お宅拝見 暮らし

Sumai編集部

古書店みたいな玄関ライブラリーに肩幅ほどの書斎…本好きにはたまらない戸建て事例

玄関ホールからの眺め

玄関を開けると、いきなり両脇に天井までの高さがある本棚が迎えてくれるUさんの住まい。書棚の奥には、コクピットみたいなコンパクトな書斎が隠れています。いちばん奥に見えるのが洗濯・浴室への入り口。

視線を妨げるものがないので、面積のわりに開放感がある住宅。玄関からいちばん奥の洗濯コーナーまで一直線に見渡せる間取りに、使いやすさと居心地のよさの工夫の数々が込められています。

空間をつなげて、使いやすさと広がりを実現

Uさんの家 千葉県 家族構成/夫60代、妻60代、長女30代
設計/studio IrodorI建築設計事務所

《この家のこだわりポイント》

  1. 玄関ホールは夫の書斎兼ライブラリー
  2. 振り返れば食器をしまえるキッチン
  3. ほどよい距離感のリビングとダイニング
  4. 短い洗濯動線と家事コーナーを兼ねる洗面台

常に家族の気配が感じられる住まい

長女の居室を除けばすべての空間が緩やかにつながっているので、常に家族の気配が感じられます。

図書館のような玄関ホールとコンパクトな家事動線

玄関ドアを開けた瞬間、図書館のような書棚に圧倒されるUさんの家。よく見ると、いちばん奥にある洗濯機まで見通せるコンパクトな間取りなのに、開放感と広がりが感じられます。

「建て替え前とは比べものにならないくらい執筆の仕事が進むんですよ」とは仏教思想研究家の夫。以前は食卓が仕事場と化し、資料と原稿の隙間で食事を取ることもあったのだとか。今は機能的な書斎によって仕事と生活の場が分けられ、暮らしの質が驚くほど上がったといいます。

「夫の仕事中にもテレビを観てくつろげるし、なにより手の届く範囲で家事が完結するなんて夢のよう」と妻も絶賛。家じゅうに行き届いた効率のよさは、玄関脇のコクピットのような書斎と同じコンセプトが空間のすべてに貫かれているからです。

間取りは玄関から順にリビング、ダイニングキッチン、和室と洗面、脱衣室と浴室などの10の空間が立体的に配置され、その中心を廊下のように用いて左右に機能が振り分けられていることも特徴的。また、床や天井高に変化をつけたのも、この家を設計した一色ヒロタカさんの工夫。

「変化をつけた小さな空間をつなげることで広がりを感じてもらえるようにしました。玄関から一直線に視線が通るのも、そうした仕掛けのひとつです」(一色さん)

「生活のストレスがないので、仕事も家族の関係もうまくいっているんだと実感しています」という夫の言葉が、大成功の家づくりを物語っています。

書斎兼ライブラリーの玄関ホール

床材の色合いや天井高、材質などを切り替えて緩やかに空間が仕切られている

床材の色合いや天井高、材質などを切り替えて緩やかに空間が仕切られていることがわかります。建物の中央を通路のようにあけたのも、空間の機能を切り替えながら開放感を演出するための工夫です。

飛行機のコクピットのような夫の書斎

夫の肩幅+αほどの小さな間口。飛行機のコクピットのような書斎です。「以前の家では床に積み上がった本を捜すのが大変でした。ここは手を伸ばせば資料が取れるので効率的に執筆できます」(夫)。

玄関ライブラリー

アカデミックな古書店かと見まがう玄関ライブラリー。「地域の人にも開いたライブラリーとしても活用してもらえます」と設計者の一色さん。

書棚をくぐるように設けられた書斎

書棚をくぐるように設けられた入口の向こうが書斎空間。夫の専門分野である仏教思想の研究書がびっしり並ぶ書棚は圧巻です。

配膳も片づけも手の届く距離にあるからラク!

使い勝手のよいダイニングキッチン

キッチンとダイニングテーブルはとても近くに配置されています。「配膳も後片づけもすぐにできるし、吹き抜けのダイニングは広々していて気持ちがいいですよ」と妻が絶賛する空間です。

キッチンの背面には食器棚を設置

振り返れば食器棚があるので、キッチンは常に整頓されています。「建て替え前は食器棚が遠くて片づけるのもひと苦労でした」(妻)。

家事コーナー兼ドレッサーの洗面がお気に入り

洗面、浴室などの水回り

玄関から見ていちばん奥にあるのが洗面、浴室などの水回り。浴室入り口に設置された洗濯機から屋外の物干しまでの距離も至近。傾斜した敷地との高低差から、ステップを介して出入りします。

吹き抜けからダイニングを見下ろしたところ

吹き抜け空間の上から見ると、ダイニングと洗面の位置関係がよくわかります。洗面台は少し延長して机のようなしつらえに。ここはドレッサー兼家事コーナーとして使う妻と長女のお気に入りの場所でもあります。

洗面は北側の和室と空間を兼用

洗面は北側の和室と空間を兼用しているので、広々とした雰囲気に。

客間として使われる和室

客間として使われる和室は、執筆の合間に夫が横になって頭を休めることも多いのだそう。

ピアノに向き合うことで仕事のモチベーションもアップ

長女の居室

玄関の上にある長女の居室。アーチ型の出入り口から見えるグランドピアノは、脚を外してダイニングの吹き抜けにつり上げ、正面の扉から搬入したのだそう。部屋の形や扉は搬入路も念頭に入れて設計されています。

準防音仕様の演奏室

演奏室は吸音材を用いた準防音仕様。家の外にはピアノの音が漏れません。

壁面に施されたヘリンボーンの壁材と玄関のテラコッタタイル

トイレが隠れる階段下。壁面に施されたヘリンボーンの壁材と玄関のテラコッタタイルは、工務店の余剰分を用いてコストダウンを図っています。

書棚には夫の著作がずらりと並ぶ

北側の書棚には夫の著作がずらりと並びます。『サーカスの少女』は小説にチャレンジした意欲作。「建て替え前は、冬が寒くて夜の執筆がつらかったのですが、この家になってからは暖かく筆も進みます。ここではもう10冊以上本を書いたんじゃないかな(笑)」(夫)

夫がダイニングで仕事をしても問題なし

ダイニングテーブルの一角で仕事をすることも

今でも原稿のチェックなど、書斎スペースが手狭なときにはダイニングテーブルの一角で仕事をすることもあるのだそう。「建て替え前には妻や娘に気を使わせていたのですが、この家を建ててからはそれぞれがのびのび過ごせるようになりました。それがいちばんうれしい」(夫)。

2階のフリールーム

2階のフリールームはダイニングの吹き抜けに面していて、コロナ禍では長女がリモートワークに活用しています。

寝室として使われている2階の和室

寝室として使われている2階の和室。奥の扉はクロゼットの入り口です。

Uさん邸外観

里山の豊かな緑を背負うUさんの住まい。「開口部が少なく見えるので来客が中の明るさにビックリするんですよ」(夫)。

間取り図

Uさん邸の間取り

DATA

敷地面積/91.26㎡(27.65坪)
延床面積/80.33㎡(24.34坪)
用途地域/第1種低層住居専用地域
建ぺい率/50%
容積率/100%
構造/木造軸組工法
竣工/2017年7月

素材

[外部仕上げ]
屋根/シート防水
外壁/吹き付け塗装
[内部仕上げ]
1階 床/パイン、
コンクリートブロック、畳、磁器質タイル
壁/クロス
天井/クロス
2階 床/パイン、フレキシブルボード、畳、カーペット
壁/クロス
天井/クロス

設備

厨房機器/オリジナル
衛生機器/サンワカンパニー
窓・サッシ/オリジナル

施工/小川共立建設
設計/一色ヒロタカ+studio IrodorI 建築設計事務所

撮影/中村風詩人 ※情報は「住まいの設計2021年8月号」取材時のものです