お宅拝見

Sumai編集部

工事費2400万円の二世帯住宅、コストダウンのポイントは?北欧家具に囲まれた大満足の暮らし

オープンな2階LDK

コストダウンを実現した二世帯住宅を紹介します。2階部分の体積を抑えたり、1階&2階の天井高を抑えたりすることで、工事の手間を減らしました。加えて、親世帯との行き来がスムーズになるというメリットも。

こちらは、老朽化した母の実家を二世帯住宅に建て替えることになり生まれた注文住宅。限られた予算内で、少しずつ買いそろえてきたヴィンテージ家具が映える、おしゃれな住まいになっています。住まい手は、インテリアショップで家具の買いつけや販売の仕事をしている山本さん。

住まいの様子と、コストダウンに役立ったさまざまな工夫をレポートします。新しく家を建てたい、という人は必見!上の写真は、仕切りのないオープンな2階LDK。天井は最も高いところで3.3mあり、開放的です。

古い北欧家具に囲まれた理想の暮らしを実現

山本さんの家 東京都 家族構成/夫40代 妻40代 長男小学生 次男保育園児 母70代
設計・施工/古谷野工務店
本体工事費 2400万円

この家のこだわりポイント

  • お気に入りの家具が映える空間
  • ほどよい距離感の二世帯住宅
  • 土間のような広い玄関ホール
  • 余白を残し、手づくりを楽しむ庭

玄関ホール

北側の玄関と南側のテラスをつなぐ広い玄関ホール。左手に親世帯のスペースがあり、吹き抜けのホールと階段も2世帯をつないでいます。

切妻屋根の形がそのまま現れた天井

切妻屋根の形がそのまま現れた天井は、正面のいちばん低い部分が約1.9m。低めの家具を置いているので、スッキリとした印象です。リビングには、岡本太郎デザインのサイコロ椅子も。

手持ちの家具をすべて設計者に見せ、家具がきれいに見える家に

大きな屋根に包まれた、仕切りのないワンルームの2階LDKが印象的な山本さんの家。母の実家を二世帯住宅に建て替えることになったとき、「センスがよくてコスパのいいところ」(夫)を探して出会ったのが、古谷野工務店の古谷野裕一さんでした。

手持ちの家具をすべて見てもらい、「家具がきれいに見える家に」と依頼。

古谷野さんは2階の構造材の体積を抑えてコストダウンを図りつつ、家具や生活の背景となるようシンプルな仕上げに。1、2階とも天井高を抑えて、内・外装の面積を減らしつつ、1階の親世帯との行き来もスムーズにしています。

白を基調とした室内には、ハンス・J・ウェグナー、ボーエ・モーエンセン、フィン・ユールといった有名デザイナーによる家具の数々。じつにセンスよく配されています。

「最初に買ったのはウェグナーのひとり掛けのソファで、21~22歳頃。10万円でした。今も大切に使っています」(夫)

その後、仕事で北欧に家具の買いつけに行くようになり、少しずつ買い集めてきました。広い庭は、予算の都合でベースだけ造園屋さんに依頼し、少しずつ仕上げていく予定。

「家具もいっぺんにそろえるのは大変。最初に必要な部分にはしっかりお金をかけ、余白を残しておくのも手だと思います」(夫)

家具も住まいも時間をかけてつき合っていく。そんな北欧流の暮らしを実践しているようです。

この家のコストダウンのポイント

POINT 1 屋根の形をシンプルに(※POINTの数字は下の間取り図と連動)

天井の高さは場所により異なるため、空間に変化も生まれます

建物は凹凸のない長方形で、そこにゆったりとした勾配の切妻屋根をかけたシンプルな構成。天井の高さは約1.9~3.3mと場所により異なるため、空間に変化も生まれます。

POINT 2 仕切りのないオープンなつくり

2階は間仕切り壁のないシンプルな構成

2階は間仕切り壁のないシンプルな構成とすることで、下地材や仕上げ材などを減らすことができ、構造材も2割ほど抑えられているそう。同時に、開放感も実現しています。

POINT 3 建物の高さを抑えて仕上げを減らす

天井を低めにすることで階段が緩やかに

1階は2.25m、2階は約1.9~3.3mと全体に天井を低めにすることで、内外装の面積を減らすことができます。階段が緩やかになり、行き来がしやすくなるというメリットも。

POINT 4 キッチンは製作&手持ちの家具を使用

オリジナルキッチン

キッチンメーカーに依頼してオリジナルキッチンを製作。背面には、15年以上使っているという家具を配置しています。「いいものは長く使えるので、コスパは抜群」(夫)。

POINT 5 1、2階で配管の位置をそろえる

1・2階にあるキッチン

山本さんの家は二世帯住宅のため1階と2階にキッチンがありますが、上下階でキッチンを近い位置に配して配管を短くすることで、コストダウンにつなげています。

POINT 6 建具を省いてオープンに

建具を省いたオープンなつくり

1階の親世帯は寝室の建具を省略。来客時にはカーテンでサッと隠せます。2階の子ども部屋も、子どもが小さいうちは建具も間仕切りもなし。必要になったら設置する予定です。

POINT 7 バルコニーをなくして洗濯動線を短く

窓の外に物干しバーを設置

外観デザインもコストに影響するため、メンテナンス費用もかかるバルコニーをなくし、窓の外に物干しバーを設置。近くに洗濯機置き場を設けて、家事動線を短くしました。

POINT 8 床材は杉で統一

床材は杉フローリング

床材は家具と調和するオークが希望でしたが、単価を抑えられる杉フローリングに変更。「足触りがやわらかくヒヤッとしないので、杉にしてよかった。母も喜んでいます」(夫)。

POINT 9 ディテールはつくり込まずシンプルに

廊下と玄関との床の継ぎ目に用いられる横木や壁と床の継ぎ目に設置される幅木、建具周りなどのディテールはシンプル仕上げ1

廊下と玄関との床の継ぎ目に用いられる横木や壁と床の継ぎ目に設置される幅木、建具周りなどのディテールはシンプル仕上げ2

廊下と玄関との床の継ぎ目に用いられる横木や壁と床の継ぎ目に設置される幅木、建具周りなどのディテールは、できるだけ手間を省いてシンプルに仕上げています。

POINT 10 外回りでできるところはDIY

外回りはDIYで

既存のブロック塀は撤去すると費用がかかるので、現在の基準に合わせて高さをカットし、墨汁を水で溶いたものを霧吹きで吹きつけました。植物も少しずつ自分で植えていく予定。

ダイニングテーブルはオリジナル

ダイニングテーブルは、夫の要望に合わせて製作したオリジナル。天板に天然素材でありながらお手入れもしやすいリノリウムを使用し、小口に木を貼っています。

リビングからつながる子ども部屋を見たところ

リビングからつながる子ども部屋を見たところ。アリンコチェアの奥に置かれているのは、収納代わりに使っているデンマーク軍のトランク。

将来は建具と間仕切りを設置し、2部屋に分けて使う予定の子ども部屋。現在はお気に入りのインテリアを楽しむ空間に。

広い玄関ホールは吹き抜けにより1、2階を一体化/(写真右)階段から親世帯である母の居住スペースへ

(写真左)広い玄関ホールは吹き抜けにより1、2階を一体化し、2世帯をつなぐ役割をしています。テラスに出られる正面の窓からは、隣の家の庭に視線が抜けます。

(写真右)階段から親世帯である母の居住スペースへ。「ちょうどいい距離感。お互いのペースを大切にしつつ、ときどき一緒に食事をしています」(夫)。

(写真左)G-PLANのチーク材のキャビネット/(写真右)セルジュ・ムーユの照明器具

(写真左)イギリスの老舗ブランド、G-PLANのチーク材のキャビネット。古いレコードプレイヤーはバング&オルフセン。

(写真右)リビングテーブルの手前にはセルジュ・ムーユの照明器具。

(写真左)ウェグナーのソファ/(写真右)ダイニングの照明器具はイタリアのヴィンテージ

(写真左)奥が初めて買ったウェグナーのソファで、手前はその数年後に購入。「1960~’70年代製なので、すでに50年ほど経っていますが、子どもに渡したい。サスティナブルです」(夫)。

(写真右)ダイニングの照明器具はイタリアのヴィンテージ。剥離剤で塗装を落とし、無垢の鉄の感じを楽しんでいます。

(写真左)1階の洗面・浴室は2世帯共用/(写真右)シューズクローゼットを備えた玄関

(写真左)1階の洗面・浴室は2世帯共用ですが、洗濯機は2階にもあり、1階は母専用。

(写真右)右手にシューズクローゼットを備えた玄関。ほかには寝室にウォークインクローゼットがあるだけで、「収納スペースは必要最低限にしました。なにを大事にしてなにが必要でないかが整理できてよかった」と夫。

大きな窓を設けた1階LDK

南側のテラスに面して大きな窓を設けた1階LDK。もとの家より格段に明るくなり、庭にもすぐ出られるので、母はハーブを育てるなどガーデニングを楽しんでいるそう。

(写真左)東側外観/(写真右)南側外観

(写真左)東側外観。周囲の家と比べても、高さを抑えているのがわかります。窓のない外壁に、新たに植えたカツラ(右)とカマツカの葉が映えています。将来は雑木林のような庭にする予定で、造園家の蓑田真哉さんがデザイン。

(写真右)広いテラスのある南側外観。「デッキをやめてコストダウン。メンテナンス費用もかかるので」と夫。食事をしたり、子どもとプール遊びをしたり、パーティをしたりと、いろいろ画策中。

間取図

山本邸の間取図

DATA

敷地面積/175.82㎡(53.28坪)
延床面積/113.15㎡(34.29坪)
1階/57.97㎡(17.57坪)
2階/55.18㎡(16.72坪)
用途地域/第1種中高層住居専用地域
建ぺい率/60%
容積率/160%
構造/木造軸組工法
竣工/2020年9月
本体工事費計/2400万円
3.3㎡単価/69.5万円

素材

[外部仕上げ]
屋根/ガルバリウム鋼板縦平葺き
外壁/窯業系サイディング
[内部仕上げ]
1階 床/杉、タイル
壁・天井/ビニールクロス
2階 床/杉
壁・天井/ビニールクロス

設備

厨房機器/オリジナル(田中工藝)
衛生機器/パナソニック
窓・サッシ/LIXIL

設計・施工/古谷野工務店
1887(明治10)年の創業以来、地域の工務店として地元に貢献。現在は自社設計・施工による戸建てやマンション、店舗の新築やリノベーションを幅広く手掛けており、丁寧な仕事ぶりに定評がある

撮影/松井 進 ※情報は「住まいの設計2021年6月号」取材時のものです