どうしてお金持ちは「タワーマンション高層階」を買うの?固定資産税の見直し問題をわかりやすく説明します!
タワーマンション内の「フロア格差」を題材にしたドラマ「砂の塔〜知りすぎた隣人」が話題です。
ドロドロの人間関係の根底には、マンションの高層階と低層階のママたちの間に「ママカースト」が存在するなど、まことしやかにささやかれる噂があるのでしょう。
ところで、先日「高層マンションにかかる固定資産税見直し 高層階ほど重く、低層階は軽く」というニュースが配信されたのをご存知でしょうか。
■タワーマンションの「固定資産税」を見直すってどういうこと?

barman / PIXTA
10月22日に政府・与党は「タワーマンションなどの高層マンションにかかる固定資産税を見直す」と発表しました。
また、「現在は床面積が同じであればどの階層でも同じ税額だが、実際の取引価格を踏まえて高層階ほど税負担を高く、低層階では低くなるよう調整する」とのこと。
平成29年度の税制改正大綱に盛り込まれ、30年1月にも実施される見通しだといいます。
このニュースを聞いて、「え、どうして?」と思った人も多いのではないでしょうか。
「どの階に住んでいても、床面積が同じなら税額も同じ」ということが驚きですし、「高層階ほど税金を高く、低層階は低くなるようにする」とは一体どういうことなのでしょうか?
■フロア格差は存在する? タワマンの実態は…
そもそもマンションの特徴として、同じ専有面積でも低層階は比較的お安く、階が上がるごとに価格が上がる傾向があります。
それは、「眺望」が価格を決めるひとつの大きな要素となっているから。
新築マンションのサイトを見ても、眺望はマンションの大きな売り文句となっています。

コーチャン / PIXTA
そして、特にその傾向が強くなるのがタワーマンション。
モデルルームを1度でも見に行った方ならわかると思いますが、最も下の階と最上階では、その価格に倍近い開きがあるケースも散見されます。
つまり、「フロア格差」はこの元々の価格設定から生まれたものだったのです。
本当にそのような「ママカースト」が存在するのかは定かではありませんが……、
実際にタワーマンションに居住している方に話を聞くと、物件価格の差はそのまま所得格差となって現れ、管理組合でのお金の使い方などで揉めるケースもあるようです。
■マンション特有の「固定資産税の計算法」とは
それでは、タワーマンションの「どの階に住んでいても、床面積が同じなら税額も同じ」とはどういうことでしょうか?
まず、マンション特有の固定資産税についての考え方から見ていきましょう。
固定資産税は「土地」と「家屋」の両方にかかる税金ですが、ともにマンション独特の計算の仕方があります。

チンク / PIXTA
マンションは専有部分と共用部分に分かれていますよね。
敷地全体や建物の中にある集会室などの共用部分は、マンション住民全体で「区分所有」している、という考え方をします。
固定資産税を評価する場合は、この共用部分も含まれるため、マンション住民全員でそれを割ればいいわけです。
ただ、単純に戸数で割ると専有面積の違いから不公平感が出るので、各戸の専有面積によってその人が受け持つ共用部分の面積の割合を決めるのです。
これを「持分割合」といいます。
「持分割合」は、「各専有部分の床面積」÷「マンションのすべての専有部分の床面積の合計」で表されます。

ABC / PIXTA
土地にしろ家屋にしろ、共用部分については、この持分割合で自分にかかる税金の価格が決まります。
マンションの「土地」の固定資産税評価額は、マンションが建っている敷地全体の評価額に、各戸の持分割合をかけて計算します。
また、「家屋」に関しては、自分の所有する専有部分の床面積分だけでなく、建物の共用部分の面積×持分割合で計算される、共用部分についても課税対象となるのです。
■節税効果が高い、タワマンの高層階! そのカラクリは…
マンション特有の固定資産税の計算方法がわかったところで、もう1度よく考えてみてください。
「どうも、課税対象になる土地の面積がずいぶん少なそうだな」と思いませんでしたか?
例えば、筆者が以前住んでいた、15階建て74戸のマンションの場合を見てみましょう。
敷地面積は1,480.09平米、専有部分の持分割合は90.07/5,759.18(平米)とあるので、計算すると約0.0156です。
これを敷地面積にかけると、なんと約23平米となりました。
つまり、筆者に権利があった土地は、たったの23平米。
課税はこの面積に対してされるので、土地に対する固定資産税は、一戸建ての場合と比べるとずいぶん少なくなるのです。

まちゃー / PIXTA
これがもしも、「敷地面積は大きくないのに縦に長く、総戸数の多いタワーマンション」だとしたら、どうでしょう?
持分割合がもっと小さくなるため、たとえ都心の一等地だとしても、土地にかかる固定資産税はかなり圧縮できそうです。
さらによく考えると、この算出法だと専有面積のことだけが問題になっているので、何階に住んでいようが、専有面積が同じなら持分割合も同じ、ということになるのです。
つまり、低層階の購入価格が5,000万円の住戸と、高層階の1億円の住戸でも、専有面積が同じならば、かかる税金も同じ、ということになります。

pretty world / PIXTA
同じことは、相続税に対してもいえます。
だから、「1億円の現金を相続した場合」と、「1億円のタワーマンションをあらかじめ購入して、それを相続した場合」とでは、後者の方に大きな節税効果が見込めます。
よく「お金持ちが節税対策のためにタワマンを買う」と言われるのは、購入価格と税金の評価額の差が大きいことを利用するためなのです。
■やっぱり不公平? タワマン上下階の格差を是正

ABC / PIXTA
今回の政府の措置は、そんな“タワマン節税”をけん制し、「不公平だ」という納税者の声に応えたものです。
物件価格に大きな差があるならば、低層階と高層階の住民の間に所得格差があることも、おそらく間違いないはずですからね。
そして、実際に「20階建て以上の物件を対象に、高層階になるほど固定資産税の税額が高くなるよう見直す」とのこと。
その場合、高層階は増税、低層階は逆に減税として、1棟あたりの税金の総額は変わらないようにするようです。
いかがでしたか?
政府が発表した「高層マンションにかかる固定資産税見直し」の意図だけでなく、少し難しいマンションの固定資産税の求め方、さらにタワーマンション高層階の人気の秘密がお分かりいただけだでしょうか。
個人的には、いくら所得格差があろうと「ママカースト」なんて言わないで、同じマンションに住む者同士仲良くするのが1番だ、とは思いますが……。
【参考】