも自分でするのですが、もともと手先は器用なのでメイクも得意でした。男役メイクは、もとの顔が地味なほうがガラッと印象が変わって面白かったりするんです。ただ、男役になってからは、手芸は一気にやらなくなりました(笑)。女役さんは自分でヘアアクセをつくったりしますが、男役は必要ないので。でも、時間ができたらまたやりたいです。

atsumi:例えば、私はバッグなどに図案をプリントしたオリジナルのキットをイベントや個展などで販売しているのですが、キットを使って気軽に始めてみるのもおすすめですよ。

atsumiさんの愛読書が収められた玄関のラック

刺繍の際に参考にする本など、atsumiさんの愛読書が収められた玄関のラック。うさぎの置き物は、友人がアメリカの蚤の市で買ってきてくれたもの。

地元トークでも盛り上がる遼河はるひさんとatsumiさん

幼稚園の頃に名古屋に引っ越したというatsumiさん。名古屋出身の遼河さんとは、実家に帰ったら必ず行く台湾料理店の話など、地元トークでも盛り上がりました。

著書『刺繍博物図』の表紙「海の植物」

著書『刺繍博物図』の表紙を飾った「海の植物」。博物図を見て刺繍で忠実に再現したもので、水の中を漂う植物の美しさを素直に表現したという会心の作品。

古い糸巻きといただきものの小物入れ

海外旅行などの際、蚤の市で古い糸巻きなどを見つけてくるというatsumiさん。中央の小物入れはいただきもので、使いかけの糸を入れるのに使っています。

(左)玄関扉に飾られた作品(右)苗字の刺繍

(左)アトリエに来た人への感謝を込め、玄関扉に飾られた作品には「Thank you for coming」の文字を刺繍。(右)新居のためにオーダーされたという苗字の刺繍。

atsumiさんオリジナルのトライアングルピアス

「これ、かわいい。今日の洋服に合うかな」と、atsumiさんオリジナルのトライアングルピアスを手に取る遼河さん。立体感のある独特のフォルムが個性的。

楽屋襦袢にスカジャン。意外と身近な刺繍

遼河:宝塚では楽屋襦袢というのがあって、楽屋で着る着物用の肌着なんですが、その楽屋襦袢に刺繍をして、退団する人に贈ったりするんです。その人のことを想ってデザインを考えたりして。今話していて思い出しました!

atsumi:心がこもっていて素敵ですね。

遼河:そうなんです。気持ちが伝わるし、プレゼントされるとうれしい。そういうこともあって、退団してから趣味で刺繍を楽しんでいる人も多いみたいです。それと、刺繍といえば私、スカジャンを持っています。背中に富士山と桜が刺繍されたオシャレなスカジャンで、春先に着ると、気分も上がります。

atsumi:刺繍って、意外と身の回りにたくさんあるんです。民族衣装などもそうですが、海外に行ったときも刺繍が施された作品を目にする機会が多く、刺繍は世界中にある、と実感します。時間をかけてつくったものって愛おしいし、そういう時間が少しでも持てると気持ちも潤うので、ぜひ試してほしいですね。

atsumiさんの作品をチェック!

atsumiさんの作品「おじさんの顔付きのユニークながま口」「立体感のあるエンブレム」「トライアングルピアス」

個展を開催するほか、企業とのコラボレーションや素材提供など、刺繍をベースとして幅広く活動するatsumiさん。一方で、身近に楽しめる小物なども制作しています。遼河さんも気になった、おじさんの顔付きのユニークながま口(写真左)の裏には、「アダム」「ギルバート」など、おじさんの名前が刺繍されています。

写真中央は、ブローチとしても楽しめる立体感のあるエンブレム。トライアングルピアス(写真右)は、片方だけ着けたり、キーホルダーとして使ったりすることもできる独創的なアクセサリー。これらは近々ネットショップでの販売も予定しているそう。

刺繍しなくてもかわいいキット

(左)キノコモチーフがプリントされたトートバッグ、(右)右はハチの下絵をプリントしたがま口

初心者でも気軽に刺繍を楽しめるキットを用意し、個展やワークショップなどで販売しているatsumiさん。バッグやがま口などに図案がプリントされていて、塗り絵をするような感覚で、自由に刺繍を楽しむことができます。

写真左は、キノコモチーフがプリントされたトートバッグで、右はハチの下絵をプリントしたがま口。「図案を写す手間が省けるので、気軽に楽しんでいただけると思います。刺繍が苦手な方は、プリントのまま使っていただいてもOKです(笑)」とatsumiさん。「かわいい! プリントのままの部分と刺繍した部分が交ざっていてもいいですね」と遼河さんも絶賛。

遼河はるひさん

「かわいい刺繍がたくさんあって、手芸好きの血が騒ぎました!」(遼河さん)。

●遼河はるひさん
宝塚歌劇団の男役として人気を博し、退団後は女優、タレントとして幅広く活躍。2019年、サッカー選手(現在はコーチ)と結婚。『突撃! 隣のスゴイ家』(BSテレ東)に出演中

●atsumiさん
多摩美術大学卒業後、アパレルメーカーや同大学職員を経て刺繍作家として活動を開始。個展やワークショップ、広告や書籍への作品提供などを行う。著書に『刺繍博物図』など

撮影/林 紘輝 ※情報は「リライフプラスvol.37」取材時のものです