ちょっと待って!あなたの家に本当に必要ですか?【和室編】

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唐突ですが、想像してみてください。
あなたは注文住宅を建てることになり、今から設計担当者と打ち合わせを始めます。
さて、間取りはどのような感じで、どこに何が必要だと話しますか?
この「ちょっと待って!」シリーズでは、家づくりに存在する従来の“当たり前”や“流行”について、あえて疑問をもって迫っていきます。
今回取り上げるのは、「和室」です。
■客間としての和室は、プライベートエリアとは一線を画してつくられていた
筆者が地元・富山で新築一戸建ての取材を始めた1990年代前半は、当たり前のように、どの家にも和室がありました。
寝室も畳敷きという家もありましたが、ほとんどの場合は和室は客間という位置づけ。
和室へは玄関ホールや廊下から入るつくりになっていて、リビングなどのプライベート空間とははっきりとゾーン分けがされていたものです。

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施主がシニア世代に限っていえば、和室が二間続きになっていることも珍しくありませんでした。
続き間の間には、立派な彫刻を施した欄間が入っていたものです。
それが年々、リビングに畳コーナーはあっても、和室と呼べる独立空間がないケースも見かけるように……。
2000年頃からは、廊下からしか入れない完全独立型の和室があると、なぜ設けたのかを聞くくらい珍しく感じるようになってきました。
完全独立型の和室をつくった理由については、以下のような答えが多かったです。

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- 客間として必要だから(宿泊含む)
- 仏間として必要だから
- 節句の飾りを出したいから
- 親との同居が必要になったときに、親に使ってもらうため
■子どものおむつ替えや遊び場としても使えるから…。現在はリビングに隣接したタイプの和室が主流に!
今は和室がある場合、圧倒的に多いのは完全独立型ではなく、リビングに隣接しているタイプ。
引き戸などの仕切りを開ければプライベート空間と一体化できて、和室を普段使いにできるのが魅力です。
一戸建てに限らず、マンションでも多く見かけるタイプですよね。
リビングとのつながりを考えて、少しカジュアルな雰囲気に仕上げてあります。
このタイプを選んだ施主に聞いた和室を設けた理由では、先ほど上げたの4つの理由に加えて以下のようなものがありました。

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- 子どものおむつ替えや遊び場としても使えるから
- ちょっと横になるときに使いたいから
確かに普段使いはしやすいですが、冬や夏は冷暖房効率を上げるために、和室の仕切りは閉めている時間が多いのではないでしょうか。
また、来客時に仕切りを閉めたとしても、どうしても音や気配は伝わってしまいます。
■物置化してしましまうのはもったいない!ライフスタイルに合った和室を

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一方で、和室をつくらなかった施主に聞いた、その理由はこのようなものでした。
- 和室に通すようなお客さんが来ないから……冠婚葬祭を自宅で行う家庭は減りましたし、結納などもホテルや料亭が使われることが多くなっています。
- 仏壇がないから……リビングにも合うモダンなタイプがあり、仏壇があったとしても和室である必要はありません。
- 親との同居が必要になったとしても、親は畳派ではないから……親が寝室として使うにしても、足腰への負担も考え、ベッドを入れる可能性は高いように思います。
- 普段は使わないので、空間として無駄だから
- 今までの住まいにあったけれど、物置化してしまったから
- 畳のメンテナンスが面倒だから

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和室が物置化したのは、一戸建てに住んでいたときの筆者の経験でもあります。
お客さんが泊まるときくらいしか和室を使っておらず、物置化してからは、来客のたびに荷物の運び出しに苦労していました。
畳の上に置いた物から水が染み出ていることに気づかず、放置してしまい、カビを生やしたこともあります。

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ただ、和室自体は不要派でも、リビングにちょっとした畳コーナーを設けている家も少なくありません。
縁のない琉球畳ならば、どんな空間にも馴染みやすいですし、メンテナンスが楽な素材で作った畳を利用する方法もありますね。
家づくりを機会に、自分にとっての“和室の在り方”を考えてみてはいかがでしょうか。