イメージだけで選ぶと大失敗?オイル塗装とウレタン塗装の違い【前編】
今からちょうど20年前の1997年6月、厚生省(現在の厚生労働省)によってシックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドの室内濃度指針値が公表されました。
この頃を境目に「エフフォースター」という言葉が市場を席巻するようになり、建物や家具に対する消費者の意識が一気に高まるターニングポイントとなる出来事でした。

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木材の内装や家具に施される塗装として、当時一般的だったのは合成樹脂塗装と呼ばれるものでした。
合成樹脂塗装とは、木材の表面に樹脂を吹き付けて固めた塗装の総称です。
代表的なのは、ウレタン塗装。
名前を聞いたことがある方も多いかもしれませんね。
この合成樹脂塗装に対して、近年人気が高まっているのが自然塗料塗装と呼ばれる塗装です。
柿渋やニス、漆といった和風の塗料も自然塗料塗装の一種ですが、やはり代表的なのはオイル塗装でしょう。
■表面に塗膜をつくるのがウレタン、内側に染み込んで定着し、表面を硬化させるのがオイル
そもそもオイル塗装とは、どのような塗装なのでしょうか。
分かりやすいように、ウレタン塗装と比べてみましょう。
ウレタン塗装では、木材の表面に「塗膜」と呼ばれる樹脂の膜をつくります。
この膜が、傷や汚れから保護する役目を果たします。
オイル塗装では、塗膜はつくりません。
その代わりに木材の内側に染み込んで定着し、表面を硬化させます。
これにより、ウレタン塗装ほどではありませんが傷や汚れがつきにくくなります。
■オイル塗装が人気な理由は3つ!
オイル塗装には、ウレタン塗装にはない特徴が3つあります。
1・植物を原料とした自然由来の塗料である

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冒頭にご紹介した「ウレタン塗装=ホルムアルデヒドが発生する=シックハウス症候群の原因になる」という印象が根強い消費者にとっては、抜群の安心感ですね。
2・木の質感をそのまま楽しめると

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ウレタン塗装とは違って表面に塗膜をつくらないので、木目や節などの手触りをダイレクトに感じることができます。
ナチュラルな雰囲気を楽しむにはうってつけな塗装と言えるでしょう。
3・自分でメンテナンスしながら長く使える

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オイル塗装は刷毛が1本あれば初心者でもできるので、傷や汚れがついてしまっても自分で補修することができます。
ヤスリで削ったりオイルを塗り足したり……。
そんなひと手間をかけるからこそ、愛着を持てるのかもしれません。
これらの特徴が、「健康志向」「自然志向」といった時代の流れにマッチして、ちょっとしたオイル塗装ブームを引き起こしています。
■オイル塗装は、オールマイティで良い塗装?
なんとなく、良いイメージのオイル塗装。
ウレタン塗装より健康的で、品質も良さそうですよね。
実際に、品質が良い木が使われる傾向はあります。
ですが、塗膜をつくらないオイル塗装では天然木特有の細かなヒビ割れや節の抜けた跡は当然のことながら目立ってしまいます。
オイル塗装で表面を綺麗に仕上げるためには、ある程度良質な材料を選んで使う必要があるんです。
対照的に、ウレタン塗装ではやろうと思えば分厚い塗膜をつくることもできます。
材料となる木が多少難ありでも、隠してしまうことができてしまうんです。
「それなら、オイル塗装の製品を選んでおけば間違いない!」と思ってしまいますよね。
ところが、実は「オイル塗装=良い塗装」「ウレタン塗装=粗悪な塗装」という公式は必ずしも成り立ちません。
次回は、このポイントを詳しく解説します。