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Sumai編集部

第32回「高松宮殿下記念世界文化賞」受賞者決まる!建築部門ではグレン・マーカット氏が受賞

グレン・マ―カット氏の作品

Photo: Anthony Browell 画像提供: TOTO出版

世界の優れた芸術家に送られる、今年の「高松宮殿下記念世界文化賞」の受賞者が9月14日に発表されました。

32回目となる今回の受賞者は4人。オーストラリアの自然環境と向き合い、400件にのぼる個人住宅を設計してきたグレン・マ―カット氏や、日本でもピアソラの「リベルタンゴ」やバッハの「無伴奏チェロ組曲」の演奏でファンの多い、ヨーヨー・マ氏らが選ばれました。受賞者、および、その輝かしい業績の一端を紹介します。

絵画部門受賞者はフォト・ドキュメンタリー作家のセバスチャン・サルガド氏

「アマゾニア」撮影中のセバスチャン・サルガド氏

© Jacques Barthélémy

セバスチャン・サルガド氏は、ブラジル生まれの77歳。エコノミストからドキュメンタリー写真家に転じたという異色の経歴の持ち主。社会派的な視点から、アフリカを中心に飢餓、難民・移民問題などを撮り続けてきました。

セバスチャン・サルガド氏の『ジェネシス』

© Sebastião Salgado

代表作ともいえる写真集『ジェネシス(起源)』は、8年の歳月をかけて生物と環境をテーマに地球の姿を写し出し、大きな反響を呼びました。

『アマゾニア』に収められている先住民の写真

© Sebastião Salgado

最新作の『アマゾニア』では、7年にわたってブラジルのアマゾン流域の生態系と先住民族の生活を撮影。その展覧会が、パリを皮切りに世界主要都市を巡回中です。

彫刻部門受賞者は光と知覚のアーティスト、ジェームス・タレル氏

ジェームス・タレル氏

Photo: Yutaka Sato

ジェームス・タレル氏は、アメリカ生まれの78歳。大学で知覚心理学、数学、天文学を専攻。その知識に裏づけされた作品は、光によって観る人の知覚力を引き出します。日本でも、香川県直島の地中美術館、金沢21世紀美術館などに常設展示が。

ジェームス・タレル氏の作品「プルシャ」

© James Turrell, Photo: Florian Holzherr

これは2011年に発表された「プルシャ」。

ジェームス・タレルの「スカイスペース・レッヒ」

© James Turrell

代表的シリーズ「スカイ・スペース」より、「スカイスペース・レッヒ」(2018年)。矩形(くけい)にくり抜かれた天井を見上げ、刻々と変わる空の色や光を体感するための作品。空の光はやがて見る者の内面へと染み入り、外界と内面をつないでくれる。

アリゾナ州でクレーターのある広大な敷地

© James Turrell

1979年から、≪ロ―デン・クレーター≫プロジェクトを開始。アリゾナ州でクレーターのある広大な敷地で、クレーターの土を掘り起こし、太陽や月の周期に合わせて、光を知覚できる精神的な空間づくりに取り組んでいます(完成は2026年予定)。

建築部門受賞者はオーストラリアの自然環境と向き合うグレン・マ―カット氏

グレン・マ―カット氏

Photo: Anthony Browell

現在、85歳になるグレン・マ―カット氏は、事務所にはスタッフを置かず、コンピューターも使わずに、オーストラリア国内だけで、個人住宅を450件以上設計してきました。

グレン・マ―カット氏が手がけた住宅

Photo: Anthony Browell 画像提供: TOTO出版

2002年には、建築界のノーベル賞とも呼ばれるプリッカー賞を受賞。設計のコンセプトは「大地に軽く触れる」。水や光、温度といった環境的要素に注意を払い、オーストラリアの自然環境の恩恵を最大限に生かした仕掛けを施して、家の中に豊かな生活空間を生み出す建築家です。

音楽部門受賞者はジャンルを超えて活躍するチェロ奏者のヨーヨー・マ氏

演奏中のヨーヨー・マ氏

画像提供: サントリーホール

日本では、ピアソラの「リベルタンゴ」の演奏でもおなじみのチェロ奏者のヨーヨー・マ氏。これまでに100作以上のアルバムをリリースし、グラミー賞を18回も受賞している、まさにチェロ界の第一人者です。

ヨーヨー・マ氏の演奏会
2018年からは、世界36か所でバッハの「無伴奏チェロ組曲」を演奏するプロジェクトをスタート。
ピアノ奏者キャサリン・ストッドとのアルバム『ソングス・オブ・コンフォート・ホープ』は、コロナ禍で不安と孤独にさいなまれている世界中の人々の心に届き、大きな反響を呼びました。

なお、もうひとつ部門、演劇・映像部門は、新型コロナウイルスによるパンデミックの影響により、多くの候補者たちが受賞要件を満たすことができず、該当者なしでした。

現代を生きる人々が抱える問題と向き合い、それぞれの分野で私たちに大きな感動を与え続ける4人の受賞者。これからも目が離せません。