内容と流れで理解しよう!どうしてマンションの「耐震診断」は進まないのか?
自宅の地震による倒壊や損壊を防ぐには、建物を“耐震化”することが大切です。
では、自分の住む家を耐震化するにはどうすればいいのでしょうか?
まず受けるべきなのが「耐震診断」。
耐震診断とはどのようなものなのか? その流れは? 誰に依頼すればいいの?
そんな耐震診断の基本について、簡単にご説明します。
■「耐震診断」って、どんなことをするの?

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まずは、「耐震診断」の基本的なところを押さえておきましょう。
耐震診断とは、自宅の耐震性能を評価してもらい、耐震改修が必要かどうかの判断をするためのもの。
建築士などの専門家が建物を調査して、耐震性を総合的に評価し、耐震性能の判定をしてくれます。
具体的には、建物の壁の強さやバランス、接合部の状況や劣化具合などを調査・検査します。
診断結果は「is値」という基準で現わされます。
is値とは、「構造耐震指標」のことで、地震力に対する建物の強度や粘り強さ、建物の形状・バランス、劣化具合などをもとに求めます。
・is値が0.6以上・・・倒壊、または崩壊する危険性が低い
・is値が0.3以上0.6未満・・・倒壊、または崩壊する危険性がある
・is値が0.3未満・・・倒壊、または崩壊する危険性が高い
つまり、「is値が0.6以上あれば安全」というわけですね。
■マンションの耐震診断が「進まない」わけ

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ところで、マンションの耐震化に目を向けてみると、旧耐震基準の建物に関しても、耐震診断自体が進んでいないのが現状です。
その理由のひとつとして、所有者が単独で意思決定できる戸建て住宅と違い、マンションでは管理組合などが中心となって居住者との合意形成を図りながら耐震化を進める必要があることが挙げられます。
簡単に言うと、「手順が多く面倒」なのです。
ほかにも、
(1)診断するだけで費用がかかる
(2)耐震診断の結果「倒壊の危険性が高い」と評価されてしまった場合、資産価値に影響が出る
(3)さらにその場合、より費用のかかる耐震改修をしなければならない
などの理由から、耐震診断に踏み込めない管理組合が多いようです。
■耐震診断の大まかな流れを知っておこう
ここで、耐震診断の大まかな流れをご紹介しましょう。(カッコ内は実施期間の目安です)
・予備調査(1~2週間程度)
調査の対象となる建物の耐震診断レベルを設定するために、資料や情報を収集します。
設計図書や構造計算書などの資料の準備が必要です。
・概算見積書の作成
予備調査を受けて、大まかな見積書がつくられます。
耐震診断の実施が決まり、契約を取り交わして、本格的に耐震診断がスタート!
・本調査(3~6週間程度)
直接現地に来てもらい、建物の現況を調査します。
木造住宅の場合、軒下や天井裏などに入って調査しますが、ごくまれに部分的な解体が必要になる場合もあるようです。
・耐震性能の評価(1~3カ月程度)
予備調査・本調査の結果をもとに、建物の耐震性能を評価します。
なお、建物の規模や形状によって実施期間は変わります。
■誰に頼めばいいの? ネットを駆使していざ、耐震診断へ!
では、実際に耐震診断をしてもらうとして、どんな業者に頼めばいいのでしょうか。
最近は「省庁からの依頼で耐震診断を行っています」などと業者を装った詐欺の被害報告もあるため、注意が必要です。
まず、業者が「耐震診断・耐震改修技術者」の資格を持っているかを確認しましょう。
下記のサイトでは、耐震診断・耐震改修ができる建築士事務所の名簿が都道府県ごとに掲載されているので、参考にしてはいかがでしょうか。
・一般財団法人 日本建築防災協会「耐震診断・耐震改修実施事務所一覧」
木造の戸建て住宅であれば、下記のサイトを使って耐震性能を簡単にチェックしてみることができます。
木造住宅の基礎や壁の補強方法についてもわかりやすく説明されているので、こちらもぜひ一度チェックしてみることをオススメします。
いかがでしたか?
耐震診断にはそれなりの準備と期間が必要なことがわかりましたね。
しかし、大事なわが家を守るため、そこに住む家族を守るためにも、自分が住む家の耐震性を知っておくことはとても重要です。
これを機に、ぜひ耐震診断についてご家族で話し合ってみてはいかがでしようか。
【参考資料】