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シェアハウスを毛嫌いするご近所さんと、ひょんなことから親しくなったら大変だった

電話を貸してくれるようFさんに懇願する吉井さん

「私が住んでいたシェアハウスの隣に住むFさんという女性は、とにかくシェアハウスの存在が気に入らないようでした。入居者を見かけると、小さなことでもすぐクレームをつけてくるんです」

こう話すのは、シェアハウスにしばらく暮らしていたという不動産コラムニスト・吉井希宥美さん。

シェアハウスは入居者が頻繁に入れ替わることもあり、Fさんはなんとなく「胡散臭い」と思っていたようです。そんなFさんにひょんなことから借りをつくり、親しくなったという吉井さん。でも、次第にシェアハウスについてのクレームを言ってくるようになり、とても困ったことに…。

誰もいない平日の日中、シェアハウスから閉め出された!

シェアハウスの隣に住むFさんは未亡人。ご主人に先立たれ、一戸建ての家にひとりで住んでいました。引っ越しの際、顔を合わせたので挨拶をすると「シェアハウスには何人入居しているの?」「お風呂はないの?シャワーだけなの?」などと矢継ぎ早に質問してきました。

私が返事をし終わらないうちに「ここの入居者、すぐ入れ替わるから、いくら注意してもダメなのよね」と吐き捨てるように言い、バタンとドアを閉めて家の中に入ってしまいました。当然、Fさんの第一印象は最悪でした。

ある日、平日に休みを取ったときのことです。シェアメイトは全員出勤し、シェアハウスにいるのは私ひとり。仕事をしなくていい上に、誰もいないので、開放的な気分になりました。

梅雨明けしたばかりで朝から日差しが照り付けていたので、今日こそは布団を干そう、と布団を持って庭にある物干し場に向かいました。玄関ドアを閉めた瞬間、そのドアはオートロックだということを思い出し、顔面蒼白に。ノーメイク、髪はボサボサ、服はパジャマという哀れな姿で家から閉め出されてしまったのです。

手に持っていたのは、布団だけ。財布もスマホもシェアハウスの中です。管理会社に電話をすれば、セキュリティ会社の人が鍵を開けに来てくれることは分かっていましたが、連絡する手段がなく、途方に暮れてしまいました。日差しがノーメイクの私の肌に刺さり、全身がどんどん汗ばんできます。

Fさん宅で電話を借りて管理会社に連絡。無事室内に

どこかで電話を借り、管理会社に電話をしたいと思い、考えた末、思い付いたのがFさんのお宅。交番やコンビニなどに行くという方法もあったのかもしれませんが、先述の格好だったため、家から離れた交番やコンビニには行きたくありませんでした。

インターホンを押すと、Fさんのトーンの低い返事が聞こえ、玄関ドアを開けてくれました。事情を話すと、汚いものを見るような目でしばらく私を見つめていましたが、「いいわよ。電話、使って」と言ってくれました。

その眼差しは、明らかに私を軽蔑していましたが、とにかく電話を借りることが先決、と割り切ることに。結果、めでたくセキュリティ会社の担当者と連絡がついて鍵を開けてもらい、室内に入ることができました。

親しくなったのが仇になり、クレームを聞く役割に

翌日、菓子折りを持って挨拶に行ったとき、Fさんは穏やかな対応でした。それまではFさんにあまりいい印象を持っていませんでしたが、先入観は良くないと反省しました。

以来、Fさんは私を見かけると向こうから挨拶し、声を掛けてくれるようになりました。最初の頃は「入居者は全員女性なの?」「何人いるの?」「学生はいるの?」「キッチンとお風呂は狭いの?」などと、シェアハウスの状況について根掘り葉掘り聞いてきました。

でも、しばらくすると私にクレームを言ってくるようになりました。その内容は「シェアハウスの入居者が入れ替わったら、その都度に報告するよう管理会社に伝えてほしい」「シェアハウスのゴミがうちの敷地まではみ出している」「自転車の停め方を一列にしてほしい」などなど、自分勝手な内容が大半でした。

シェアハウス専用のゴミ置き場は、Fさんの家と反対方向にあるので、物理的にはみ出すことはないし、大家さんでもなんでもないFさんに、入居者入れ替えの報告をする義務はありません。

ほかのシェアメイトにも同じようなことを話していたらしいのですが、彼女たちはスルーして取り合ってくれないようで、私にばかり言ってくるようになりました。他の人より年齢が高めで言いやすいという理由もあったのかもしれません。

オートロックの件で助けてもらった恩があるので、Fさんに会うと「半分聞いて、半分聞き流す」スタンスを取り、なるべく角が立たないようにしていました。

退去するとき、管理会社の人から「吉井さんがいなくなると、Fさんのお相手する人ががいなくなって困る」と冗談ぽく言われました。今は誰がFさんのお相手をしているか分かりませんが、シェアハウスの平和のためにも頑張ってほしいと思っています。

●体験した人/吉井希宥美さん
宅地建物取引士、AFP、家族信託コーディネーター®、相続実務士を所持する不動産コラムニスト。不動産取引や相続相談を行いながら、執筆を手掛ける

イラスト/押本達希