
当時築40年だったマンションをリノベーションした現在の住まい(photo ayako mizutani)
前回の内覧の続きです。
3件目に見た物件がなかなか良くて、特に夫が気に入った様子。
「もう買っちゃおうか?」って勢いです。
さっそく、そのマンションから徒歩すぐのところにある、地元密着型の不動産屋さんにゴー!
でも、何やら不吉な雰囲気が漂い始めました……。
※ 【自営業の妻、3年かかって家を買う】 今までのシリーズを見てみる
■もしかして…自営業者には売りたくないってことなの?

KY / PIXTA
そんなウキウキ気分が、きっと顔に出ていたんでしょうね。
不動産屋さんも、前のめりで対応してくれていました。
しかし、そんな姿勢が一変したのが、私たちが“自営業者”だとわかった瞬間からでした。
「売主さんが、安定した方の購入をお望みでして……」
とか、
「自営業者様との取引経験があまりないもんですから……」
と、超消極的な態度に変わったのです。
あれれ?
金融機関が自営業者に警戒するのは分かるのですが、不動産屋さんにここまで冷遇されたことはありません。

さわだゆたか / PIXTA
その後も、
「ちょっと銀行さんに問い合わせてみます」と目の前で電話をかけ始め、芝居がかった問答を始めました。
電話を切って「やっぱり難しいみたいです」とか、なんとか言ってます。
実はこの物件を内覧する前に、別の物件ですが銀行の審査には通っていたこともあり、ローン審査に関しては安心していたんです。
「うちは大手銀行との取引が主でして、それ以外の銀行さんとは取引があまりないんです」
と、またまた言い訳を始めました。
まあ実際、大手銀行ではローン審査は通らなかったんですけど、
だったら応じてくれる銀行を探してくれるのが不動産屋さんだと思っていたのですが、そうではないみたい。

もとくん / PIXTA
でもこのまま引っ込むわけにはいかず、夫がすかさず
「フラット35で申し込もうと思っているんですよ」。
そうです、フラット35だったら自営業とかなんとか関係ないですからね。
するとまたまた銀行とかやらに電話しています。
「フラットとかもやっぱり難しいみたいです」
え?
もう腹立たしいやら、滑稽やらで、私は呆れてしまいました。
■手続きが面倒な自営業者は敬遠される!?

polkadot / PIXTA
露骨に「あんたたちには売りたくないんだよ」と言わんばかりの態度に怒り心頭な私。
でも夫はまだ気が付いていません。
「で? どうしたらいいんですかね?」みたいな顔をしてキョトンと居座ったままです。
すると不動産屋さんは不意に席を立って奥の部屋に引っ込んだと思ったら、3分ほど経ってまた出てきました。
その手にはA4くらいの紙が握られてます。
「これは先ほどいらっしゃった方の購入申込書です」ですって。
急に? そんな話、それまで言ってなかったじゃん!
何も気がついていない夫に、これでもか! のダメ押し行動だったんですね。

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笑ってしまうのが、その紙は何かのチラシの裏に書かれていたんです。
しかも、手書きですごい走り書き!
席を外し、奥の部屋で急いで自分で書いてきたことはバレバレです。
そんな子どもじみた嘘までつく不動産屋さんとは、これ以上話はできません。
■見つけた!と思ったけれど…物件探しはふり出しに
銀行から言われるのならばまだ分かりますが、なぜそこまでされたのか、いまだによくわかりません。
結局、私が出した答えは「面倒臭かったんだろうな」ということです。
私たちでなくても、きっと買い手はすぐに見つかると思っていたのでしょう。

kou / PIXTA
それも会社員とか公務員とか、大手銀行の審査を一発で通過できるような売り手が。
わざわざ自営業者のためにいろんな銀行に問い合わせをしたり、フラット35の資料を取り寄せたり、面倒臭い事をしなくて済みますもんね。
それにしてもびっくりです。
後にも先にも、こんな不動産屋さんはいませんでした。
今でも時々その不動産屋さんの前を車で通ることがあって、心がささくれます。
ようやく理想的な物件を見つけた! と思ったのにまたふり出しに戻ってしまいました。