家づくり

Sumai編集部

街中でも小さな家でも、心地よい緑を取り入れるには?プラン、窓、敷地選びについて解説

大屋根が印象的な家と呉屋さん親子

家で過ごす時間が増えている今、「在宅していても自然を感じたい」という声が高まっています。この流れを意識した家づくりも行われるように。

敷地が自然に恵まれていなければ実現できない、と諦める必要はありません。公園の借景を利用したり、敷地の庭の様子を取り入れたり。生活にグリーンを取り込む方法は、じつはいろいろあります。家づくりの計画の際には、ぜひ、専門家と一緒に検討してみましょう。

気軽に緑を楽しめる家づくりのテクニックを紹介。一級建築士の山縣洋さんが12個の項目について解説します。

1. 景色を切り取る窓を設ける

はめ殺し窓は緑を眺めるために有効

住まいに緑を取り込む方法として、まず考えられるのが窓を設けて外が見えるようにすること。窓にはさまざまなタイプがありますが、緑を眺めるために有効なのが、はめ殺し窓です。

窓といっても風を通したり出入りしたりはできませんが、視覚的には外とつながりますし、サッシの桟が邪魔しないので、景色を楽しむには効果的。

この写真のように、緑あふれる美しい景色を大きく切り取り、絵画のように楽しむことができます。

2. 見たいもの、見たくないものによって窓の位置を決める

窓を設ける際は目線の高さを意識する

窓を設ける際は、見たい景色と見たくない景色をどう切り取るかがポイント。目線の高さを意識することが必要です。

たとえば、和風建築に多く見られる地窓。床から1mの窓を設定すると、畳に座ったときの目線の高さになり、立っているときはあまり美しくない景色でも、下の部分だけを切り取ることができます。

また、床から1m60㎝より上に窓を設ければ、目線より高いので自然と見上げる形になり、空や樹木の上の部分だけを眺められます。

3. 窓の目的に合わせてサッシを選ぶ

はめ殺しと片開きサッシの組み合わせ

景色を楽しむ場合ははめ殺し窓を選びますが、テラスなどに出入りしたり風を通したりしたい場合には、はめ殺しと片開きサッシを組み合わせると、緑を楽しみつつ出入りもできます。フォールディングサッシなどの全開放できるタイプもあります。

外側に窓がせり出す横すべり出し窓

水回りなどには、外側に窓がせり出す横すべり出し窓が有効。デザイン的にすっきりしているので、風を通しつつ、建物にも違和感なくなじみます。

4. 中間領域をつくって内と外とをつなげる

庇を深く出し、ウッドデッキを設置

昔の日本の住宅では、縁側があったり障子でやんわり仕切ったりと、建物の内側と外側があいまいにつながっていました。現代の建築においても、この「中間領域」と呼ばれるあいまいな空間をつくることで、内と外をつなげて緑を楽しむことが可能。

中間領域のつくり方としては、写真のように庇を深く出し、ウッドデッキを設置するなどの方法があります。中と外をより自然につなげるには、室内の床と外の床のレベルをそろえることも重要なポイント。

5. 玄関や浴室からも緑を楽しむ

視線を上げると緑と空が見えて開放的な玄関

緑の眺めを重視する場所としては、やはり滞在時間の長いLDKを中心に考えるのが一般的ですが、おすすめの場所は、玄関やバスルーム。写真は玄関を入ったところで、視線を上げると空と木が見え、とても開放的です。

浴室から緑を楽しむ

バスルームの場合はのぞかれないようにするため小さい坪庭をつくることが多いです。

バスルームにウッドデッキを設ける

ただし、環境が整えばウッドデッキを設けて外に出られるようにすることもできます。

6. 目線の高さの違いによる風景の変化を意識する

2階の窓から見える庭

緑の見え方は、どこから見るかによって大きく変わってくるので、断面で考えることも大切です。たとえば、上の写真は2階の窓から見える庭で、同じ庭を1階から見たのが、下の写真です。

1階の窓から見た庭

2階は光を浴びた緑の葉が生い茂っていますが、1階は葉が少なく光も遮られています。これが樹木の面白さで、視点が変わると同じ庭とは思えないくらい風景が違って見えますから、それを意識して間取りや窓の位置を考えていく必要があります。

7. 公園や緑地などに面した土地を選ぶ

緑が見える土地を借景として取り込む

緑を楽しみたい人におすすめなのは、どこか1か所でもいいので、公園や緑地などの緑に接している土地です。

敷地が広くて庭をたっぷり設けられるのであれば理想的ですが、それほど大きくつくれない場合がほとんど。借景は非常に重要なポイントになります。これは自邸ですが、西側が緑地に面していたので、ここに決めました。これから土地を探すのであれば、少しでも緑に接していたり、緑が見えたりするような土地を選ぶといいでしょう。

8. 起伏のある土地をうまく生かす

斜面に建つ平屋

この住宅は20度くらいの斜面に建つ平屋です。

スリット状の開口から竹林を眺める

スリット状の開口から隣の竹林を眺められるようになっています。傾斜があったり段差があったり、起伏があったりする土地は、家を建てにくいことから宅地として分譲する際に平坦に造成されることが多いですが、地形をうまく生かせば、より緑を楽しむことができます。

ちなみに、この住宅の場合は造成する前に土地を買ったので、そのぶん値段を下げてもらうことができました。このような土地を探してみるのもおすすめです。

9. 中庭でプライバシーを確保しつつ緑を楽しむ

中庭を作って緑を楽しむ

借景を得られない敷地の場合は、中庭をつくって緑を楽しむことも可能。このケースでは、中庭を囲う2辺の壁の足元を1mくらい開けることで、目線のラインは壁で遮りつつ、風が抜けるようなイメージで圧迫感をなくしています。

三角形の中庭

こちらは周囲を建物に囲まれた小さな住宅。北側に三角形の中庭をつくり、太陽光を壁に反射させて室内に光を取り込みつつ緑を楽しみます。小さな敷地でも、工夫次第で緑を楽しむことは可能です。

10. 既存の樹木を尊重して庭をつくる

既存の樹木を尊重したプラン

木は生き物なので、その土地の日当たりや土壌の質、水はけなどに合ったものを選ぶことが大切。敷地にもともと生えていた木は、その環境に合っているわけですから、できるだけ切らずに尊重してプランをつくりましょう。

地元の植木屋さんや近所の人に話を聞いたり、庭を見せてもらったりしてもいいかもしれません。また、ある程度起伏があると緑の面積が増えるので、工事の際に出た土などを利用して写真のように丘をつくり、緑で覆うのもおすすめです。

11. 眺めるだけでなく緑に近づくことも大切

2階テラス

中間領域を1階につくるか2階につくるかは、それぞれにメリット・デメリットがあります。

庭いじりなど積極的に緑を楽しみたい人は1階のほうがいいのですが、プライバシーという点では2階より劣ります。中間領域を2階に設ける場合でも、眺めるだけでなく、外に出て緑に近づくことは大切。

写真の2階テラスは、じつは道路に面していますが、腰壁により道路からは見えないので、お茶などを飲みながら借景の緑とつながることができます。

12. 手入れがラクな庭もつくれる

手入れがいらない庭

「緑は楽しみたいけれど、お手入れは苦手」という人もたくさんいます。じつは、工夫次第で、ほとんどお手入れがいらない庭をつくることもできるのです。

写真の庭は、コンクリートで囲んだ中に築山のような庭をつくり、サルスベリを1本だけ植えて、足元にアイビーを配しています。アイビーはすごく強くて地面を覆ってしまうので、雑草もほとんど生えません。サルスベリは落葉樹ですが、地面に落ちた葉っぱは腐って土になります。

まとめ 緑を取り入れて豊かな暮らしを楽しんで

緑を楽しむ家をつくるときにいちばん気になるのは、やはりプライバシーだと思います。外から見られてしまうのが気になって、カーテンやブラインドを下ろしたまま暮らしている家をよく見かけますが、そうなってしまうのはできれば避けたいですね。

窓の配置や中庭のつくり方など、プライバシーを確保する方法はたくさんあります。どんなに敷地が狭くても、庭のお手入れが苦手な人でも、生活を豊かにしてくれる、緑を取り入れた住まいをおすすめしたいです。

●教えてくれた人/山縣 洋さん
1985年東京工業大学建築学科卒業、1987年同大学大学院修士課程修了。竹中工務店、OMA(オランダ)勤務を経て、2002年山縣洋建築設計事務所設立

撮影/フォワードストローク、松井 進 ※情報は「住まいの設計2021年8月号」取材時のものです